学生殺人鬼と人食い屋敷
初投稿です。長ったらしいですがもしよかったら見ていってね
夜の道端で二人の男が話している。
一人は会社員らしき男性。うつ伏せに倒れており背中には刃物で刺されたと思われる大きな切り傷がある。そして痛みをこらえながら目の前にいる男を精一杯にらみつけている。
一人は学ランを着た少年。男性の前にしゃがみ込み右手で血に染まったナイフをくるくるともてあそび、男性の視線を気にもせず無邪気な笑みを浮かべて男性を見下ろしている。
「君はなぜそんなことをする」
男性は意識が朦朧とする中少年に尋ねる。
「なぜっておっさん。それ無差別殺人気に聞くことじゃねーだろ」
少年は面白そうに言う。
「俺ァ殺人鬼なんだぜ?殺人鬼は人を殺してなんぼのもんだろうがよ」
「……君は何なんだ一体」
「俺か?へっへっへ、俺はなぁー」
嬉しそうに反応する少年。そしてこう答える。
「俺は現役学生殺人鬼の草薙幸人。んじゃ、地獄で逢えたらまた会おうぜェおっさん」
これまで三年間必ず一日に一人殺してきたのにもかかわらず誰にも目撃されたことのない最悪の殺人鬼、草薙幸人はそう答え、満足げにうなずくとすでに息絶えている男性を後に軽い足取りで家に帰るのだった。
「行ってきまーす」
草薙は家にそう声をかけ学校に向かう。まあ草薙の家は彼のせいで無人になってしまったため、返事が返ってくるわけがないけれど。彼が13歳の時に彼の父母、祖父母全員が刺殺されたのである。当時犯行は草薙幸人にしかできなかったが13歳の子供には不可能だ、という警察の意見があり彼は全く疑われずに済んだのである。このことに関して彼らは悪くなかった。13歳の男の子が一人で4人の大人の内臓を引っ張り出して殺したんだと納得できる人がいるわけがないからだ。
「全くひどいことするやつもいるもんだな」
とつぶやいたところで草薙が通う高校に到着。
学校内はいつもと同じようにいろんな話題であふれている。芸能人の恋愛報道や人気歌手の新曲についてなど。その中に昨夜30代の男性が、道端で噂の殺人鬼と思われる人物に殺されているのが発見されたという話題を聞いて、草薙は気分がよくなった。自分のうわさを聞くことや名を名乗ることが彼は大好きなのだ。だから自分の話題より幽霊屋敷というどうでもいいものが話題になっていることが彼は許せなかった。
彼は間違いなく今まで1000人以上殺してきているがそんなものに出くわしたことなど一度もないからなおさらである。探索に出かけた人たちが全員首をつって発見されるのも、いきなり死にたくなったからに違いない(そんなわけない)。おそらく幽霊を装った人間がその幽霊屋敷とやらにいるのだろう。今日はそいつらを皆殺しにしようと決め、きょう肝試しに行くという名も知らないクラスメートのグループに入れてもらうことにした。
屋敷に入って3分ではぐれた。
「……」
案外彼は普段からドジなのでいつものことだと開き直り、もとい、思考をポジティブに切り替え一人で探索を続ける。ところがいくら屋敷を徘徊したところで何も見つからない。一緒に来たはずのあいつらは帰ってしまったのか、俺も帰りたい、ラーメン食べたい、と夕食のことに思考が行く寸前でようやくこの屋敷の異変に気付く。
「……なぜ何も出てこない」
別に今更幽霊に出てきてほしかったわけではない。さっきから人はおろか虫一匹さえ見つからない。こんなぼろ屋敷なのに。彼は廊下を歩き再びドアを開けた。
やけに広い部屋についた。部屋に入るなり彼は誰も見たことのない2つの光景を目にした。
一つは床である。床自体は何の変哲もないただの床だがその上に人の排せつ物がまんべんなくぶちまけられたいた。ところどころに眼球と思われるものも転がっている。
