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それから俺は魔法の授業があるはずだったのにその授業がキャンセルされた。
どうやらこの時代では虹紋様は本当に魔法を使えないと思われているらしい。
確かに虹紋様は魔法を扱える用になる為にはかなりの練習が必要だ。だが、使えないわけじゃ無い。
……スペリオル野郎がいるんだし、その事はちゃんと伝わってると思ってたんだが……
まあ、うちの家だけの風習の可能性もあるか。
「《ウィンド》」
風属性最下級の魔法効果は風が吹くだけの魔法だ。
……成る程、確かに扱いが難しい……が。
暴れ狂う魔力を抑えて、魔法を発動させると、風が吹いた。
「やっぱ発動はできるな」
俺の力が貧弱すぎて昔の俺と比べる事は出来ないが、これならば中級魔法程度ならば楽に使えるだろう。
「じゃあ……あとはあれか……」
風属性が使えるのはわかった。
では、他の属性、例えば土属性はどうだろうか?
「ここじゃあ無理だな……」
仕方ない。外に出るかと思っていると、コンコンとドアがノックされる。
「はーい」
軽く返事をすると、部屋に1人の幼女が入ってくる。
「おにいさま、わたくしとあそんでくださいませんか?」
「リアス、いいよ。何で遊ぶ?」
『リアス・クレス』俺の今世での妹だ。
今年で4歳で俺とは2歳差だ。
母によく似た顔立ちで父に似た茶色がかった金髪の美幼女だ。
俺はいつもリアスと遊んでいた。
兄は学校に行っているし、父と母も仕事がある。
周りの使用人達も身分を意識して遊ぶことをしない。
よって俺が毎回リアスの遊び相手になるのだった。
リアスは俺の最高の妹だから全く不満では無い。
もしリアスに『おにいさま、魔王を殺してください』とか頼まれたら俺は2秒後にリアスの前に魔王の首を持ってきているだろう。
「ほんとうですか!きょうは——」
結局、この日はリアスとずっと遊んで土魔法の練習は出来なかった。
「……ここなら誰もいないか……」
転生して俺は世間体と言うものを理解した。
故に俺はこういう森で模倣の訓練をするしかない。
今の俺は本当に興奮している。
もう伸び代がないと思っていた俺の魔法がまだ磨かれつつあるんだから。
今までは適正に頼っていたが、適正がなければより精密な魔力操作を必要にされる為、自分の未熟さと魔法の奥深さを噛みしめる。
今日は待ちに待った土魔法だ。
「取り敢えずは、《アース》」
魔法を唱えると、近くの土が盛り上がったではないか。
土魔法がちゃんと使える。これは大きい。
……さて、今土魔法を使って気になったことがある。
魔力の波長が風魔法を使った時と同じなのだ。
波長とは個人が使う属性によっても変わるもので、魔法には必ず波長が存在する。
そして、俺が昔研究していたことでこう考えたことがあった。
『魔法と魔法をくっつけることってできねえか?』
結論から言えば無理だった。
波長が違うとお互いが反応し合うからである。
しかし、もし波長が同じ魔法があるのならば?
「……やってみるか」
落ち着け俺、まだそうだって確信できてる訳じゃねえんだ。
「《ストーム》、《クレイ》」
風属性中級魔法と土属性の下級魔法を同時に発動してみる。
……いや、というか別属性同時発動できるのか。
何となくで行なったが、それは成功した。では、魔法の合成は?
そこには、《クレイ》で創り出された土が勢いよく吹っ飛んでいる光景があった。
「《止まれ》」
魔法とは普通は現象であり、発動させても止める事はできない。しかし、それは一般てきな魔法使いだけだ。
この様に風属性を含む魔法は風を意のままに操れたりする。
そして、《クレイ》で創り出された土はそのまま空中で静止した。
「はは……ははははは……はははは!!!!」
顔を抑えて、腹を抱えて爆笑してしまう。
これはすごい!年甲斐もなく興奮のボルテージは最高潮だ!
魔法同士を合わせることができる!
それはつまり魔法の数が増えれば増えるだけそれ以上に新たな魔法が生まれるという事だ!
これはまずい。こんな物を見せられてしまったら……俺は本気になってしまう。
その後、俺は笑いながら魔法を使い続けた。
そして分かったことがある。
全ての属性が魔法を合わせることが可能であると。
水と油だと揶揄されてきた聖属性と闇属性でさえも、合わせることが可能だった。
しかし、残念なことがある。
3つ以上合わせられないのだ。
これは完全に俺が悪い。3つ目を合わせるとなると精度の難しさが数百倍にまで上がる。
流石に今のままでは使う事は無理だが……もし、俺が『神域』まで全属性を使える様になったら、それはどうなるんだろうか?楽しみだ。楽しみで仕方がない!
そう思いながらも、俺は家に帰ってベッドに入って寝た。
虹紋様は最高だって事が分かり、最高の1日となった。
魔法を繋ぎ合わせる技術は魔法融合と名乗る事にした。