表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 穏田




 花を手折たおる。

 満開のそれを彼に渡した。


――気付かない。


 彼は気付かない。

 もう1本、柔らかく瑞々しい茎を折る。


「もういらないよ」


 1本でいいと彼は言った。緑色の飛沫が私の手を濡らして、指をすり抜けて落ちていった。

 アネモネの花びらを千切っていく。

 溜息は誰にも聞こえない。彼は遠くへ行ってしまった。

 もう、私の元へは帰ってこない。


 アネモネは無残な姿で泥にまみれて死んでしまった。






 花を手折る。

 ハナミズキを彼に贈った。

 お返しはなかった。






 花を手折る。

 クルクマは気に入ってもらえなかった。


――どうして。


 彼は首を振った。






 花を手折る。

 リナリアは私の心の全て。


「受け取れない。こんなもの、受け取れない」


 リナリアを踏みにじる彼は別の花を手に取った。






 ぽろぽろと涙がこぼれる。

 最後に一つ咲いた花を、最後に愛した彼に差し出した。


「ありがとう」


 彼はたくさんの花を抱えながら言った。


「嬉しいよ」


 それだけだった。

 シクラメンは受け取られ、私には何も残らない。


 花はもう咲かない。

 私には何も残らない。






お読みいただき、ありがとうございます。

花言葉ネタです。


アネモネ:嫉妬のための無実の犠牲。

ハナミズキ:私の想いを受け取ってください。

クルクマ:乙女のかおり。あなたの姿に酔いしれる。

リナリア:私の恋を知ってください。この恋に気付いて。

シクラメン:切ない私の愛を受けてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