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返報  作者: ハヤオ・エンデバー
第1部
6/12

第6回

 奇妙な人だ。宮崎は中島の行動を見てそう思った。現場に着いたかと思えば、付近のコンビニに入って漫画雑誌を読み、それが終わると懐中電灯と電池、紳士用の紺色の靴下、ジップロックのフリーザーバックを1箱、缶コーヒー2つ、4本入りのカロリーメイト2箱を購入した。また、中島はコンビニを出る前に薄い住宅情報誌と求人情報誌を取った。

 「現場と行ってもおそらく鑑識が証拠品を全部持って帰ったと思いますよ」コンビニを出ると宮崎が言った。

 「じゃないと職務怠慢だよね~」住宅情報誌に目を通しながら中島が応えた。

 「住宅情報誌なんて読んでどうするんですか?」

 「この辺の家も高くなってるな~って思ってるだけだよ」中島は宮崎に笑顔を向ける。

 “もしかして、この人、あの厄介者扱いされている上司の従兄弟か?この前の飲み会で聞いたことがある。上司の従兄弟はダメ刑事。その人が転勤になると聞いた。ウチの署だとは思わなかった。中島さんがあのダメ刑事。そして、俺がその子守役?”宮崎はため息をついた。

 「コーヒーでも飲むか?」中島がレジ袋からコーヒーを取り出して宮崎に渡し、宮崎はお礼を言って受け取った。

 “客人なんて嘘なんだ。そう厄介者のおっさんを俺に押し付けたんだ。議員の娘の誘拐事件を捜査しろなんて、俺にダメ刑事の世話をさせるための口実に違いない。クソッ!家に帰りたい!”

 「持ってくれ」宮崎にダメ刑事と思われている中島はレジ袋を宮崎に渡した。若い刑事は中島からレジ袋を受け取ると、懐中電灯に電池を入れる中島の姿を見守る。懐中電灯の明かりが付くと、中島はその明かりを使って地面に円を描いて遊び始めた。

 “勘弁してくれよ…”

 二人は誘拐事件が起きた電柱の場所に着いた時、通りにはほとんど人がおらず、車も数台通る程度であった。この現場を見たことが無い宮崎は車に積んでいた懐中電灯で電柱の周囲を照らし始めた。電柱に目立った損傷は無く、表面が少し擦れているだけであった。道路にはタイヤが擦れた黒い跡がある。

 “犯人はプロに違いない。”

 「犯人はプロですね」宮崎は電柱を照らしながら呟いた。

 「どうしてそう思う?」

 意外な中島の返しに宮崎は一瞬戸惑った。彼は中島の方を向く。中島は先程から電柱の付近を見ずに周囲の建物を見ている。

 “一体どこを見ているんだ?!”

 「だって…犯人は議員の交際相手が乗る車を上手くSPの車にぶつけて…SPの動きを止め、その間に議員の娘を誘拐したんですよ」言葉を詰まらせながらも宮崎は自分の考えを述べた。

 「確かにあの手口は見事だったね~でもさ、あれってすごく危険な行動じゃない?」

 「議員の娘を誘拐するんですから危険な行動じゃないですか!」

 “何て当たり前なことを聞くんだ。このダメ刑事は!”

 「行動のことを言っているんじゃないよ。俺が言いたいのは作戦だよ。」

 宮崎は中島の言っていることが理解できなかった。中島が突然歩き始め、遅れないように宮崎はだぶだぶの服を着た男の後を追う。

 「通常、拉致する場合に必要な車両の最低数は2台。人数は6人くらいかな?まず、車両で道を塞ぎ、攻撃対象の中で戦力 ―火力と言った方がいいかな?― が一番強い方を攻撃する。その間に標的を奪うのが好ましい」宮崎が何も言わないので中島は話しを続けることにした。「こう考えると、誘拐犯は素人だと思うな~。凹んだ車を使って現場から逃げているし…おそらく、SPの車と議員の交際相手の車が重なったのは偶然だろう。もし、あれが起きていなければ誘拐犯はその場で捕まっていたかもしれない。」

 「タイミングが分かっていたのでは?」宮崎は率直に疑問に思ったことを尋ねた。

 「その可能性もあるよ。じゃあ、どうやってそのタイミングが分かったんだろう?」

 「協力者がいたんですかね?」自信が無かったので宮崎の声は小さかった。

 「ピーンポーン!」突然中島が大声を上げたので宮崎は驚いた。それに自分の考えが当たっていたので嬉しかった。宮崎がまた頭の中に浮かんできたことを言おうとした時、中島が6階建てのビルの前で足を止めた。

 「どうしたんですか?」と宮崎が尋ねる。

 「このビルにしよう!」そう言って中島はビルの入口に向かい、宮崎は黙ってその後を追った。

 二人が自動ドアの前に着くと、ドアの向こうにある警備員用の個室から制服を着た50代くらいの男性が出てきた。中島は自動ドア越しに彼の警察手帳を見せ、それを確認した警備員が自動ドアを開けた。