もう一つは察しが良い人ならわかるであろう、ロープで首を吊った数え切れないほど死体が、天井からぶら下がっていた。
「…クッセェェェ!!!!」
これだけグロテスクな光景を目の当たりにした草薙の最初のリアクション、さすがである。
「なんだこのスカンクや俺の友達の屁と同レベルの臭いは…」
どうやらこの少年の友達には生物兵器がいるらしい。
「…まぁこんなもん見せられたら幽霊ってやつも認めざるを得ないか。さっきからなんかうねうね動いてるしここ」
草薙はナイフを取り出し構える。
「幽霊っつったらきれーなおねーさんを想像してたんだが…まぁ仕方ない。幽霊相手は初めてだががんばって殺してやるよ」
笑みを浮かべながら学生殺人鬼は言う
「かかって来いよ…人食い屋敷っ!!」
あれだけかっこいいことを言って置きながら最初の10分間、草薙は突然上から現れ首を持っていこうとするロープや亜空間から飛んでくるシャンデリアを相手に逃げ続けなければいけなかった。幽霊屋敷の倒し方などいくら殺人鬼でも知ってるわけない。ゲームと違って本体的なものもいない。
(ほんとにまいったなこりゃあ)
シャンデリアを飛んでかわしながら彼は考える。
(特にこのシャンデリアが厄介だな…。壁もすり抜けてくるんじゃ反応が……ん?)
ドジな彼は気づく。
(…どっからでも撃てるんならわざわざすり抜ける必要はない。俺の真横から撃てば俺もよけられない。てことはやっぱどこかに本体みたいなのがいんのか?)
そう考えた彼は懐から無数の跳弾性ナイフを取り出し、四方へ投げ始めた。その名の通り壁に当たると跳ね返り、拡散する彼専用の恐ろしいナイフである。ほとんど反応はなかったがなぜかシャンデリアが2,3個固まっているところがあった。
「ハハッ、バレバレだな」
草薙はシャンデリアたちが守った何かを追う。
シャンデリアやロープが必死に止めようとするが何も彼をとらえることはできない。
「無駄だぜ幽霊」
タン、とシャンデリアを踏んで飛び上がり、ナイフを構える。
「殺人鬼からはニゲラレネェヨ」
ひゅっ、ナイフが飛ぶ音。その直後、シャンデリアたちが守っていた鏡のようなものが割れる音がする。
とたん、屋敷が悲鳴のような音を発し始めた。それは怒りや呪いが込められていると同時に、悲しみも感じられる音だった。
「……おいおい。怖い声出すんじゃねぇ」
草薙は全く怖くなさそうに言う。それでも悲鳴がおさまらない屋敷に対して彼はこういった。
「俺はお前の怒りや悲しみは理解できねぇよ。だからそんな風に怒られてもどうすることもできねぇ。慰めることも叱ってやることもな。まぁアドバイスするとしたら」
彼は続ける。
「頑張って成仏しろよ。一応幽霊なんだろ?ならできるはずだ。無事あの世に行ければまた俺と会えるだろうし」
じゃあ、と。
草薙は最後にこう言った。
「地獄で逢えたらまた会おう。人食い屋敷」
気が付くと草薙は何もない空き地の前にたたずんでいた。
「……やっと終わったー。なげー1日だったぜ」
それにしても、と彼は考える。
強かったな、と純粋に思ったのだ。人間を殺しているときにはない緊張感があって楽しめたというか。
「これからは人間以外を殺すのもいいな。いたらだけど」
と、
前方から年配の女性が近づいてくるのを見つけた。
そういえば今日一人も殺してないことに気が付く。
……
「……あれでいっか」
草薙幸人は無邪気に笑いながらその女性に向かって歩き出す。
3年間休まず躊躇なく無差別に人を殺す殺人鬼、草薙幸人。今後たくさんの幽霊とかかわりを持つことになることを、彼はまだ知らない。
結構楽しい
感想待ってます