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世界の扉  作者: 10.bi
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 少女には扉があった。世界と世界とを繋げるための扉だ。

 少女の暮らす世界と、少女のいない世界。

 二つを潜ることは少女に許された特権であり、呪いである。

 扉を潜ることは逃避のための退路としては機能せず、逃げたならば最後、戻れないよう機能する。


 一度訪れた世界を一度として戻れた試しがないのだ。

 幾重にも広がる世界に二度扉を掛けることは不可能に近い。

 それでも零でない可能性に掛けることは、心をすり減らすことしかしないことを少女は既に体感していた。


 ならば世界を渡らないように心がけるべきだろうか。

 生まれた世界に戻れないならば、せめて渡った後の世界に慣れてしまえば良い。長い時間を過ごすことで世界に馴染み、生まれた世界と錯覚することが出来る日が来るかもしれない。

 それが出来るならばどれだけ楽であっただろうか。

 それを許さないのは、扉だ。少女にとって扉は呪いとして機能する。


「どうして私ばかりがこんな目に会うのかな」

 愚痴る様に、問いかける。

 少女の前に立つのは、男。仮面により顔を隠した男は何も答えない。


「また、まただよ。貴方は前の世界も、前の前も私の前に立った」

 男は答えない。ただ無言のまま少女に近づいていく。

 彼の手にするナイフが存在を主張する。

 目的を代弁するように掲げられたナイフは、徐々に少女に近づいていく。


 このままでは少女は殺されるだろう。

 刃物は身体に突き立てられるだろう。


 だから少女は扉に頼る。前回、前々回。更に昔からそうしてきたことをまた一度行う。


「さよなら、世界」


 少女は一歩だけ、後ろに下がる。

 そこに地面はなく、背中から倒れていく。


 扉を潜り、新しい世界へと。

 そしてたどり着いた世界で少女は身体を起こした。


 時間は変わらない。

 場所もまた同じで。

 あろうことか、状況に変化はなく。


「え?」

 少女は状況に首を傾げる。

 失敗したのだろうか、世界が変わった様子は見られない。

 男は刃物を手に立っている。そして、少女にじりじりと近づいていく。


「なんで?」

 疑問に答える者はいない。

 疑問を覚えずに行動に移せていたならばどれだけ良かっただろう。

 パニックを起こしたために扉を再度潜ることは叶わない。久しく実感した危機に震え、なす術もない。


 一歩、また一歩と詰められる距離を怯え、待つ。


「誰か、助けてよ」


 呟きに答える者は、



 ――あった。


「助けに来たよ、扉ちゃん」

 現れた少女は言う。

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