 「私は2時間前にここに来たばかりだから、誘拐事件のことは知らないよ」警備員は誘拐事件の話しだろうと思って先に口を開いた。

 「そうでしたか~」中島は無表情の警備員に笑顔を向けたが、相手の表情は変わらない。

 「事情聴取なら俺の前の奴が受けはずだし、ここの監視カメラのテープも警察が持っていった。」

 「私たちはこのビルに用があるんです。強いて言えば、5階から屋上ですかね~」中島がそう言うと警備員が眉間に皺を寄せた。「案内はいりませんよ。ただ、5階から屋上までを見たいんです。」

 「鍵はかかってないから自由に出入りできる。エレベーターは使えないから階段しかない。」警備員の眉間から皺が消え、彼は自動ドアを大きく開けて二人が入れるスペースを作った。二人の刑事が建物内に入ると警備員はドアを閉めて個室に戻り、スポーツ新聞を読み始めた。

 屋上に着いた時、宮崎は肩で息をしていたが、中島は鼻息が少し荒くなっていたが宮崎ほど呼吸に苦しんでいるようには見えなかった。

 「何で屋上なんですか?」息苦しかったが宮崎は周囲に目を配る中島に尋ねた。

 「俺の考えが合っていれば~」中島が歩き出す。「ここに誰かいたはずだ。」

 “このビルに何があるんだよ!”宮崎はそう思いながら中島の後を追う。

 屋上の端まで来た時に宮崎はどうして中島がここに来たのか理解した。彼らのいる位置から事件現場の交差点が一望できる。さらに周囲に高い建物が無いために100メートル先から来る車も見える。

 「ここに協力者がいたんですね?」

 「じゃないかな?」中島が宮崎の足元を懐中電灯で照らすとそこには4本のタバコの吸殻があった。

 「証拠品ですね。でも、保存用の袋が…」

 「君の持っている袋にジップロックがあるじゃないか~」中島は屋上の端に沿って懐中電灯の明かりを走らせる。その間に宮崎は吸殻をジップロックの袋に入れ、ジッパーを閉めるとレジ袋に入れた。

 “このためのジップロックか~ということは、他の物も捜査に使うものなのかな?もしかして、中島さんって本当は優秀な刑事かもしれない…”宮崎は改めて中島を見た。中島は屋上にあった小さな段差に躓いて転びそうになっていた。“いや、気のせいだ…”

 「約400メートル…」体勢を立て直した中島が呟き、彼の背後にいた宮崎はそれを聞いた。

 「何の話しですか?」

 「いや~ちょっと距離を図る練習をしていたのさ~それより証拠品かどうか署に持って行って確認しよう。もし、それが誘拐犯の協力者の物であれば、監視カメラに犯人が映っているかもしれない。そうなれば、協力者1号を特定できる。」

 「1号?」宮崎は中島の言葉に奇妙な含みがあると思った。「第2号もいるんですか?」

 「オイラはそう思っている。」

 「その2号はどこに?違うビルですか?」

 「違うビルにいたのはおそらく監督者だろうね…」中島が小声で呟いたために宮崎はそれを聞き取ることができなかった。「いや、2号は~被害者の中にいると思うな~。」







 警察が忙しなく動き回る中で小田完治は机の置かれた固定電話を見つめていた。彼の家族はテレビで流れている誘拐事件に関する報道特集に見入っており、選挙スタッフたちはマスコミや支援者たち、興味本位で電話してくる人々への対応で忙しかった。その中でも議員は黙って固定電話を見つめている。彼の前にある電話の番号は家族、選挙スタッフ、親しい友人しか知らないが、誘拐犯はその番号に電話をかけてきた。警察は議員の娘から番号を聞き出したのだろうと思っていたが、小田はそう思っていなかった。

 “優介君の仕業であるなら、次の電話であのことについて謝ろう。きっとそれで全て収まるはずだ…”

 「議員。」

声を聞いて小田は顔を上げた。そこにはいつも警護についているSPがいた。背の高い細身のSPは小田を警護してもう半年になる。

「何か進展でも?」小田が尋ねた。その声には期待が込められていた。

 「いえ、残念ながら何も…」

 「そうか…」議員は視線を固定電話に戻す。「そう上手い具合に進まないか…」

 「大丈夫です。必ず娘さんは見つかります。」

 「ありがとう。そう言ってもらえるだけでも嬉しいよ。」しかし、小田の表情は曇っていた。「それより何の用かな?」

 「ここから移動します。」

 議員は驚いてSPの顔を見た。“移動だと?!”

