天才詐欺師からの手紙
ある王国がありました。そこに天才詐欺師がやって来ました。
彼は口調こそ丁寧ですが、サギの世界では知らぬ者がいない、という存在でした。
ある日、天才詐欺師は王国の財宝を狙い、身分を偽ってその王国の姫に近づきました。
やがて二人は道ならぬ恋をしました。
立場はちがいますが、二人は本気で恋をしました。
少なくとも詐欺師は姫のことを深く思いました。愛してしまいました。
当初の計画通り、詐欺師はやがて王国の財宝を盗み出します。
足がつく前に逃げ出さなければなりません。
二度とこの国には来ないつもりです。
詐欺師は迷いました。
愛する姫に自分は詐欺師であると真実を告げ、その場を去った方がいいのか。
それとも何も言わずに去った方がいいのか。
とりあえず落ち着かないので、詐欺師は自白する手紙を書き始めました。
姫に渡すとしたら、それを読んだ姫はだまされていたという真実を知ることになります。
王国の財宝を盗まれ、しかも盗んだ犯人は詐欺師本人だった、ということ。
でもこれは言う必要があるのか。本気で愛した女性に、さらに要らぬ追い討ちをかけるのか。
やっぱり知らせないほうがいいのか。
つまり自分が本気で愛した女性をだましたまま生きるのか。
真実を告げ、その場を去った方がいいのか。
それとも何も言わずに去った方がいいのか。
詐欺師は判断できずにいます。
詐欺師は自白する手紙を書き進めています。読んだら姫はどう思うんだろう。
とりあえず、ことばや文法がおかしくないか、調べながら書いています。
丁寧に入念に書きました。
こんな真剣な告白なのにミスがあったら恥ずかしい。誰でもそう思います。
見たところ間違いはなさそうです。大丈夫そうです。
これなら読んで分からないことはないです。
よし、おわり。やっと書き終わりました。
意外と、手紙の最後の方まで来てしまいました。
念のためもう一度最初から読み返してみます。慎重です。
詐欺師はここで、手紙を読み始めます。(冒頭へ)