病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。15
石の玉座は冷たい。
固くて、座り心地が悪い。
でも、悪くない。
「……はっ。あんたがほんとに魔王になるとはね。」
「信じてなかったのですか!お姉さん。」
「ああ。信じてはいたが確信はなかった。オオカミもグールも強大であるからな。」
「お前と違って相性がよかった。専ら体力勝負だったし。」
「アルジェは頭脳戦嫌いだもんな。」
「アルマデスゥ!!」
あははっ、と二人の笑い声が石造りの神殿の中に響く。
魔王の城の醍醐味だ。
「さて、仕事の話に移ろうか。魔王の仕事とは、民を安全を守ることだが、具体的には何をするのだ?」
「知らないか。教えてあげよう。魔王学、帝王学、は習得済みだ。」
「お~。」
「チェス姉さんやるぅ~。」
「当たり前のことよ。」
頬のサイドに流れた髪を一筋取り、指にからめる。
照れ隠しなのだ。
「魔王の仕事は特に定型はないわ。とにかく、法を作ったり、国を回すことが主となるわね。」
「法?」
「ええ。作らないものもいるけど」
「前王は?」
「作られたわ。此方にあるわよ。細かく聞きたいならそらんじるけど?」
「頼む。アルジェ、チェスタの言葉を書き写せ。」
「え~。私文字書くの苦手。」
「ゆっくり話します。いいですか?」
「うっ……うん。これも、アルマデスのため。」
どこからが羊皮紙とペンを取り出すと、拙い手つきで言ったことを書き記していく。
彼女は、全部で四十三条プラス七目あることを知っているのだろうか。
知らないだろう。
アルマデスは深く息をついた。
ここまで来たのだ。
目を閉じればまだ思い出せる。
アルジェにあった日も。
ガーゴイルを襲った日も、
チェスタに手こずった日も、
オオカミに噛まれ、刈ったものの重症を負ったアルジェを一晩看病した日も(一晩で傷が治りきったときは驚いた)、
つい最近あったグールとの戦いも。
長く短い。いや、どう考えても短い戦いだった。
参戦時期が遅かったこともあり、消耗しきった各集団を圧することは格段に楽だった。
まあ、それでも、
アルジェがともに戦ってくれて、時々チェスタが助言してくれておかげではあるが。
「アルマデス。何考えてるのぉ?」
「こら、アルジェ。」
「かまわん。」
物思いにふけっていたところにアルジェが寄ってくる。
私の頭をもしゃもしゃとかき回し始めた。
彼女の周りの光も神々しく輝く。
この者達に、どれだけ助けられたのか。
「……そうだな。今までのことを振り返っていた。」
「え~。おじいちゃんみたい。」
「そうか?」
「うん。」
素直に頷く彼女の頭を軽く撫でる。
いい大人なのに、こうするときだけは子供のように目を細めてうれしがる。
「全く……」
「すまない。チェスタ。」
「いいです。別に。」
分かりやすく頭をかは抱えるチェスタも、結局は困ったように微笑んでくれた。
この元達にはお世話になった。
そしてこれからも、きっとその力を借りることになるだろう。
私が地に伏し倒れるその時までは。
王城の会議室内には、王、両大臣にデリス、レジーナにマルケレと言ったかつての討伐チームが顔をつき合わせていた。
「これから、対魔王作戦会議を始めます。質問、意見等は手を上げてのものとさせていただきます。円滑な会議進行に……」
「んなこたどうでもいいだろ。おい勇者、魔王倒しに行かんか?」
「…………。」
「なあに、心配するな。今回は俺も付いていく。」
「お言葉ですが左大臣。あなたにはやらなければいけない仕事がたんまりとあるのですよ?ご存じ?」
「レジーナまで……」
話を聞かないどころか、話を遮って話す者達に左大臣は頭を抱えた。
ほっほっという王の笑い声に一同は口を閉じる。
いくら自由人が多いとはいえ、王の声を遮るものはいなかった。
「いや、それで、デリス。魔王討伐に再び出向いてくれるのかね?」
「…………。」
デリスは、何も言わなかった。
ただ、無言で立ち上がった。
***
こんにちは。まりりあです。
きのこの山か、たけのこの里か、
悩みどころですよね。
私はポッキーが好きですけど。