 「電話の内容から誘拐犯の狙いは議員です。犯人が事務所に攻撃を仕掛けてくる可能性があります。」

 「しかし、犯人はまた電話すると言っていた!この電話に!」小田は固定電話を指差して大声を出した。「移動したら電話に出られないだろ!」

 「移動先の電話に着信を転送するように―」

 「移動する必要なんて無い!犯人は優介君に違いない!彼は良い子だから、私の話しに耳を傾けるはずだ!彼が私の話しを聞いてくれれば、娘は無事に解放される!」話し終えた後に小田は自分が椅子から立ち上がっていたことに気が付いた。部屋にいる全員が彼らを見ている。

 「おっしゃることは分かりますが、今は非常事態なのです。」

 「もう少しだけ待ってくれ。きっと、優介君が電話してくる!」

 「分かりました。しかし、長時間は待てません。」

 「優介君はすぐに電話してくる。大丈夫だ。」

 SPは黙って部屋を後にし、彼と入れ替わるように刑事が入ってきた。その刑事は真っ直ぐ小田の机にやってくると議員に二枚の紙を渡した。

 「議員が言っていた二人の男性について調べました。」

 小田は紙を勢い良く手に取って読み始めたが、それと同時に彼の胸で湧き上がっていた期待が崩れ去った。彼の友人は二人とも2年前に死亡しており、彼らの家族は去年一家心中して亡くなっていた。







 ドアを開けると異臭が武田の鼻を突いた。薄暗い室内にいる男は鼻歌を歌いながら黒いビニール袋の口をガムテープで閉めていた。真っ赤に染まった透明のレインコートを着ている男は肩越しに武田と確認すると作業に戻る。

 「どうしたのさ?言われた通りにちゃんと片付けしてるでしょ?」男が黒いビニール袋を部屋の隅に放り投げ、その袋は既に置かれていた4つの黒い袋の上に乗った。

 「それを確認しに来たわけじゃない。」室内に入ろうとしたが、あまりにも臭かったので武田はドア枠にもたれかかった。「収穫は?」

 「机にあるよ。」作業を終えた男は袋の山を見て満足していた。

 “今回は前よりも上手く切ることができた。”

 武田が机に目を向けると工具箱の横に2枚のカードと紙片、写真、財布があった。

 「全部か?」

 「カードとメモは君のもの。写真と財布は僕のもの。」レインコートを脱いで男が写真と財布を取り上げた。武田は写真に赤ん坊を抱えた女性が写っていることを確認した。

 「あの公安の家族か?」武田が黒いビニール袋の山を見る。

 それを聞いた男は満面の笑みを浮かべて写真を武田に見せた。「そうだよ。」

 「どうするつもりだ?」

 「何を?」

 「写真だよ。」

 「どうするって…?分かるでしょ?」

 “狂っている…”武田は数ヶ月前に見つけたこの内山という男に対して嫌悪感を抱いていた。テロリストと呼ばれるようになった武田であるが、一度も子供を殺したことはない。彼が尊敬する人物は彼に「子供は我々の未来だ」と説き、子供を標的にすることを禁じていた。

 「安心してくれよ。ちゃんと仕事が終わってから遊ぶから。それに僕、子供は初めてなんだ。君には感謝しているよ。こんなに楽しい仕事は初めてだよ!」内山の口調は興奮していたために早口であった。

 「それよりカードとメモの説明をしてくれ。」カードと紙片を取り上げて武田が尋ねる。

 「一枚目のカードは公安の施設に入るための鍵。」内山は武田の右手にある白いカードを指差す。「もう一枚はその住所が書かれている名刺。彼の話では表向きは法人で、裏では僕たちみたいな人を狩っているんだって…まぁ、彼は僕に狩られたけどね~それに―」

 「このメモは?」武田が話しを割って入った。

 「公安のネットワークに入るためのアクセスキーとパスワード。」

 「でかした。これで計画を上手く変更できる…」武田の口元が緩んだ。

 「何をする気なのさ?俺たちの計画は議員の事務所を襲撃することだろ?」

 「もっと大きいことをするべきだ。」

 「どんな?」

 「公安の施設を襲撃しよう。そうすれば、武器や弾薬も手に入る。」

 「いつ?いつ襲撃する?」

 「議員襲撃の計画をずらすだけだ。」

 「つまり、2時間後だね?」

 「そうだ。お前も早く準備を整えろ。」

 “襲撃の際にあの変態野郎を殺そう。そうだ。そうしよう。”その場を後にしながら武田はそう考えた。








 鍵を開けて中に入った時、男は異変に気付いた。通常であれば家の中は明るく、ドアが開けば一人息子が飛んできて、その後に妻が出迎えに来る。しかし、この日は違った。彼は咄嗟に妻と息子の名前を叫んだ。返事は帰ってこない。

