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病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。13

私は、誇り高き吸血鬼の一族の長女として生まれた。

名をチェスタ。

その身に直系の印である黒翼の紋章を飾れる数少ないものの一人。

女ではあるが?兄さまや弟たちには引けを取らないと思う。

それどころか私は兄弟唯一の女で、婚姻関係で同盟等結べる良い駒であることは自他共に認めている。

その敷かれたレールを嫌だと思ったことは無く、

母や召使い達は可哀想だと言ってくるが、私からしたら女だからと可哀想がる彼女たちの方が可哀想だ。

結婚するなら良家に、中から食い潰す価値のある家に。

そう思っていた。

だから、こんなところで戦っているのは、私の計画には含まれていない。

土にまみれて魔力は常に放出し続け、血と汗を浴びる。

敵か味方か分からない悲鳴や怒声が耳にこびりついた。

これは、なかなか忘れられそうにない。


「報告いたします、チェスタ嬢。右翼にて弟君、サティどの討ち死、右翼の体型が崩れました。」

「あのなあ、立った二人の敵に何をやっていたの?」

「あ、あの、サティ殿は、戦が弱く……。」

「知ってる。あいつにはそもそも期待などしとらんよ。ただねえ、少なくとも私と同じ血が流れてるんだ、噛ませ犬程度には……ふっ…なると思ってたわ。」

目の前に湧いてきた敵の魔法の産物を爪弾いて壊す。

口にくわえた煙管を手に持つと、報告に来ていた男に渡した。

 

「それ、壊さないように持ってて。出来ないやつは仕方がない。出来ないなりに道を空けたってわけよ。私が行くわ。」

「は、はい。隊、チェスタ様の出陣です、道を空けろ!!」


叫んだ男の声に何人か振り返り、私の前を開ける。

全く、やかましい奴らだ。


「よい。続けなさい。」

「「はっ!!」」


声をかけると一様に返事が返ってきて、その後再開された呪文の詠唱が響だす。


今回の摘は男と女が一人ずつ、

たった二人と侮ってかかった兄がぼろ負けして後方送りになった。

今頃治療室で汚らしく悲鳴を上げているに違いない。

そこに居合わせたくはないものだ。

グールやオオカミどももいるというのに、大将がこんなところで地に膝をつくとは一体どう言う了見なのだろうか。

三日間くらい言い訳を聞きたいものだ。

力が強いだけで、行く死が弱い兄には、ほとほと呆れる。

あれが我らがバンパイア一族の未来を背負って立つとは、片腹痛い。

片腹痛すぎて最早頭も痛い。

頭痛の種と言うやつだ。

さて、敵の話に戻ると、近くガーゴイルがオオカミの元へ逃げ込んできたという話を聞いた。

何か、男と女にやられたとかとほざいていたらしい。

そんなどうでも良い情報はわざわざ言いに来るな、とメイドを叱りつけたが、それは此方の間違いだったらしい。

後でお菓子でもあげておこう。


「……お前が、男か?」

「ほう……これは、血吸い獣の姫様。」

「む……そのいいかたは好かないな。出来れば吸血鬼、もしくはバンパイアと言ってくれ。」

「すまないな。」


背に背負っていた愛用の大鎌を持ち出す。

手首と共にくるりと回した。

空を切るひゅんと言う音と取っ手のさきに付けた金のリングが鳴る音がする。

「ほお……良い使い手のようだな。夜の闇に魔法の光で浮かびあがる、まるで夢の中のサキュバスのような艶っぽさだ。」

「あはっ、笑止。そのような低俗な悪魔と比べないでちょうだいな。私、食べる獲物は選びますわ。例えばそう……あなたみたいな、ね。」

すっと指を指し、微笑む。

美味しそうだった。

目の前の男から零れる魔力。

でも違う。

私が後ろで感じて、この戦場に飛んできたときに感じた凶暴なまでの大きな魔力は。

こいつのものではない。


「むくっ……にゅむ……ぷはぁ!!アルマデスゥ!吸血鬼って意外と美味しいのね!!」

「アルジェ。食いながら歩くな。はしたない。」

「む……ごめん。」

「………おい、女。それは、」

突然、虚空から女が飛び出した。

いや、おそらくどこからかか飛んできた。

見覚えのある袖に包まれた腕をしゃぶりながら。

弟のだ。サティのだ。

「ん~?美味しそうだったから、食べちゃった。お姉さんのだった?」

「いや、私の弟のだ。」

「じゃあ良いか。んあ…」

今一度口にそれをくわえると、骨を食むようにガリッとかぶりついた。

…まったく。

イカレタ女が来たものだ。

「ふっ……ふふふ…。」

「?お姉さんも食べたいの?」

「いや、そんな愚図を食べて、移ると困る。弟は、一人で十分だ。来い、ラフィー。」

「はい、姉様。」

転送用の魔方陣を簡易で書いた紙を忍ばせておいて良かった。

呼ぶ声とともに末の弟が飛び出す。

弟たちの中では屈指の魔力の保有量で、その多さ故に瞳が魔力の色、鮮やかな黄色に光っている。

「ラフィー、お前は男の相手をしろ。こちらは私が引き受ける。」

「はい姉様。ご武運を。」

「お前もな。」

ラフィーの短剣と私の鎌を打つけ、高い金属音を鳴らす。

互いの無事を祈った。

ラフィーは足を踏み出すとともに地を蹴った。

勢いよく飛び出し、離れた場所に移動する。

男の方もいつの間にかいなくなっていた。

遠くの方で金属がぶつかる音がする。

あちらは言葉もなく戦い始めたようだ。


「あはっ、お姉さんが楽しませてくれるの?」

「さあどうかしら。」

「お姉さん、そんな格好じゃ……はしたないね。」

「………スリッドのこと?まあ、確かに。でも、これの方が動きやすいのよ?」

「う~ん、分かる。私のドレス、もそれ欲しい。」



***

こんにちは。まりりあです。

眠い。


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