病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。14
スカートが翻ること気にしている余裕はなかった。
力量はおそらくあちらが上。
では、こちらはどうするか。
答えは簡単。
力で制せないなら、頭で制せば良い。
「っ……ね、ねえ、あなた。どうして戦っているの?」
「……?お姉さん、よく分からないこと聞くねぇ~。そんなの決まってるじゃん。お姉さんが強いから戦ってるの。その方が面白いから。」
「そう。じゃあ、これからいつでも戦えるとしたら、あなたは今日を我慢できるの?」
「う~ん。どうだろう。今は信じても未来のことは信じないからなぁ~。私。」
首をかしげて、勢いよく足を振り上げた少女。
私はその攻撃を鎌の柄で受け止めた。
「ひゅ~、やっるうお姉さん。これ受け止めたのお姉さんが初めてだよ。」
「それは、嬉しいですわね。」
蹴りの一つが重い。
細い足のどこにその力があるのかと思うほど、重厚で強烈な蹴りを放つ少女。
魔力だけじゃない。
戦いのための要素をすべてつぎ込まれた少女。
「なるほど……ね。」
「?何が?」
「いや、先王に、愚かにもたてついた女がいたと、小耳に挟んだことがあったが、なるほどあなたのことなのね。」
「うへっ、分かった?」
「ええ、何でも腕の立つ少女だったと。」
「そう!!力だけなら、王に負けなかったのよ!!」
「……力、だけなら。」
えっへんと胸を張る少女に失笑を漏らす。
まるで、自分で馬鹿だと言っているみたいではないか。
馬鹿、と言うより、自分にも相手にも馬鹿正直なようだ。
だから。
今度はこっちが笑う方だ。
形勢は逆転できる。
私は、その力を持っている。
今さっき、まさにそのための手がかりを掴んだところだ。
「……ねえ、私、知ってるの。」
「なにをぉ~?」
「あなたの、弱点。」
「……馬鹿だって言いたいの?もうお菓子には引っかからないもんね。べー」
ああ、なんて単純な子なのでしょう。
確信を重ねられては思い込んでしまう。
訓練で幾度となく見てきた勝利のビジョンが見えてしまう。
酔いしれてしまう。
「いいえ。違うわ。もう一つ。」
「?」
分かっていないようなアルジェに天に指さし示す。
「今夜は、とってもいい夜ね。月も星も輝いているわ。」
「まあ、確かに。でも、それが何か関係あるの?」
「ええ。さぞかし、月と星の光に、助けられているんじゃない?」
「…………っ!そう言うことか!」
「ええ、そういうことよ?」
笑ってしまった。
彼女の歪められた顔が面白くて。
この戦闘中、初めて見た楽しみ以外の表情。
焦り。
戸惑い。
素晴らしいわ。
「私は、吸血鬼族王族の一員にして、長女。序列四位のチェスタよ。何より、誰より黒霧化を上手とする者!」
爪先から少しづつ霧になっていく。
親指の第一関節あたりまで来た頃、一気に霧となった。
「っ……吸血鬼ぃ!!」
『どう?私の霧は濃いわよ?ねっとり絡みつくようだってお父様から褒められたのですもの。この霧の中で正常でいられる者は、男も女もいやしない!』
霧になると声が変わるのが困りものだ。
と言うか、霧の広がったすべての方向から、声が聞こえることになる。
アルジェがいくら光を飛ばそうとしても、光はそこになく。
殴ろうとしても肉体はそこにない。
かくなる上は、体力がなくなるまで、正気じゃなくなるまでゆっくりじっくり蝕まれるのみ。
心の底から、笑いが漏れた。
どれくらいそうしていただろう。
アルジェは随分前に動くのを止めた。
いきはしているし意識もある。
正常な状態だ。
無駄に動き回るのを止め、助けが来るのをまっているかのように見える。
まあ、私の弟が来るか、あの男が来るかで変わるだろうが。
『アルジェ……闇の心地はどう?心安らかでしょ?』
「…………。」
『話してもくれないのね?悲しいわ……』
正直、暇だった。
決着は、ここ以外で決まるのだ。
私達にただ、ここでまっているだ…………ああ、決着が着いたようだ。
私からしたら、二番目に嫌な結果で。
一番いやなのは共倒れ。
そして二番目は……
冷たい氷の魔法が霧をも凍らせた。
くうきすらこおらせるとは、あの男、アルマデスは相当の使い手らしい。
『ちっ………アルジェ……良かったわね、お仲間よ。』
「っ!」
仕方なく体を元に戻すべく霧の粒を集めていく。
粒の一つ一つを振動させれば、熱を生み出し氷も溶かせる。
それに気付いたのか、男の方も無駄な氷の魔法を解いた。
「寒っ………よくもやってくれたわね。霧の状態で凍らせるなんて。」
「……。知らん。嫌ならなるな。」
「ふんっ。出、うちの弟は?まさか、殺してないでしょうね?」
「それこそ知らん。殺す直前で姿を消した。」
「そう。母の仕業ね。」
「ご母堂の救いだろ。」
「そうとも言うわ。で?戦うの?」
「いや。」
意外な言葉に私は眉を歪めた。
「では、講和を?」
「そうだな。俺を王にしてくれ。お前も、お前の兄には王位をくれてやりたくないんだろ?お前に、いや、お前の子に王位をくれてやる。俺の死んだ後でな。」
「なっ……!!ちょっと、アルマデスゥ~私という子がありながら、この女を妃にでも据える気?」
「……ふむ。それも良いな。」
「なっ!!言わなきゃよかった。」
お仲間が来たからかアルジェが元気に話し始める。
何となく面白くなくそれを眺める。
向こうも敵対するように此方を睨んでくる。
ふむ、悪くないが。今だとまだ博打が過ぎる。
「まずは、講和といきましょう。その話は後で。兄には……まあ、言わなくても良いか。バカだし。」
「兄上は皇太子なんだろ。」
「まあ、」
「いいのか?」
「いいんじゃないですか?」
まあ、いいんじゃ無いか。
***
こんにちは。まりりあです。
今回切り方おかしかったですよね。
最後まで、続かなかったんです。集中力が。