 スーツ姿の男は二人で買い物に行ったのだろうと思い、家の中へと進みリビングに着くと明かりをつける。その瞬間、彼はソファーに座っている男を見つけた。その男は埃を被った灰色のネルシャツと色褪せたジーンズを身に纏い、髪は短く整えられていたが、髭が彼の顔半分を覆っている。ホームレスのような男を見つけてつい数分前に帰宅してきた男は驚いて身を引いた。

 「誰だ?」咄嗟に男が尋ねる。

 ホームレスがシャツのポケットから写真を一枚取り出すると、それを目の前にあったテーブルに置く。スーツ姿の男は遠くからであったが、その写真に写っている人物を確認することができた。そして、彼はその写真の人物を知っていた。

 「生きて帰って来られる自信が無かったから彼女の前から消えることにした。彼女には幸せになって欲しかったから…」ホームレスが遠くを見ながら言う。

 「妻と息子はどこだ!?」スーツ姿の男はホームレスの話しを無視して叫んだ。

 「彼女は幸せになれたはずだ…お前にさえ会ってなければ…」西野はソファーから立ち上がってスーツ姿の男を見る。「ずっとアンタを探してた…」

 スーツ姿の男は一目散にリビングから台所に走ると、流し台の傍にあった包丁を手に取る。西野は動じずその様子を見ていた。

 「答えろ!妻と息子はどこだ!?」スーツ姿の男は西野に近づいて包丁を突きつける。「あんなクソ女なんてどうでもいい!答えろ!妻と息子はど―」

 スーツ姿の男が叫び終える前に西野は左手で包丁を持っている男の手を払い、間を置かずに二度拳を男の顔面に叩きつけた。男の鼻から血が流れ、スーツ姿の男は激痛のあまり包丁から手を離して両手で鼻を抑えて身を屈める。西野は男の髪を掴んで勢い良く持ち上げる。

 「何で彼女を殺したんだ?」

 「俺は何をしてない!!」スーツ姿の男は嗚咽しながら答えた。

 「そうか…」西野は表情を一つ変えずに再び男の顔を殴った。










 3度尾行確認を行ったが、西野はまだ尾行がいるような気がして不安であった。若松と広瀬がその心配は無いと言っても西野はまだ疑っていた。隠れ家に着くと車を車庫に入れ、拘束した男を車から引き摺り下ろして家に運び込む。まだ尾行を疑う西野は車を降りた後、彼は車に凹みがあることに気付いた。

 「若松!」西野が男を運んでいる若松に声をかけた。

 呼ばれた捜査官は西野の方を向く。「待ってくれ!」

 時間を無駄にしたくない西野は家に入ると若松の所に走った。リビングにあった椅子で休んでいた新村はそれを見て驚いたが、西野だと気がつくと胸をなで下ろした。

 「あの車の傷は何だ?」男を運ぶ広瀬と若松に追いついた西野が言う。広瀬は何のことだか分からなかった。西野の問いに若松は戸惑った。「何があった?」西野が再び尋ねる。

 「仕方が無かったんだ…この男を追うために急いでいた…」西野の方を見ずに若松が言う。

 「何があったんだ!?」西野は若松の胸倉を掴んで手前に引っ張った。引っ張られた若松は男から手を離す。

 “穏やかじゃないねぇ~”そう思いながら広瀬は一人で男を近くの部屋に運び、椅子に拘束した男を座らせて片足を椅子の脚に縛り付けた。

 “両手を後ろで縛っているからこれだけ十分だろう…”広瀬が振り返ると西野はまだ若松の胸倉を掴んでいた。

 「答えろ!何があった!?」西野の声は怒気を帯びており、若松を威圧していた。それに若松は押されているのか視線が下を向いている。

 「ぶつかったんだ。前を走っていた車に…」ようやく若松が口を開いた。 「仕方が無かったんだ!逃走した男を追うためには、あれしか―」

 「それしか方法が無かったと?」西野が割って入る。

 「そうだ…」西野と同年代の捜査官はそう呟いた。

 「クソッタレ!」西野は若松を突き飛ばして床に倒すと銃を取り出して同僚に向けた。若松は悲鳴を上げて身を丸めて両手を顔の前に構える。西野が引き金に指をかけると広瀬が彼の前に立ちはだかった。

 「仲間を撃つのか?」広瀬はあえて西野の銃を取り上げようとしなかった。もし、銃を取り上げる際に西野が反撃に出れば広瀬に勝ち目は無い。接近戦において西野が上であることを広瀬は良く知っている。「俺たちの仕事はテロリストを狩ることだ。仲間同士で殺し合う暇など無い。」

 「若松のせいでテロリストにこの位置がバレていたらどうする?あの目立つ、凹んだ車で移動してきたんだ。追ってくれと言ってるようなものだ!」西野の銃はまだ広瀬の胸を狙っている。

