木漏れ日
いよいよ本格的に動き始めた探偵部ですが、どうなるんでしょうね?なんて
作者がこんな事言ってたら話にならないですね(笑)
連載って本当に大変ですね。。。身を以て体感しております。
そんなこんなで投稿しました。
最後までどうぞ!
五日後。3人は聞いた事も無いような無人駅に到着した。夏だというのに少しひんやりとした風が3人の足下をすり抜けていき、時おりポニーテールにしている雅の長い黒髪の先を揺らせてみせた。
無人の改札(というよりは切符捨て場)を出てすぐ目の前には鬱蒼とした森が何かを拒むかのように立ちはだかっていた。
私服のTシャツを着ているせいか、いつなく頼りなくほっそりとした3人の背中には、その体に似合わずこれでもかと荷物を詰め込んだパンパンのリュックサックが背負われていた。
3人が現地に出向くきっかけになったのは啓太のほんの軽い一言であった。
「やっぱり現場に脚を運ばなくちゃな!調査して、現地の声を聞いてさ!事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」などという聞いた事のあるフレーズである。一人やる気満々な啓太に、2人は無理矢理についてきたといった感じである。
しかし当の本人は、本当に2人が行動に移そうとするなんて思っていなかったのだろう。
「人魚の里駅…...結構そのまんまの名前の駅だったな。」
「そうね。でも、探す手間が省けたし良かったんじゃない?」
「そうだな。」
「せやけど問題はこの森やで……」
「わかってるよ。僕だって今ちょっと想像と違って驚きを隠せないんだよ。」
「ねぇ。私たちとうとう来ちゃったけど、これ、大丈夫かな。」
「大丈夫、だろ。なんだよ雅。ビビってんのか?」
「違うわよ!ビビってなんか、ないわ。」
「僕はめっちゃビビってるんやけど帰ってええかな……」
「今さら帰るとか言うなよ……僕も帰りたいんだよ」
「でも十五夜まで全然時間ないんだものね。助けを求めてきた人がいるんだもの。探偵としてはちゃんと調査して解決してあげないとね。」
「雅。お前いつからそんな探偵魂が芽生えたんだよ。」
「いやだって困ってる人がいるなら助けてあげないとね。」
「雅ちゃんえらい優しいなぁ。」
「知らなかったの?」
「いやいつも啓太を罵ってるイメージしかなかったから(笑)」
「ちょっと和弥。それどういう意味よ」
「まぁとりあえず。十五夜まであと七日間しかないんだし、急ピッチで調査を進めようか。行こう。」
3人は立ちはだかっている森の薄暗さの中に、大きなリュックサックをカタツムリのように背負って消えていった。
時たま、木漏れ日が呼び止めるように肩に揺れていた。その光はあくまで夏の日差しであった。
そう。日差しであったのだ。どうやっても彼らを止める事はできない、暖かな日の光であったのだ。
少女は一人、それを今更とても悔やんでいた。その目からは、怯えと後悔と自分に対する怒りが溢れて熱い涙が亜麻色より少し暗い瞳からぽとりぽとりと水を張った古い盃に音も無く落ちていった。水面に映し出していた3人の少年少女は波紋に揺らいで、いつの間にか消えてしまっていたのであった。
少女はきつく歯を噛み締めて自分を律した。そして自分の背丈と変わらぬほど長いどっしりとした濡烏色の髪を、使い古したぼろぼろの飴色の簪で慣れた手つきでぐるりとまとめて立ち上がった。
盃を大切に棚の奥にしまい、少女はエプロンを握りしめて納屋を飛び出した。
ノースリーブの純白のワンピースは暗い納屋の中でも形が見て取れていた。そしてその白く透き通った艶やかな肌はまるでシルクのようであり、触れられない存在であるかのようであった。
いやーいかがでしたでしょうかー。
今回もとても悩みました。もう脳みそがだいぶオーバーヒートしてます。
なぜ悩んだのかはまぁ、いろいろと、ね(笑)
書き手の事情というやつです、はい。
わりと短めでしたのですぐ読めてしまったのではと思います。
後書き書きながら痺れた手をもーみもーみ。そしたら手相が気になって編集が滞るというなんとも。
何はともあれ最後まで読んでくださってありがとうございます!
いつもいつも本当にありがとうございます!
次回もお楽しみに!