病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。11
「がっ……ごほっ、ごほっ……」
何かがつまったように痛む胸を強めにさすった。
息ができない。
呼吸が不規則になって、深呼吸ができない。
落ち着こう、落ち着こうと思うと、落ち着けない。
焦って頭語混乱する。
駄目…
だめだ……
目の前が真っ暗になっていく。
このまま、気を失うのか……
この冷たい土の上に倒れ伏して……
再び目が覚めることはあるのだろうか。
このまま目覚めることがないのなら、それならそれで良いような気もした。
___こんにちは。ミミィ。
誰かから話し掛けられたような気がした。
耳元から幼い声が聞こえる。
「ねぇ……聞こえてる?私、あなたに話したいことがあるの。」
「う、っ……うん?」
目は開いたが何も見えない。
意識はあるのに体が動かない。
聴覚以外の感覚がない?
いや、さっきから聞こえている少女の声らしき声以外何も聞こえない。
どういうことだろう。これは。
「無理に話さなくても良いわ。あのね、あなたに言いたいことがあるの。私の悩みを聞いて欲しいの。」
意味が分からなかった。
なぜ、この状態で私は彼女の悩みを聞かなくてはいけないのか。
それで何があるのか。
「意味分からないって思ってる?とにかく聞いて。」
あのね……と話し出した少女の話を、静かに聞き始めた。
と言うか、声が出ないのだが。
「私は、人間なんだ。」
へぇ……そうだったのか。
「でも、私は人間じゃないみたい。」
………はい?
「パパとママが言ってたの。私は人間じゃないんだって。私はお荷物。パパとママが暮らすのに邪魔な荷物らしいよ。」
…………ふ~ん。そうなの。
つまり、どういう理由からか両親に望まれない子供らしい。
私には両親はもういないが、確かに愛されていた。
いないのと、愛されていないのでは全然違うだろう。
「可哀想って声。でも全然悲しくないのよ?」
……そうなのか?凄いな。
私は、両親を求めて親の敵にさえ愛を求めたのに。
強いのだな。
「強くないよ。ただ、ずっとずっと自分の奥の方に閉じこもって、耳を塞いでいた。私は其処では皆に愛されていた。」
………つまり、現実から逃げていたのか。
「うん。見ないようにしてた。でも良いじゃん。現実なんて辛いだけ、見る必要なんて無いでしょ。」
……無理にはな。しかし、いつか絶対に見なくてはいけないときが来る。
「そう。だから私は見たの。自分が死ぬその直前に。こここそ私の現実……」
声が変わった。
幼さが掻き消され、大人びた落ち着いた声色になった。
聞き覚えがあるような……ないような。
……ここが現実。じゃあ、私の夢があなたの現実なの?
「いや、ここは私の夢であり、現実。私が現実を見なくては見られなかった夢。」
……よく分からないが、そう言うことなのか。
「深く考えなくても良いわ。さて、私の悩みというのがね。私これから死ぬのよ。」
あっけらかんとした様子で言い放った。
自らの死をここまで客観的に言えるのは、現実を見てこなかった故か。
……それで、私にどうしろと?
「どうにも。あなたではどうにも出来ないことでしょう。」
……はあ?じゃあなんのようなのよ。
「だから、悩みを聞いて欲しいんだって。私の悩み。あのね、旦那が心配なのよ。」
……それこそどうしようもない。
そもそもその旦那を私は知らないのだから。
「う~ん。知らないことないと思うけど。まあ、良いわ。あの人ったら、ほんとにだらしなくて、私がいなくなったらきっと全然駄目だわ。」
……さいですか。それはそれは。
「料理や洗濯はこれっぽちも出来ないし、ご近所さんとの付き合いとかも分からないだろうし、それに、そう子供もいるのよ。育児とか絶対出来ないわ!」
……あー、そう言う旦那さん。駄目ですよ、子供と旦那は甘やかしたら。
「う~ん。でもぉ、あの人もしごととか大変そうだし、あと、いい人だからあんまり強く言えなくて…」
……あー、はいはい、いい人ね。あなたにとってはさぞかし“いい人”なんでしょうね。……旦那さん好き?
「勿論。」
……続けて。
「だから、もう心配で心配で死ぬに死にきれないというか……あ~もう!!」
……お疲れ。
「大体あの人ったら、私に家事させて、ま、まあ、家事は好きだからいいのだけれど、私の方が必ず先に死ぬんだから、ちゃんとして欲しいわ!」
……そっか、人間だもんね。
あれ、と言うことは旦那さんは魔族なの?
「そうなの!異種族夫婦よ!」
……お熱いことで。
「羨ましい?」
……べつに
「とか良っちゃってぇ~羨ましいんだろぉ~」
……だから違うって!
「私が、種族すら凌駕した愛を与えられているから。」
……………。
「大丈夫よ。あなただって愛されてるわ。」
……そんなの分からない。
「周りをよく見なさい。そして、それ以上に自分をよく見なさい。見えてくるものもあるわ。あなたは誰で、なんなのか。」
……私は…
キラッと笑う声が聞こえた。
「大丈夫よ。なんてったってお母さんの子だもの。」
……はい?
「頑張りなさいミミィ。私もあの人も応援してるから……あ…ねむい。もう行くわ。」
……ちょ、待って!どういうこと?
それで終わった。
***
こんにちは。まりりあです。
……。
特に言うことないです。
では、また次回。