 「点検はした。尾行は無い。」

 「まだ、分からない。あの時も俺はちゃんと点検したのにも関わらず襲撃を受けた。」

 “襲撃のショックは西野の方が大きいらしい…”

 「なら、本部に連絡して代わりの車を手配しよう。そしてここから近いダミー会社に移動する。それでどうだ?」広瀬は西野の目を見て言ったが、実際は引き金にかけてられている西野の左人差し指に注意を払っていた。西野が銃を下ろしてホルスターに収めた。

 「連絡は俺からしよう。」西野が携帯電話を取り出す。

 「いや、俺がやる。黒田に報告しなければならないこともあるんでな…」

 「分かった。」西野は玄関に向かって歩き始めた。「弾は入っていなかった。」玄関のドアを開ける前に西野が言った。「それに撃つ気も…」そう言い残して西野は家から出た。頭を冷やす必要があると彼自身思った。

 広瀬は西野が消えると近くの壁にもたれかかった。“銃口を向けられるというのは穏やかなものじゃない…早めに黒田に連絡した方がいいな。”携帯電話を取り出して若松の方を見ると床に転んだ捜査官はジーンズの埃を払っていた。

 「大丈夫か?」と広瀬。

 「そう願っているよ」同僚を見て若松が答える。

 「そうか…すまないが、あの男の尋問をお願いできるかな?守谷とかいう…」

 「任せてくれ。」そう言って若松は男がいる部屋に向かった。

 “できるだけ問題を無くさなければならない…”広瀬が携帯電話を耳に当てて2階に行こうとすると新村が近づいてきた。「どうした?」

 「また移動するんですか?」彼女の顔には不安の色が現れている。

 中年の捜査官が新村の問いに答えようとすると受話口から小野田の声が聞こえてきた。「黒田に繋いでくれ。」広瀬は携帯電話を耳に当てたまま新人捜査官を見た。「そうだ。これから本部に連絡して迎えの車を頼む。お前は何か飲み物でも飲んで休んでいろ。」

 新村の表情に何の変化もなかったが、彼女は言われた通りに休むことにした。部下の背中を見送ると広瀬は階段を駆け上がり、この時に黒田の声が電話から聞こえてきた。「ちょっと待ってくれ。」若松と拘束した男がいる部屋の映像を見るための電子機器がある部屋に入って中年の捜査官はドアを閉める。「率直に言う。西野と新村はもうお荷物だ。」

 「それを言うための電話か?」と黒田。その口調はもう聞き飽きたという感じであった。

 「今回はもっと酷い。新村は新人であるから仕方がないが、西野の場合は…」

 「お前も分かっているだろう今は彼が必要だ。今回の事件には西野のような人間が必要だ。」

 「本心か?」広瀬は部屋にあるコンピューターモニターで若松の様子を見る。

 「何がいいたい?」

 「今までは運が良かったのかもしれない。アイツの今の精神状態は通常ではない。先程拘束した男を気絶するまで蹴り飛ばしたんだ。公衆の面前で…今回は一般人に被害が出なかった。しかし、いずれ出すかもしれない。」

 「しかし、今回の事件は…」黒田が珍しく声を詰まらせた。「そう。とても複雑だ。だから、できれば使える捜査官が欲しい。」

 “今回の事件は昇進のために必要なものだとは死んでも言えん。特に広瀬には…”黒田は青いマグカップのコーヒーを見つめながら思った。

 「まるで他の連中が使えないような言い方だな。」

 「そう悪く捉えないでくれ。我々の地区は人手が足りない。半分が新人だ。新人と言っても元警官などだが…できれば、ここで長く働いている捜査官を使いたい。その道のプロに頼みたいのさ。」

 「なるほど…ベテランでも精神が不安定な捜査官は如何なものかと思う。」

 「西野なら大丈夫だろう。」

 「だといいが…」

 「要件はそれだけか?」黒田はできるだけ早くこの会話を切り上げたかった。

 「迎えの車をH07に頼む。尾行を完璧に巻きたいと西野が言っているのでね。」

 「すぐに送ろう。」そう言うと二人は同時に電話を切った。







 背の高い木下という男が部屋に来たので女はメールを打つ手を止めて男を見る。

 「どうしたの?」

 「小田菜月が到着しました。」

 「それじゃ、顔を見に行きましょうか。」

 二人は部屋を出るとエレベーターに乗り込んだ。その途中で短機関銃の弾倉に銃弾を詰め込む男たちや爆薬を作っている男女のグループを見た。本間千里という名の女は男女関係なく、作戦のための人員を雇って使い終われば処分していた。彼女は下手に身元が明かされる心配を消すにはこの方法が良いと考えており、横にいる木下も消すつもりである。

