病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。19
魔王の城は、重厚な城壁に囲まれた要塞。
鉄壁とも言える防御によって固く閉ざされたところだった。
そんなところに少女が一人、忍び込んだ。
不思議に笑う。
「アルマデス。侵入者だよぉ?」
「そうか。チェスタは?」
「ん~?今、外。オオカミのところで会議してる。」
「そうか、当分帰ってこないのか。」
「そうだねぇ。困る?」
「いや、好都合だ。あいつは、時々頭が固い。」
「わっかるぅ~。」
にゃははっと少女が笑う声が石の天井に響く。
可愛らしい声が何回か反響して、やがて消えた。
静かになった頃、カツッ、と、靴が床を叩く音が聞こえた。
「アルジェ、頼めるか?」
「もっちろん!侵入者は、丁重お返ししろ、チェスタからいわれてるもん。」
「ああ、そうしてくれ。」
「まっかせて!」
少女は、白いワンピースを揺らした。
鼻を一つ、すんっ、と動かすと、たっと地を蹴り飛び出した。
「………いやな、予感か、将又いい予感か、どうも、居心地が悪いな。」
アルマデスは爪で椅子の手すりを弾き、一つ音をたてた。
いやな予感というものは、往々にして当たっているもので、
それが誰にとってのいやな予感かは違うにしても。
そう易々と鼻で笑うのは、愚かなような気がした。
一流の漁師は住吉三神に拝するものである。
「やぁ~ぱり、侵入者!」
「こんにちは、」
「うん、こんにちはぁ~!お姉さん、どこから来たの?」
「人間の町から。」
「え~?なんで?お姉さん、魔物でしょ?」
「いまは、ね。」
赤い瞳がキラリと光った。
色とりどりの光がチラチラ舞った。
薄暗い夕闇の中、二人の少女が向き合った。
「おね~さんはさ、何しに来たの?」
「魔王になりに来た」
「え~、困るよぉ。アルマデスは魔王になったばっかりだよぉ?魔王最短記録とか、不名誉すぎるよ!」
「知らない。そのアルマデスってのが魔王になっていなければ、良かっただけの話じゃない。」
「あちゃ!そりゃないよ!」
「私に言われても困るわ。」
目の前にいるはずなのに、どこかかみ合っていない話が続く。
いや、かみ合っていないのは彼女たちなのか。
「とにかく、ここまで来たのだから、貰うものは貰うわよ。」
「困るから、帰ってもらう!」
アルジェは戦闘態勢というように腰をかがめて身を落とした。
それを見ていたミミィはすっと左手を挙げる。
その動きすら感覚を鋭く研ぎ澄まさせているアルジェにとってはゆっくりと見えた。
「はい!」
「はい?」
「質問です。」
「ど、どうぞ。」
意外な展開に目をぱちくりさせる。
「あの、あなたは?」
「え?」
「どちら様ですか?」
「ん?それ聞く?」
「いや、だって、もしかしたら全く無関係の方かも知れないし、だとしたら殴ったりけったりして、暴行罪だーとかいって訴えられたら負けるし。」
「いや、ほら、でもさ、魔王の城から出てきたんだよ、無関係なことなくない?」
「いや、もしかしたら、魔王の城に来ていただけの観光客かも知れない。ただ、山菜を採りに来ただけの山菜少女かも知れない。ゼンマイの雄株と雌株間違えないように!」
「はぁ?」
アルジェは目の前の少女が急にあほになったときの対処法をチェスタから聞いていないことを思い出した。
ホント、肝心なこと教えてくれないんだから、と、混乱する頭でチェスタを責めた。
その頃チェスタは。
「ですから………はっくしゅっ!失礼。」
「いえ、続けてください。」
「ええ、」
盛大にくしゃみをしていた。
「あのね、ここ魔王城なわけ、一般公開はしてないし、山菜とるために侵入するものがいたらどうすれば良いか分からないけど、とりあえず侵入者として首をかききるように言われてるの。」
「ふーん。ただ、山菜を採りに来ただけの罪のない人を殺すんだー。」
「ま、確かに罪はないけど、山菜だって魔王城の持ち物であって、それを勝手に取るのは駄目じゃない?」
「確かに!」
「でしょぉ?ここも、私有地なわけで、って、なんの話かしら。」
「あなたの仕事のこと。」
ミミィは首を傾けて、怪しく微笑んだ。
「ねえ、あなたの仕事は?」
「チェスタからは、侵入者を排除しろって言われてる。」
「じゃあ、お客様は?」
「お客様?分かんない、いわれてないもん。」
「そう、教えてあげるよ?お客様はね、丁寧におもてなしするものなんだよ?」
ミミィの影のある微笑みをアルジェはじっと見た。
訝しげな顔をする。
そして、
「分かった!」
思いっきり笑顔になった。
「知らなかった教えてくれてありがとう!」
「どういたしまして。」
「で?おねーさんはお客様?」
「そうね、どちらかといえば、」
「んじゃ、一名様御案なーい」
この子はとてつもなく素直で、
言い換えればあほの子であった。
***
お馬鹿なキャラクター書くのが楽しい。
以上、まりりあでした。
また次回。




