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思い写しは非可逆性  作者: 希志加丕芽
第一章 思い写し
1/11

1、謎のメモ

1/7、誤字を訂正しました

何気ない大学の何気ない午前の講義。教授がホワイトボードにマーカーを叩きつける音が講義室に響く。

「マズローの欲求5段階説、試験に出すからな。しっかり覚えておくんだぞ。」


知ってる。


生徒が各々ノートを取り始める中、世一実治(よいちみはる)はボーッとホワイトボードを眺めていた。実治にとって大学の講義から得られる学びは多くない、たまに自分の知らない理論や哲学が議題になる程度だ。

今日の講義もノートとペンを使わずに終わるだろう…。

時刻は講義終了10分前を指していた。実治はつまらなさそうに机の上の荷物を纏め始める。するとノートに何かメモが書いてあるのが目に入る。


腹減ったー、今日の昼飯は何食べよう。確か世一がこの後の講義無かったはずだし一緒にラーメンでも食いに行くか。


ノートに身に覚えのないメモがあり驚きを隠せない。しかも文脈から察するに自分の一人言でもないようだ。では誰がこれを書いたのだろう…。実治は周りを見回す、しかし周りの生徒はノートを取ることに真剣になっていたり、諦めて机に突っ伏していたりで実治に意識を向けている人など誰もいない。ノートに書かれた謎のメモの正体について考えているうちに教授の声が聞こえてきた。

「そろそろ講義も終了の時間だな、おつかれさん。」

結局メモに関して何もわからないまま実治は講義室を後にした。


あのメモはなんだったのか、誰が、いつ、どうやって僕のノートに書き込んだのか。考えれば考えるほど疑問が湧いてくる。


「おつかれ世一!今回の講義内容、どうだった?」

背後から声をかけられ意識がメモからそちらへと向く。声の正体は実治の友人、須藤涼(すどうりょう)だった。

「僕としてはいつも通りだったね。」

「いつも通り知ってることばっかでつまんない、って感じ?優等生は退屈ですなぁ〜。」

涼はいつものようにからかい混じりの冗談を飛ばしてくる。

「でさ、世一ってこの後の講義無いでしょ?一緒に昼飯でもどうよ?」

今日初めて聞いたその言葉に対して既視感を感じる、どこかでこの言葉を聞いたような…。

「一緒にラーメン食いに行こうぜ!」

その一言をスイッチにしたかのように一気に既視感の正体へと辿り着く。


メモだ…ノートに書いてあった内容と一致する。ではあのメモは涼が?でも涼が書いたのだとしたらもっと誘うような書き方をするはず。そもそもさっきの講義では近くに涼はいなかった。


「世一?おーい、ラーメン行くの?行かないの?」

実治は再びメモの正体について考え込んでしまった。昼ごはんのお誘いに回答をするべく涼の方へと意識を向け直す。

「ん?ああ、行くよ。」


何気ない日常が何気ない日常じゃなくなったのはここからだった。

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