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病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。2

さて、なんやかんやあって王都に帰還した勇者一行だったが、そのおかしな手に持つが喜ばれるわけも無く。


「この………馬鹿勇者!!」

しっぽり叱られているのであった。

この国で一番怖いと定評のある、右大臣。

キリリと釣り上がった眉と眼鏡。きっちり着こなされた服。

左大臣は常に軍服を身に纏う戦上手である反対、右大臣は主にその恐ろしく回る頭を使い内政を補佐していた。と言うか、この国の内政はこの男が牛耳っていた。


「あのですね、私が依頼したのは、魔王討伐。誰が魔王の娘引っ捕らえてくれと言いましたか?ただでさえこの時期収穫量の算出と来年度の予算編成で忙しいのに、どれだけ私に仕事をさせるつもりですか?殺したいんですか?」

「いや~。すみません。此方としては、この子を置いてくるわけにも行かず。なんてったって、ほら、勇者ですから。」

「いや、だからってねぇ。」

にこやかに対応するレジーナに分かりやすく頭を抱える大臣さん。

「………大変だな、役人さんは。」

「だな…。」

そこそこ頭の悪い勇者と格闘家は無駄に口出しすることなく、暢気に見守っていた。

「ん………んん…」

「……すまない。もう少し我慢してくれ。」

デリスの腕の中で眠る娘は息苦しそうに唸った。

その声を聞いて嫌そうな顔をする大臣、今一度大きく息を吐くと、ずれた眼鏡を直しながら、近くにいた役人に声をかける。

「君、澄まないが、医務室へこの方達を案内してやってくれ。先生には私から話を通す。」

「え、あ、はい。」

此方です、と声をかけられた役人は手に書類を持ったまま歩き出す。

「ごめんなさいね、大臣。無理言ってしまって。」

「貴方たちが無理を言ってくるのはよくある事です。それに、私達の娘と同じくらいでしょう。レジーナ。」

「あらあら。」

一つ此方に礼をして、自らの執務室の方へ小走りに駆けていく大臣に小さく手を振ると、レジーナはにっこりと微笑んだ。

「相変わらず、あの人子供に弱いわね。」

「あんなに俺達には厳しいのに。」

「娘にはデレデレよ。」

「なにそれ見たい。」

あと、良いでしょうか、と役人さんが振り返る。

そのまま雑談をしながら、三人は医務室に向かった。


勇者さん達が帰ってきたと聞いて、私はいてもたってもいられなくて、帝王学の授業から飛び出した。

「いけません。姫さま!」と先生が叫ぶ声が聞こえる。でも、会いたいというこの思いは押さえ込めなかった。

「やっと、やっと会えるんだわ!勇者様に。」

そう口走ると、実感できて、さらにワクワクが止まらなくなった。

医務室の前の廊下、くたびれた衣の三人が歩いているのが見える。

後ろ姿でも分かる。

勇者様の一行だ。

「勇者様!!」

「……セレーヌ姫。ご無沙汰です。」

「ええ、お久しぶりね、デリス!よかった、今回も無事帰ってきてくれて。」

「まあ。」

ふと、その腕に抱える者に目がいく。

気が付くと足が止まっていた。

勇者様は、子供をだいていたから。

「ゆ、勇者様……?そちらは?」

「………は?子供ですが。」

「どなたの?」

「魔王の?」

「え………っと、」

姫さまパニックですわ。なぜ勇者様が魔王の子供をだいているのかしら。

………つまり、

つまりそういうことなのかしら。

魔王と………勇者様の子……?

へ…………へぇ。

そうなのかしら。

あれ、魔王って子供産めたのかしら。それとも勇者様が産んだ?


「はぁ!?」

「……すまない。あまり大きい声は。」

「これが叫ばずにいられますか!!」

つまりだ、要約すると、婚約者である私を差し置いて魔王と、その、なんとも言い辛いのだけども、子を、設けたと。

つまり………魔王が愛人?

ど、どうしましょ。

私は結婚前に旦那が先に子供を産ませられるという世にも珍しい寝取られ、もとい不倫をされたわけで、つまり、どういうことかというと、

えっと、どういうことなのかしら。つまり、は、えっと、えっと、待って、なんだったかしら、ええ、ええ、婚約者は私よね。こ、こ、こんにゃく?こんにゃくだったかしら、こんにゃくと言ったら、そう、水酸化カルシウム!そうよ、水酸化カルシウムよ!酪酸!ヘキサン酸!カプリル酸!シューマン!マーラー!プッチーニ!

ええ、そうよ。プッチーニだわ。ロマン派の、そうだわ!きっとそうに違いないわ!

「あ、あの……大丈夫か?」

「はい、プッチーニ!」

「え?」


………。あら、

私ったら、何考えてたのかしら。

「あの、プッチーニって?」

「勇者さま?どうしたんですか、急に。」

「いや、でも今。」

「はい?」

「あ、いや、何でも無い。ちょっと失礼する。」

マントを翻すと、勇者様は、医務室の中に入っていく、ベットにその子を寝かしつけた。

優しそうに髪を撫でる姿にむっとしてしまう。

私にはしてくれないのに。

「すまん。挨拶もせずに。」

「い、いえ。その子は?」

「魔王の子だ。」

「……二人の子だとは、言わないのですか?」

「は?」

「あ、いえ、何でもありません。それにしても、具合が悪そうですわね。回復魔法でもかけますか?」

「あ……いや、止めといてくれ、姫の使う聖なる光の呪文はこの子の体に悪い。」

「あ、ああ、そうですわよね。魔王の、子ですものね。大切な、子ですものね。」

「いや、俺としてはそんなに大切でも無いが、どうしようか困ってるし。」

「はぁ!?」

な、な、なんて、無責任な。

自分たちの子なのにどうしようか困ってる!?

そんな無責任なことをこの子の前でよくも………良くも言えましたわね!

お腹を痛めて産んだのではないのですか!

責任は責任は?

「ゆ、勇者様………見損ないましたわ!自分の責任くらい、きちんと取ってくださいませ!この、無責任勇者!!」

「は?え、ちょ、まっ………」

思わず走り出していた。

ニヤニヤしたレジーナさんの顔が目にはいる。

何をそんなににやけているのかと思ったが、気にする余裕も無く、自分の部屋に向かって走っていた。




***

こんにちは。まりりあです。

途中で混乱した姫さまがゴタゴタ言ってましたよね、考えるの大変でした。

さあ~て、とんでもない勘違いがなされたこの状況ですが、どうなってしまうのか、

娘さんは助かるのか!見物です。

それでは、次の機会に。

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