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病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。16

左足が痛かった。

でも、それ以上に心が痛んだ。

母の心を知ったから?

父のことを考えたから?

自分の失敗に気が付いたから?

どれも正解で、答えだった。

「……いたい……」

唇から零れた低い声が頭をはっきりさせる。

悶々と考えていたくなくて、呟いた。

愛されていたいなんてね。

混ざり物が愛をこうなんて。

私は、この世界で愛してくれる三人を失って殺して裏切ってきた。

あー、いや。殺したなんて、自惚れだ。

自分のために死んだみたいだ。

たとえ、真実がそうであったとしても、なかったとしても、私が殺したと思ってしまうのは、彼が私を愛していたと思っちゃうからだ。

父にすら。愛されていたか分からないんだ。

他人から、あれだけ愛されていたと言い聞かされてもなお、信じられない。

卑屈だなぁ。嫌な性格。

幻で見た母だと名乗る女は、竹を割ったような清々しい性格の持ち主だった。

私はどうだろうか。

劣等感と自己嫌悪の塊。

自分が世界で一番嫌い、なんて言葉さえ、綺麗ごとに聞こえる。

気持ち悪い。

こんな私を知ったら、きっと皆嫌になる。

嫌われる。

いや、きっとそもそも好かれていないのだから…

これすら、私の考えか。

ほんとは、きっともっと多くのことを他人から与えられているのに、素直に受け取れず、受け取れず、独りで孤独を作り上げているだけ。

他人からの肯定がないと、私は何にも出来ないのだ。

私は、

私は……


どこへ、行くのだろうか。

どこかに着けるのだろうか。

痛む足を引きずりながら、それでも足は心に反して動き続ける。

父の匂いを探した。

暗い部屋の中で感じた魔力。

温かい気配。

いないのに。

もう、ここにはいないのに。



冷たい。

そう思った。

殺意とは、冷たいのだ。

「何ようですか。お嬢さん。」

「………。吸血鬼?」

「そうです。見ないでよく分かりましたね。」

「気配で分かる。」

「そうですか。」

斜め上。

背中に感じる視線。相変わらずいやな目をしている。

「私は、何かした?」

「いいえ。でも、ここは魔王城の近くどこのものかも分からない者をほっぽらかしにするほど優しくはありません。」

「………私は……」

魔王の娘。

そう……な、はずだ。

そんな気はしないのに。

それは確かなのだ。

でも、それを言うのは、どこか心地が悪いような気がした。

「……すみません。引き返します。」

「……そうしていただけると。」




「ちょっと、デリス。急に立ってまさか…」

「魔王討伐、引き受けた。」

「ちょっと、今から行くつもり?」

「ああ。」

会議中だというのに立ち上がったデリスをレジーナが追いかけていた。

大きな音をたてて扉を開けたデリスは、せめてものといった軽いお辞儀をし、出て行く。

その様子を王は表情一つ変えずに見ていた。

「……よろしいのですか?」

「……さて。」


「ま、まちなさい。勝手に動かないで。」

大股で王城の廊下を出口に向かって歩きながら、腰の剣や短剣。一応のために持ってきたポーチを確認する。

騒がしく後をおってくる同僚に適当な返事を返した。

「俺は、勇者だ。勇者が魔王を倒しに行くのは仕事だ。かってじゃない。」

「そんなこと……」

「お久しぶりですねぇ。勇者様。」

「……姫。」

廊下の柱の影、落ち着いたデザインのドレスが似合うようになったセレーヌだった。

礼儀に従い会釈する。

「お久し振りです。ゆるりと対談でもしたいものですが、今、急いでいるので、ご容赦ください。」

「ええ。昔から、そうですもの。」

肩をすくめ、困ったように笑う顔には、まだ三年前の幼い面影が見えた。

ミミィもそうだが、当時子供でも大人でもない時期だった彼女は、いつの間にか大人になっていた。人の成長というものは、大人になるまでは分かりやすいのだ。

驚くほどに。

「では。」

背を向けて歩き出す。

今は懐かしむより、前を見る方が大切だった。


「勇者様、あの子、ミミィについて一つ。」

後ろからかけられた言葉に振り返る。

「ふふっ……正解?」

「何か?」

訝しげに眉をひそめ、姫を見た。

微笑みを湛えた口元を、三年前のあの日も持っていた奥義で隠し、目を細めた。

「死ぬんじゃないかって、急いでるのでしょ。」

「っ……そう思うなら、行かせてください。」

「ええ、止めるつもりはないわ。でもねぇ、気をつけて、彼女は、あなたが付くのが遅かれ早かれ、彼女がもっともいやな未来しか掴めない。」

「それは……」

「さあ、なんでしょう?」

セリーヌは未来予知でも出来るのか。

そんなものができるはずはないが、出来るのではないかと疑いたくなるほど、自信というか、本体の分からない真実味を帯びた言葉を吐く。

「少なくとも、あなたが行くまで彼女は死なない。あなたの娘は、あなたが思ってるほど、弱くないのよ?」

「ああ。行ってくる。」

「ええ。お気を付けて、ご武運を。」

ドレスの裾を持ち上げ、王女然とした優雅な礼に、答えられはしなかった。


「姫様……なんで。」

「さぁ~。なんででしょうね。あ~あ、初恋は、儚いってやつね。勇者様みたいな貴族はいないの?」

「いないですね。でも、デリスも別にあなたのことを嫌っているわけでは、」

「あー、ダメダメ。彼はねえ、立派な父親になったのよ。彼が子育てという重荷を下ろす頃には、私はもう行きおくれ娘よ。」

は~ぁ、と言うセレーヌの顔は、呆れたような微笑みだった。




***

こんにちは。まりりあです。

書き方忘れちゃったかな?ってくらい筆が進まない。む~ん。

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