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それから一年が過ぎて俺はアトリエにいた。
「アリ様、お部屋のお片付けすべて終わりました」
そう言ってメイド服を着たシャルルが俺の元に来る。
「なあ、前から言ってるが俺と2人の時はタメでいいぞ?」
「いいえ、師匠と弟子の関係です。タメ口など使えません」
……そうか、普通はそういうものか。
弟子第1号が自由すぎて忘れてた。
「じゃあ先ずは『呪文』を使わずに魔法をちゃんと使えるかだ。試しにやれ」
「はい、《ファイアジャベリン》!!」
シャルルの手から1メートルほどの大きさの槍が炎を纏いながら飛んで行く。
「……ふぅ、できた」
《ファイアジャベリン》は火属性の中級魔法だ。だが、シャルルに確認したらどうやら上級魔法に格上げされているらしい。
まあ中級の中でもダントツで火力が高いからそういう事もあるのか。
「うし、上出来だな……なあ、毎回思うんだがなんで火属性の魔法ばっかり使ってんだ?」
少し気になった。こいつはなんでか毎回毎回俺には火属性の魔法しか見せない。
前に命令で他の属性の魔法を打たせた事があったが普通に成功していたので少し不思議だ。まあ、火属性の方が使いやすいのかもしれんが。
「え、ええと……ア、アリ様は赤紋様ですよね?その、アリ様と同じ魔法を使いたくって……」
一年経つとガリガリの体も正常になって行き肌は綺麗になり髪も整えられてびっくりするほどの美幼女になったシャルルが顔を赤らめてもじもじする。
なんで俺と同じ魔法を使いたいんだ?これは遠回しな宣戦布告か?
まあ可愛いと思うが俺はロリコンじゃねえからなんも感じん。
「そうか、お前には言っといた方がいいか。俺も虹紋様だ」
そう言って右手の甲を見せて魔力を通す。
すると虹色の光が溢れ出す。
「……え?えええええ!!!!」
普段はあまり動揺を見せないシャルルが驚いている。
「え、だって。アリ様赤紋様と言っても通じる位に火属性を扱えていますよね?」
「いや、俺は一番得意なのは風だな」
「そ、そんな……でもアリ様と同じ紋様……えへへ〜」
どうやら俺はこいつにとって絵本の中の英雄の様な存在らしく、俺と同じ魔法を使える事はアドバンテージだと考えていたらしい。
しっかし、こいつは本当に感情の振れ幅がでけえな。
「ほら、んじゃ今日は魔物狩るぞ」
「……魔物、ですか」
魔物という言葉に反応する。
怖いのか?だがあれだけ魔法が使えるんだ、ここら辺の魔物程度一撃でいけると思うんだが。
「どうした?」
「いえ、少し怖くて……」
「何を怖がってんだお前?俺に怒鳴られて無理矢理連れてかれるか自分で歩くか好きな方を選びやがれ」
「……怒鳴られるのもいいかも……」
「2年後くらいにまた来る」
そう言って転移の魔法陣に入ろうとすると。
「ごめんなさい!行きます!行きます!」
後ろから抱きついてきやがりやがった。
「ああもう鬱陶しい、行くんなら行くぞ」
「はい!」
そのあとは普通に魔物を倒した。
シャルルは以外に簡単に倒せることに初めは驚いていたようだが、慣れてきたのか段々と動きが洗練して行くようになった。
俺はそこらへんで寝てる。
勿論ヤバくなったら助けるつもりだが別に良いだろう。
そして帰ったのは大体午前3時くらいだった。
帰ってもやる事は無いので俺はゴロゴロしている。
シャルルはどうやら俺にだけ付いているらしくて俺がゴロゴロしているのをまるで小動物を見るような目で見てくる。
まあもう慣れたからどうでもいいと考えていると、扉がドンドンと大きな音を立てる。
知らないノックの仕方だ。
「はい?」
ドアを開けてみると、そこにいたのは……
「兄さん……」
俺の今世での兄、『エアル・クレス』確か今年で16歳、貴族院で高等部門に上がる事で部屋を移住するため今はこの家にいることになっている。
「まだいたのか虹紋様。クレス家の恥さらしめ、俺は緑、リアスは白の紋様を持っているというのに、お前は虹。はぁ、どうしてこんな奴がうちに生まれたんだろうな?」
兄さんはどうやら俺の事がかなり嫌いらしく、いつも突っかかってくる。そして……
「そこの虹紋様のメイドもまだいたのか?俺がここの当主になったらお前を性奴隷にしてやってもいいぞ?」
まだ9歳のシャルルを狙うロリコンだ。
いや、シャルルは今のままでも十分に可愛いから将来を見越してってのもあり得るが、兄さんが今見る目は完全に狼のそれだ。
兄さん絶対にロリコンだよ。
「いえ、私はアリ様と一緒に過ごすので」
「っは!虹紋様同士仲良く下等な子供でも作るのか?」
皮肉なのかよく分からない事を言ってくる。
「そ、そんな。アリ様と私が子供だなんて……」
顔を手で覆い、怒りかよく分からんが指の隙間から見える顔は真っ赤になっているシャルル。
まあそういう反応だよな。普通は俺なんかと結婚したくも無いだろう。
だが何故かその言葉がお気に召さなかったようで兄さんはさらに激昂する。
「おいアリ、俺と決闘をしろ」
「ええ……何故ですか?」
「この虹メイドの主人が誰かを決めるんだよ。勝った方がこいつの主人だ」
「それって俺が勝った時のメリットが無いんですけど」
そういうと、兄はキョトンとした顔をした。
めちゃくちゃ面白い顔だったからまたやってくれないだろうか。
「ギャハハ!!お前、虹紋様のお前が俺に勝つ気でいるのか?ははは……は〜笑った笑った。いいぜえ?なんでも言う事聞いてやるよ」
なんでもと言われてもなあ、別にこいつにやってほしい事なんてこれっぽちもないんだが……
「じゃあ明日の午後2:00に庭でな、言っとくが、この事母さんや父さんに伝えたらタダじゃおかねえ」
そう言って去っていった。
「モテる女は辛いなあ、シャルル」
「え?何のことですか?」
……兄さん、あんたの思い一欠片も伝わってないぜ……
「いや、今の話聞いてどう思ったか?」
「え?いえ、いつも通りアリ様がご主人様なのだと思いましたが」
少しはこいつ俺が負ける姿を想像しやがれ。
「さってと、明日の午後2:00な。取り敢えずすぐに終わらせるか」
「受けるんですか?」
「ん?ああ、俺は喧嘩は売らないけど売られた喧嘩は買う主義なんだ」
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