 1階に着くと短機関銃を持った男が二人を出迎え、彼が先導して二人を小田菜月がいる部屋まで歩いた。部屋には壁に沿って並んでいるロッカーしかなく、窓は小さくて大人では通れそうにない。手足を縛られている議員の娘は必死にもがいていた。

 「ずっとあの調子なの?」本間が短機関銃を持った小太りの男に尋ねた。

 「いえ、ここに運んだ時は気を失っていました。」

 「そう。それで運び屋は?」

 「アイツ用の穴を掘らせています。」

 「予定通りにしてちょうだい。銃は使わないで。」

 「わかりました。」男の顔に落胆の色が浮かんだ。本間はその表情に気が付いたが何も言わなかった。

 女はゆっくりと菜月に近づき、それに気が付いた議員の娘は必死に体を動かす。相手の動きに用心しながら本間は菜月の首を掴んで自分の方に引き寄せた。誘拐された菜月の目には涙が溜まっている。

 「大人しくしていれば乱暴なことはしない。もし、さっきみたいに暴れたら…」本間は菜月の首を絞める。「ここまで言えば分かると思うけど、正直私はあなたのような若い子は殺したくないの。」

 菜月は目を見開いてただ本間の目を見ていた。

 “脅しはこんなものでいいでしょう。”

 女は菜月から手を離して部下の方を見る。「成田はどこにいるの?」

 「これからあの三人の所へ行くそうです。それからあの女の件もあります。」

 「そう。じゃ、後は武田くんが成功すれば私たちの仕事は終わりそうね。」

 「彼が失敗した場合はどうするのでしょうか?」部屋を出た後に木下が尋ねた。

 「分かってるでしょ?あの男を私たちで消すの。」







 3人はバスを降りると15分程坂道を下って数台のバイクが置かれている家に入った。家に入ると金属バットを持った大柄の男と長身で狐のような顔をした男が彼らの前に立ちはだかった。

 「何の用だ?」キツネ顔の男が尋ねる。男はジッポライターの蓋を開けたり閉めたりを繰り返している。

 「金沢さんにお話しがあるんです。」中肉中背の男が言う。彼の後ろにいる細身の男と前髪をいじる癖がある男は目の前にいる二人と目を合わせないように床を見ていた。

 「どんな?」

 「この間、お話の続きです…」

 二人の男は何も言わずに歩き出し、3人はその後を追う。途中でタバコを吸っている3人組屋や女性たちと楽しそうに話しているグループを見た。小田菜月を誘拐した三人が奥にあるリビングに入ると左脇に女性を抱えてソファーに腰掛けている金髪の男を確認し、男の顔を見ないように顔を伏せた。

 「金沢さん。」大柄の男が言うと、金髪の男は三人を見た。

 「金が手に入ったのか?」金沢と呼ばれる男が立ち上がる。彼は室内であるにも関わらず深緑色のダウンジャケットを着ている。

 「これからです。これから取りに行きます。」中肉中背の男が答える。

 「村井…」金沢が中肉中背の男に向かって言う。「分かっていると思うが、俺は三須組の後藤さんを知っている奴と友達なんだ。何かあったら、ただじゃおかねぇぞ。」

 三人は三須組も後藤という名も知らなかったが恐怖感を抱き始めた。

 「俺の後輩を見張りに使ったりしたからな~20万は欲しいな。」金沢は両手を上着のポケットに入れて三人に近づく。

 「それだと僕らの取り分が―」細身の男が口を開くと金沢はメリケンサックをはめた右拳で喋り始めた男の左頬を殴り、殴られた細身の男は床に倒れた。

 「俺は―」金沢は床に倒れた男の腹部に蹴りを入れる。「短気だから、怒らせない方が、いいって言ってるじゃん!」言葉を区切る毎に金髪の男は蹴りを入れ、細身の男は腹部を守るために身を丸める。それを見ると金沢は踵で男の脇腹や腰を蹴り始めた。

 友人が蹴られていても他の二人は無言で床を見つめている。金髪の男の後ろで茶髪の女がそれを見て笑っていた。バットを持った男とキツネ顔の男も蹴られている男を見て笑っている。

 「頼むよ。君たちには期待しているんだから…分かったら早く金を取りに行っこいよ」蹴り疲れた金沢がソファーに戻る。

 中肉中背の男と前髪をいじる癖がある男は倒れた細身の男を抱えて家を後にした。









 海辺にある公園で西野はベンチに座っている。街は黎明の色に染まっており、たまにカモメや烏の鳴き声が聞こえる。西野はその鳴き声を無視して波の音に耳を澄ませていた。彼の視界に入るのは海と転落防止用の柵しかない。古びたジーンズから西野はポケットナイフを取り出す。

 “これでいいんだ…”

