表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/32

病弱なまおうのむすめつかまえたけど、俺の手には負えないので、誰かどうにかしてください。11

「がっ……ごほっ、ごほっ……」

何かがつまったように痛む胸を強めにさすった。

息ができない。

呼吸が不規則になって、深呼吸ができない。

落ち着こう、落ち着こうと思うと、落ち着けない。

焦って頭語混乱する。

駄目…

だめだ……

目の前が真っ暗になっていく。

このまま、気を失うのか……

この冷たい土の上に倒れ伏して……

再び目が覚めることはあるのだろうか。

このまま目覚めることがないのなら、それならそれで良いような気もした。




___こんにちは。ミミィ。



誰かから話し掛けられたような気がした。

耳元から幼い声が聞こえる。

「ねぇ……聞こえてる?私、あなたに話したいことがあるの。」

「う、っ……うん?」

目は開いたが何も見えない。

意識はあるのに体が動かない。

聴覚以外の感覚がない?

いや、さっきから聞こえている少女の声らしき声以外何も聞こえない。

どういうことだろう。これは。

「無理に話さなくても良いわ。あのね、あなたに言いたいことがあるの。私の悩みを聞いて欲しいの。」

意味が分からなかった。

なぜ、この状態で私は彼女の悩みを聞かなくてはいけないのか。

それで何があるのか。

「意味分からないって思ってる?とにかく聞いて。」

あのね……と話し出した少女の話を、静かに聞き始めた。

と言うか、声が出ないのだが。


「私は、人間なんだ。」

へぇ……そうだったのか。

「でも、私は人間じゃないみたい。」

………はい?

「パパとママが言ってたの。私は人間じゃないんだって。私はお荷物。パパとママが暮らすのに邪魔な荷物らしいよ。」

…………ふ~ん。そうなの。

つまり、どういう理由からか両親に望まれない子供らしい。

私には両親はもういないが、確かに愛されていた。

いないのと、愛されていないのでは全然違うだろう。

「可哀想って声。でも全然悲しくないのよ?」

……そうなのか?凄いな。

私は、両親を求めて親の敵にさえ愛を求めたのに。

強いのだな。

「強くないよ。ただ、ずっとずっと自分の奥の方に閉じこもって、耳を塞いでいた。私は其処では皆に愛されていた。」

………つまり、現実から逃げていたのか。

「うん。見ないようにしてた。でも良いじゃん。現実なんて辛いだけ、見る必要なんて無いでしょ。」

……無理にはな。しかし、いつか絶対に見なくてはいけないときが来る。

「そう。だから私は見たの。自分が死ぬその直前に。こここそ私の現実……」


声が変わった。

幼さが掻き消され、大人びた落ち着いた声色になった。

聞き覚えがあるような……ないような。


……ここが現実。じゃあ、私の夢があなたの現実なの?

「いや、ここは私の夢であり、現実。私が現実を見なくては見られなかった夢。」

……よく分からないが、そう言うことなのか。


「深く考えなくても良いわ。さて、私の悩みというのがね。私これから死ぬのよ。」

あっけらかんとした様子で言い放った。

自らの死をここまで客観的に言えるのは、現実を見てこなかった故か。

……それで、私にどうしろと?

「どうにも。あなたではどうにも出来ないことでしょう。」

……はあ?じゃあなんのようなのよ。

「だから、悩みを聞いて欲しいんだって。私の悩み。あのね、旦那が心配なのよ。」

……それこそどうしようもない。

そもそもその旦那を私は知らないのだから。

「う~ん。知らないことないと思うけど。まあ、良いわ。あの人ったら、ほんとにだらしなくて、私がいなくなったらきっと全然駄目だわ。」

……さいですか。それはそれは。

「料理や洗濯はこれっぽちも出来ないし、ご近所さんとの付き合いとかも分からないだろうし、それに、そう子供もいるのよ。育児とか絶対出来ないわ!」

……あー、そう言う旦那さん。駄目ですよ、子供と旦那は甘やかしたら。

「う~ん。でもぉ、あの人もしごととか大変そうだし、あと、いい人だからあんまり強く言えなくて…」

……あー、はいはい、いい人ね。あなたにとってはさぞかし“いい人”なんでしょうね。……旦那さん好き?

「勿論。」

……続けて。

「だから、もう心配で心配で死ぬに死にきれないというか……あ~もう!!」

……お疲れ。

「大体あの人ったら、私に家事させて、ま、まあ、家事は好きだからいいのだけれど、私の方が必ず先に死ぬんだから、ちゃんとして欲しいわ!」

……そっか、人間だもんね。

あれ、と言うことは旦那さんは魔族なの?

「そうなの!異種族夫婦よ!」

……お熱いことで。

「羨ましい?」

……べつに

「とか良っちゃってぇ~羨ましいんだろぉ~」

……だから違うって!

「私が、種族すら凌駕した愛を与えられているから。」

……………。

「大丈夫よ。あなただって愛されてるわ。」

……そんなの分からない。

「周りをよく見なさい。そして、それ以上に自分をよく見なさい。見えてくるものもあるわ。あなたは誰で、なんなのか。」

……私は…


キラッと笑う声が聞こえた。


「大丈夫よ。なんてったってお母さんの子だもの。」

……はい?

「頑張りなさいミミィ。私もあの人も応援してるから……あ…ねむい。もう行くわ。」

……ちょ、待って!どういうこと?




それで終わった。




***

こんにちは。まりりあです。

……。

特に言うことないです。

では、また次回。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