従魔
「フェアはこの後どうするの?」
昨日・・・というより今朝真っ二つになったイノシシの魔物を焼きながらシュンは尋ねた。ちなみに火は、魔法が使えないので服の中に忍ばせていた火の魔石を砕いて点けた。魔石は汎用性が高いので火をつけるためだけに使ってしまうのはもったいなかったが、フェアも火魔法は使えなかったので仕方がない。久しぶりの火のぬくもりは心地よい。
(どうする・・・って?)
「フェアはこの森に棲んでたんでしょ?僕はこの後人里に降りるつもりだからそこでお別れだけど・・・。」
できれば一緒にいてほしいなあ、というのは自分のわがままだろう。
そう思うと、フェアはまたため息をついた。あ、そうだった。フェアは心が読めるんだった。ついつい忘れちゃうな。
(あのね、というよりも私は従魔になったからシュンについていかなくちゃいけないの。この意味わかる?)
「え、従魔って、ずっと一緒にいないといけないものなの?」
てっきり簡単な仲間認定のようなもので、フェアの生活を縛るようなものではないと思っていたのだが。
(あんた、ステータスとかあんまり気にしないタイプなの?)
「ん?・・・まあ、そうかなあ。」
日本にはステータスそのものがないからな。17年間でステータスがある感覚にはすっかり慣れたが、確認する習慣がなかなかつかない。
(ステータスがない世界って・・・私には想像つかない。自分が使える魔法もわからないじゃない。)
「というより、魔法そのものがないから。」
(そういえばそうだったわね。そんなんでどうやって生きていくの、って最初は思ったけど。)
「便利なものがなくても、何とかなるものさ。実際科学なんて、専用の道具が必要な魔法みたいなものだし。」
きっと過去から来た人からすれば、現代は魔法に満ちているのだろう。
(それよりも、ステータスよ。シュン、ステータスの《テイマー》欄を見て。)
シュンは言われたとおりにステータスを開く。
(本当に、見事なまでに何もないわね。)
「え、僕のステータスが見えるの?」
普通は自分のステータスしか見られないのに?
(従魔とテイマーはお互いのステータスを見ることが出来るのよ。そこら辺の説明も《テイマー》欄に載ってるはずだから。)
そういわれて見ると、確かにそのようなことが書いてある。
「なになに・・・。『従魔は人間で言う奴隷と同じです。従魔はテイマーの指示に絶対服従なので、襲われる心配はありません・・・』ってなにこれ!?従魔ってそういう感じなの!?」
縛らないどころかがっちり束縛じゃん!!
(だから言ったでしょ?従魔になりたがるのは変わり者だって。)
「いやいやいくら何でもこれはないよ・・・。え、フェアってそういう趣味、」
(黙らっしゃい!)
フェアに飛び膝蹴りをくらわされた。フェアは小さいので威力はないはずだが、レベル1のシュンは吹っ飛ぶ。
「ぺっぺっ・・・うー、土が口の中に入ったー。」
(自業自得ね。バカなこと言うからよ。)
「うー・・・。じゃあなんで従魔になってくれたんだよー。」
(だって会話ができないのは不便じゃない。)
「そういう理由!?」
確かにテイマーになったおかげでフェアと話せるようになったけど。というか、いつテイマーになったんだっけ?
(私が勝手に従魔契約を結んだときよ。従魔を持ったら強制的にテイマーが使えるようになるから。)
ってことは・・・フェアが淡く光ったときか!
「ってか勝手に契約してたの!?何にも言わないで!?」
(だって喋れないんだから許可を得ようがないじゃない。)
「そりゃそうだけどー・・・。」
なんかフェアに振り回されている気がしてきた。
「でもいいの?僕の従魔になって。」
(いいと思ったから契約したんでしょ?)
「だって、もし僕が悪い奴だったらどうしたんだよ。奴隷みたいにこき使われてたかもしれないんだよ?」
(テレパスであんたがそんな奴じゃないってことはわかってたし。)
テレパス・・・便利だなあ・・・。
そのころ作者は、お肉が焦げやしないかとひやひやしていた。