3、謎のメモは再び現れる
「しかもそれがまた奇妙でさ、誘拐された人たちはみんなバラバラにされてるんだって。」
声を小さくした涼がおっかなびっくりとした様子で語る。
「その噂、確証はあるのか?」
聞けば聞くほど怪しさが増すその噂に涼の言葉を遮った。
「友達伝いだから確証はないな。でも、用心は大事だろう?」
噂がどの程度信用できるものかは置いておくとして、涼の言うことも一理あるだろう。
昼食を終え、2人は帰路に就く。その途中、ポツン、と建っている喫茶店の前で涼が立ち止まり声を上げた。
「うっわマジかよ、開いてんじゃん!」
実治がどうした?と聞こうとするとその言葉を待たずして涼が語り始めた。
「この店、たまにしか開いてないんだよ。俺ずっと気になってたんだけど一回も入ったことなくてさ。入るぞ、世一!」
引っ張られるように手を引かれ実治達は店の中へと入っていく。
「いらっしゃいませ、開いてる席にどうぞ。」
涼に引きずられるまま入店した喫茶店はコーヒーの良い香りが充満した小さな喫茶店だった。
「やっべぇ、テンション上がってきた。」
興奮する涼をなだめつつ店の様子を観察する。
見たところ机は4つしかないようだ。そして店に入ってすぐのところでマスターと思われる人がコーヒーを淹れている。おそらく他に店員はいないのだろう。
程なくして運ばれてきたコーヒーもセットのケーキも至って普通、たまにしか開かないと言われ少し興味があったが一般的な喫茶店となんら変わりがない。興奮する涼の言葉をほとんど無視しながらスマホを開いた。
どのくらい経っただろうか。涼がようやく落ちついたのでそろそろ店を出ようと切り出そうとした時だった。
明るくて話し上手で顔もいい。こんな人、そうそういないんじゃないの?自分と全然違う。ああ、バラバラにして何食べて育ったのか知りたいなぁ。
スマホのメモにはそう書かれていた。メモの内容に驚く。そしてそれを行動にしてないか慌てて周囲を見渡す。喫茶店の中には実治と涼以外に、テーブルにコーヒーを運ぶマスター、難しい顔をして話し合っているスーツの男が2人、マスターを巻き込んで会話をしているおばさんが4人いるだけだった。幸いなことに実治に対して怪しい目を向けている人間は1人もいない。
「おーい世一?どうしたんだ?難しい顔してるぞ。」
ふと顔を上げると少し不安そうな顔でこちらを覗き込んでいる涼がいた。
「ああ、なんでもないよ。少し考え事をしていた。」
このメモの内容、どう見ても危険だ。そもそも僕はこのメモを書いた覚えがない。では誰が…