病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。20
アルマデスは頭を抱えていた。
いや、まさかね。
意気揚々と出ていった部下が、あろうことか敵を丁寧にお迎えしたもんだから。
これは、驚くでしょう。
驚き通り越して呆れましたけどね。
「あー、すまん。待ってくれ、アルジェ。彼女は?」
「えっと……ミミィさん?」
「知り合いかい?」
「さっき知り合ったから知り合いかも。」
「そうかい。」
うーん。
どう対処すれば良いの?
と言うか、どこからツッコめば良いの?
これは、ボケなの?手の込んだボケなの?
だとしたら凄いよ。
でも、あの、褒めて欲しそうな顔。
マジだなぁ。どう見てもマジだなぁ。
良く来たな!とかいって自己紹介したかったのに、まさかのだよ?
「どうして、連れてきたのかな?」
「お客さんはこうするものだって。」
「お客さん?」
「うん。ミミィがいってた。自分はお客さんだから、丁寧に主人のもとに通すべきだって。」
「そうか。」
あー、駄目だ。怒れない。
純粋すぎるだろ。これは。馬鹿な子ほど可愛いってやつだよ。
とりあえず、顔を被っていた手を下げ、二人の顔を見る。
ミミィと呼ばれた子と、目が合うと、恭しく礼をしてくる。
育ちの良さを感じさせる慇懃な態度。
なるほど。面白い侵入者だ。
「それで、要件は?」
「はい。魔王の座をいただきに参りました。」
「………ん?」
思考停止。
私は、自分のことを合理的で冷静な男だと自負していた。
その動じなさによってここまで来たのだと言っても良い。
その身に纏う魔法の力が氷や冷気を操るものであるのに関係するかのように、どこまでも冷たく冷めた考えを持てる男だと思っていた。
でも、極限の混乱を与えられたとき、生物は一様に思考を停止するらしい。
時に、放棄すらするらしい。
………。
………………。
はっ?
何言ってんだ、この小娘は。
多くの血が流れ、ようやく自分が手に入れた魔王の座を、横からかすめ取っていくつもりなのか?
見たところ強そうではない。
魔族において、見た目と反した強さというのはある。
まさにアルジェがそれだ。
持って生まれた才を生かし、自分より立派な体格を持ったものをも凌駕する力を使うものだ。
見たところ、強い魔力も、特別な部分も見つからない。
一体何をどう考えたら、そんな発言が出来るのだろうか。
そう考えると、段々腹が立ってきた。
自分は餓鬼の幼稚な戯れ言に付き合うほど暇ではない。
たとえば、どこかに入りというお偉い神様だったら、弱き生き物の嘆きや怒りすらも聞き入れるのだろう、しかしながら、魔族である自分はそれとは真反対の存在。
神と違って聞き入れる義理もないのだ。
耳障りだと思ったら
潰すのが良いだろう。
「………分からない。反抗するつもりか?」
「いいえ。話し合いましょう。」
「ははっ、そちらからケンカをふっかけてきたようなこの状態で、話し合おうとは、笑止千万。」
「別に、喧嘩はうってないです。先ほどもいいましたが、私はこの城にお客としてきたのです。客として招かれるにおいて、それ相応の礼儀はわきまえております。」
そう言って、彼女は、脇にさした短剣と、懐のはさみを取り出した。
それを床に投げ捨てる。
からんっ…と音がして、金属で出来たそれらは冷たい床に放り出された。
灰色の薄汚れた外套を翻し、少女は、床に伏した。
「どうか、お聞き入れ願いたく提案をお持ちいたしました。」
「…………。」
先ほどまで青筋が立つほど興奮していた頭は今はもう冷静になっていた。
無駄なことはしない。
自分が大切にいているその信念に基づく行動を取った。
「分かった聞こう。しかし、ここではなんだ、客間に移ろう。アルジェ、紅茶を入れられるか?」
「無理!」
「じゃあ、俺が入れる。お前は彼女を案内してくれ。」
「了解~。」
行こっ、と、アルジェがいうと、ミミィは大人しくついていった。
さて、いつ頃チェスタは帰ってくるだろうか。
実のある話し合いに、彼女は、必要不可欠だ。
***
こんにちは。丁度良いのでここで。




