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暗いくらい魔王の城のその奥の奥。

魔王の間。

紫色の煙を揺らしながら今し方倒した魔王がその姿を消しつつあった。

「………勇者よ……よくも……」

悔しげに唸る魔王を鼻で笑う。

恨まれても困る。こちらは正義のために人々を苦しめる魔王を倒したまで。所謂先方の自業自得だ。

「此方も仕事なんだ。」

「………ああ、分かっている。」

おっ、とおどろく。

この魔王はどうやら聞き分けがいいらしい。

変に恨まれて呪いとかかけられても困る。

立つ鳥跡を濁さずの言葉どおり、きっぱり諦めてしまいにして欲しい。

「………勇者よ。」

「んあ?やけにおしゃべりな魔王さまだなぁ。」

「ふっ………」

「わ、笑った?」

大きな角と高圧的な態度。

低い友好度に定評のある魔王のこの反応にはともに来ていたレジーナやマルケレも驚いた顔をする。

「いや、すまん。長らく魔王をしていたのだが、ようやくこの荷を下ろせるってもんよ。」

「そうか。」

………俺達勇者が勇者として人々の信頼と尊敬と期待に応じるために日々苦労しているようにこいつも人知れず頑張ってきたのかも知れない。

「お疲れ……。」

「ああ。」

気が付いたら言葉に出ていた。

魔王と仲良く言葉を交わすなど、誰かに見られたら大変なはずなのに。

でも何となく、同族のように思えて、同情が湧いてねぎらいの言葉をかけていた。

「……勇者。最後に一ついいか。」

「なんだ。」

しんみりとした沈黙を破ったのは不安げな魔王の声だった。

「娘が……いるんだ。」

「何?」

「あの扉の向こう。」

「………俺に殺せってか?」

「………まあ、そうなるな。助けて欲しいとは言わん。殺すならひと思いに。その後で、ここの宝を持ち帰ってくれ。彼女を一人にしないでくれ。」

「……なるほどな。分かった。」

「頼むぞ。ではな……」

紫の煙がふっと消える。

その場にもとから何もなかったかのように。



「デリス。どうするつもりなの?」

「あ?何が?」

「魔王の娘の事よ。」

「どうするって……、どうする?」

「私に聞かないでよ。」

魔王が示した扉の前に付いた勇者ご一行(三人)はこそこそと話し出した。

そもそもトラップではないのか。

助けるか殺すか。

助けたところでどうするか。

問題は山積みだった。

「とにかく、顔見てからだろ。」

「いるかどうかも分からないのよ?」

「いるだろ。マルケレ、扉開けてくれ。」

「わかった。」

三人の中で一番がたいのいい武闘家のマルケレが重そうな扉を開ける。

その中に続く暗闇に目を瞬かせながら、勇者デリスは隣に立つ魔法使いに声をかけた。

「レジーナ。炎の魔法だ。」

「いいけどさあ。魔力ギリギリだからね。一応魔王戦の後なんだから。」

「やれるだろ。魔法学園主席のお前なら。」

「む……出来なくはないけどね。」

ローブの中で握っていた杖を掲げると、呪文を唱えることなく、炎を産み出した。

明るくなった部屋の中を慎重に観察する。

魔王城の赤黒い壁にはにあわない、沢山の動物型のぬいぐるみが散らばっている。

それらに囲まれるように一台のベットが置かれていた。

どうやら、ここは本当に子供部屋らしい。

「へぇ…嘘はついていなかったのね。」

「らしいな。」

周りをきょろきょろと見回しながら、デリスはベットに向かって進んでいく。

この好奇心と行動力が、勇者たる由縁だ。


「………これは…」

ベットを覗き込んだデリスが声を上げる。

あまり喜怒哀楽を表情にする方ではないので、なかなか珍しい。

「どうしたの、勇者様。驚くことあった?」

「あったな。」

レジーナとマルケレも近寄る。

そして。

「なっ………」

「!」

同じように絶句していた。


そこに眠るのは、一人の少女。

魔王の娘だけあって、その頭から生える角は確かな魔族の印だが、なんというか、なんとも……

「可愛い~!!」

レジーナが叫ぶ。

その声にとんがった耳をピクリと動かすと、うっ、と唸り声を上げた。

あっ、と、慌てて口を塞ぐレジーナ、でも、この時三人とも気が付いた。

おかしい。

「レジーナ、お前、魔法学園で習ったか?」

「言わんとしてることは分かるわ。一応ね。」

「職業柄、俺も分かる。」

「「「どう見ても、正常じゃないよな?」」」

声が被る。

そう、少女の額にはたまのような汗をかき、顔色は青白く、ネグリジェの隙間から見える首筋も汗で濡れて、鎖骨がくっきり見えるほど、痩せこけていた。

魔王の娘。魔族の頂点の血を引くのだから、どんな悪逆非道な、傲慢小娘が出てくるかと思っていたが、その斜め上を行くものだった。

と言うか、

「お、おい。レジーナ、介抱できないのか?」

「魔族の仕方とか知らないし、」

「人間と同じだろう。」

「どうだろ?ていうか、殺さないの?」

「お前だったら殺せるのかよ?」

「む、無理!」

「あ……あー、ほら、あれだ。今後の研究のために国に連れ帰ろう。」

「そ、そうよね。魔王が死んだとは言え、魔族がいなくなったわけじゃないし、何より、次の魔王が生まれるはずよね。」

「その時に、人質……には使えないけど、躾けて戦わせれば。」

「人種への被害ゼロ?」

「「それだぁ!!」」


そんなこんなで連れて帰ることになった魔王の娘は、この後いろんな事件を起こすことになるのだが、

それは、次のお話しで。




***

新シリーズへの練習作として書いています。

こんにちは。まりりあです。

ファンタジーって奴ですかね?

ドラ○エ好きなので。書いてみたくて……えへへ。

魔王とか格好いいですよね。

可愛いお姫様とかでるからね!

誤字脱字も見つけてね!

では、またの機会に。

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