 「ちょっと若すぎるんじゃないですかね?」紺色のコートを羽織った男がそう言いながら西野の隣に座った。西野は驚いてナイフを落としそうになった。

 「いや~いい場所ですね。東京にもこんな場所あればいいのに…」男は銀縁眼鏡をかけており、コートの下にはコートと同じ色のスーツを着ている。

 「誰だ?」

 「私ですか?」男はコートの内ポケットから名刺を取り出して西野に見せる。名刺には『日本交通保安協会 藤木孝太』と書かれていた。「自己紹介はこんなもので…それよりも少しお話しをしませんか?」

 「話し?」

 「そうですよ。あなた、自殺しようとしてたでしょ?もったいない!命は大事にしないといけませんよ。」

 男の話し方に苛立ってきた西野は立ち上がった。

 「あなたが自殺を選んだら美由紀さんが悲しむと思いますよ。」銀縁眼鏡の男が呟く。

 これを聞いた西野はベンチに座っている男を睨みつけた。

 “当たりだ!”藤木は自分を睨みつけている男を見てそう思った。

 「話しを聞いてくれるつもりになりましたか?」

 「その名前をもう一度言ってみろ―」

 「『殺すぞ!』ですか?」藤木は西野を遮って言った。

 「私がここに来た理由はあなたとケンカするためじゃないですよ。大切な人を亡くしたのはあなただけじゃない。」藤木の脳裏にある男の姿が浮かんだが、すぐに気持ちを切り替えた。「座ってくださいよ。そうじゃないと、変な奴らが出てきますよ。」

 藤木の言葉を聞いて西野はようやく囲まれていることに気付いた。3メートル前方に一人スーツを着た男、5メートル先の背後にもスーツ姿の男が一人。西野は大人しくベンチに座ることにした。

 「ありがとうございます。早速ですが、本題に入りたいと思います。あなたの経歴を読ませてもらいました。私の上司はあなたを非常に気に入っていて、できれば明日からでもあなたに働いてもらいたいと…」

 「人違いだろ?俺は―」

 「西野史晃さん。元巡査部長。一年の潜入捜査後に辞職。その後は行方不明。と、なってましたが、意外とすぐにあなたを見つけることができました。」

 「天下り機関が元警察官に何の用だ?もっと補充すべき役人がいるだろう?」と西野。

 「ただの天下り機関だったらあなたをスカウトするために東京からわざわざ来ませんよ。」

 「だったら何だ?」

 「秘密です。もし、こっち側の人間になれば全てを教えることができます。」

 「詐欺師にしては手口が下手だ。」

 藤木は笑みを浮かべた。「国家機密をそうそう漏らすことはできません。それにあなたを騙すつもりなんて微塵もない。」

 「じゃ、何が目的だ?」

 「目的はあなたをスカウトすることです。」

 「違う。俺が聞いているのはお前らの魂胆だ。」

 「『魂胆』…」銀縁眼鏡の男が西野から海へ視線を移動させる。「西野さん。あなたなら分かると思いますよ。」

 「話しをはぐらかすな。」

 「してませんよ。では単純に…この国はもう安全ではないんです。あなたも知っているでしょ?」

 西野の脳裏に初老の男の顔が浮かんだ。

 「それに…頭の狂った連中のせいで誰かが泣くところなんて見たくないんです。」

 西野は何も言わなかった。しかし、彼は藤木の意図を理解していた。

 “対テロ機関を新たに創設しようとしているのか…”

 「この国はあなたのような人を求めています。私と一緒に東京に来てくれませんか?」

 古びた服を着た西野は無言で海を見つけている。藤木はコートのポケットから携帯電話を取り出し、西野が来ているネルシャツの胸ポケットにそれを滑り込ませた。

 「返事は次回でも結構です。その携帯に私の番号が入っているのでいつでも連絡できます。良い返事を期待しています。」そう言って藤木がベンチから立ち上がる。

 「ちょっと待て!」公園から立ち去ろうとした藤木を西野が呼び止める。 「俺は無理だ。もう俺は…そっち側の人間じゃない…」

 「それを決めるのは私です。あなたじゃない。あなたが誰を殺して山に捨てようが、私にとっては別に問題じゃない。それに…」藤木が西野に近づく。「部下に暴行してビルの屋上から突き落とした奴なんて死んでも仕方ないんじゃないですかね?」

 「どうして?」

 「ご安心を。私はあなたの味方です。人間誰しも頼れる人間が必要ですよ、西野さん。私はその内の一人です。」











 西野が隠れ家に戻ってリビングを見ると、オレンジジュースを片手に笑顔でテレビを見ている新村を見つけた。

 “どうして、『普通の仕事』を選ばなかったんだろう?”彼女を見ながら西野は思った。“こんな組織にいなければ、死ぬ思いをせずに済んだだろう…彼女には幸せになって欲しい。”

