中華そば すずき
動かなくなった愛車NSXをレッカー車で引き取ってもらった翌日、僕は徒歩で銀行へ向った。
3年前に引きこもりになる前、銀行で降ろしたまますっかり忘れていたタンス預金と、父から毎月5万円の援助にあまり手をつけていなかったので、かなりまとまった金額があったのだ。
銀行からの帰り道、僕は思いつきでラーメン屋に寄った。
今日は、3年ぶりの外食だ。
記念すべき第一食は、やっぱり中華そば すずき
「食の軍師」等でも紹介されていたし、今では全国的にもかなり有名な店だろう。
頼もうとしたチャーシューメンは、売れ切れだった。
地元の僕でも、ここのチャーシューメンは、食べたことがない。
まるで幻のメニューだ。
仕方が無い、ラーメン大盛りだ。
メニュー表を見ると、3年前に引きこもり前に来たときと同じ値段だ。
ラーメン250円~のメニュー表だ。
この値段は30年前と同じではないか?
まるで、30年数年前の高校生時代にタイムスリップしたような気になる。
ここでは、いくら待っても水も出てこない。
自分で厨房に頭を少し侵入して、置いてあるコップとラーメン調理中のすぐ脇にある給水機にセルフで水を注ぐのだ。
この仕組みが判り辛いし、やり方が判ってもやり辛いだろう。
実際、僕以外の客は水のコップがテーブルに無いのだ。
300円丁度を用意してテーブルに置く。
ちょっとオシャレなレストランと同じテーブルチェック方式だ。
まあ、この店は前払いだけどね。
出てきたラーメンはとてもシンプルなもの。
まさに昭和のラーメン。
ほうれん草も、卵もない。
麺と海苔、シナチク、僅かなチャシュー
旨い・・・
いや、本当は大して旨くはないのだ。
食通なら、不味くて食えたものではないかも知れない。
今時の高級カップ麺の方が余程美味しいだろう。
だけど30数年前、高校生だった僕が食べた時と変わらないこの味・・・
僕は、心の中でむせび泣いたんだ。
【DATA】
住所 茨城県水戸市大工町1-1-12
電話 不明
営業時間 10;00~18:00
定休日 日曜日
駐車場 お店の反対側の道路の奥だが、かなり判りづらい。
店の看板もないのだ。
僕自身、初めて車で行った時は不安だった。
場所のヒントは今は無きアサヒ模型。