 口笛が聞こえてきた。西野と新村はこれに反応して周囲に目を配り、階段で小さく手を振っている広瀬を見つけた。

 「どうやら当たりのようだ。」と広瀬。

 「何が?」階段を上りながら西野が尋ねる。

 「守谷って野郎さ。色々と有益な情報を教えてくれた。」

 「どのような?」

 二人は部屋に入ると若松と守谷が映っているモニターを覗き込んだ。捜査官と拘束されている男は向かい合って座っている。

 「あの男は武田の金庫番だそうだ。」広瀬が話し始める。

 「だから銀行にいたのか?」

 「そうらしい。武田の活動費は守谷が運営していたが、足がつくことを恐れた武田は守谷を殺そうと殺し屋を送った。しかし、間一髪で守谷は銀行から逃げ出し、運良く君がその殺し屋を捕まえた。」

 「殺されたがな…」

 「それは問題じゃない。問題は武田がこれからやろうとしていることだ。」

 「何を企んでいる?」

 「約二時間後に小田完治議員の事務所を襲撃するらしい。」

 西野はモニターに移る守谷を凝視した。「二人に何の接点がある?」

 「さっき、その件について黒田に連絡した。調べてもらっている最中だ。おそらく議員のSP連中に避難するように連絡が行くだろう。それより、これから出掛ける準備をしないと行けない。」

 「どういうことだ?」西野は広瀬の言葉の意味が理解できなかった。

 「守谷は武田の居場所も吐いてくれた。2キロ程向こうにあるビルだそうだ。SATが応援に来る。急がないと議員の命も危ないし、武田をまた見失うかもしれない。」

 「しかし、本当に信用できるのか?守谷を…」

 「少し脅したらラジオのように一人で喋り始めた。嘘をついているようにも見えなかったしな。一応、若松は殴ってはいないぞ。お前みたいに…」

 「それは若い頃の話しだ。それより俺は行くぞ」西野は部屋から出ていこうとドアを開けた。

 「待て。俺も行く。」広瀬が西野を呼び止め、二人同時に部屋を出て一階に戻った。

 西野は確認のために若松と守谷がいる部屋に行って尋問の様子を見た。ドアを開けると若松が振り返り、西野だと分かると椅子から立ち上がって身構えた。

 「何もしないよ。」そう言って西野は守谷を見る。守谷は目を真っ赤に腫らして泣いている。

 “これで嘘なら相当のやり手だ。”

 「話しがある。」守谷を確認して満足した西野が若松に言う。二人は部屋を出るとドアを閉めた。

 「話って何だ?」若松が先に口を開く。

 「これから俺と広瀬は武田のいるビルに向かう。お前と新村は守谷から目を逸らすな。」

 「拘束しているから心配ないだろう。」

 「襲撃に備えろと言っているんだ。」

 「分かった。」

 また口笛が聞こえてきた。西野と若松は玄関の前にいる広瀬を見る。

 「西野、出るぞ。もう俺たちの迎えが来た。」

 「頼むぞ。」西野は若松の右肩を軽く叩いて玄関の方に走る。

 「気をつけろよ。」同僚の背中に向かって若松が言った。広瀬と西野は振り返らずに出て行った。

 若松がリビングに行くと新村が彼の方を向いた。「何かあったんですか?」

 「西野と広瀬さんが武田狩りに出かけた。数分後に俺たちの迎えも来るだろう。」

 「そうですか…」

 「一応、守谷から目を離すなと言われている。必要ないと思うが命令だ。特に危険な男じゃないし、見張りをお願いできるか?俺も休憩したい。」

 「怖い人でも無いんですね?」新村の顔に消えていた不安の色が再び浮かび上がった。

 「全然怖くない。銀行員だし、それに両手を縛ってあるから何もできない。何かあれば俺が助ける。」

 「分かりました。」新村は椅子から立ち上がって守谷が拘束されている部屋に向かう。若松は彼女の後ろ姿を目で追い、彼女の尻を見ていたが視線をリビングに戻して椅子に腰掛けた。

 “事件が終わったらデートにでも誘ってみようかな…”

 新人捜査官が恐る恐る部屋に入ると泣いて目を腫らしている守谷が顔を上げた。彼女は何も言わずに部屋にあった椅子に腰掛けて男を見た。

 “確かに気の弱そうな人。これなら私でも対処できる。”

 「あの~」守谷が言う。「もう乱暴なことはされないんですよね?」

 「え?」

 “若松さんが何かしたのかな?”

 「路上で僕のことを何度も蹴った男の人です。さっき部屋に入って来た…」

 「あ!西野さんはもういないですよ。」緊張が溶けた新村は椅子の背もたれによりかかった。

 「武田のところに?」

 「そうです。だから、もう蹴られることはないです。」

 「よかった…」守谷は頭を深く下に落とした。

 監視カメラも新村も確認できなかったが、この時守谷は笑みを浮かべていた。

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