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バーンドアウトヒーローズ  作者: big bear
第二部 ジエンド・イズ・ナイ
35/45

NO.035 クレセブル・オブ・シン

 肌寒くなった海風は機械の体にも中々堪える。制服の襟を立て、寒さをやりすごしながら現場へ歩いていく、防寒を含めて機能性の高いUAFの制服に感謝しなければなるまい。時刻は午前八時前、太陽はせり出してきた雨雲に隠され、ただでさえ薄暗い事件現場に影を落としていた。一見、調査の邪魔になるように思えるが、伝え聞いた惨状を鑑みれば、日が照って全てが照らし出されるよりはいいだろう。特に経験の薄い彼らにとってはそうだ。


「うー寒ぃ、隊長ぉ、俺、車で待ってちゃ駄目ですか?」


「駄目だ、尾村技官、何のためにお前を連れてきたと思っている。ラーキン、岩倉、機材の運び込みを手伝ってやれ。ソレンソン、お前は俺に付いて来い」


「はい!」


「うっす」


「了解、ボス。お供しますね~」


 連れてきた部下たちの面子を見ていると、どことなく不安になってくる。今回俺に同行しているのは四人、隊の中でも優秀なラーキンと岩倉、技術士官として同行させた尾村、一応広東語が喋れるとのことで通訳として連れて来たソレンソン、その四人だ。もう既に知らない連中ではないし、有能なのも理解しているが、それでも全員個性が強すぎる、俺で纏めきれるのかはなただ疑問だ。それでもやるしかないのが、現実ではあるのだが……。


「それにしてもどうして私たちが香港で調査なんですか~? 極東支部の管轄外なのに私たちが駆りだされるなんておかしくないですか?」


「何度もいったが、ソレンソン。第五○一独立空挺戦隊(おれたち)には委員会から”組織”の関与が疑われる事案に関しては独立捜査権が与えられている。 今回の捜査はその最初の事例と言うわけだ」


「はあ~そうなんですねえ~」


 追いついてきたソレンソンがそのまま質問をぶつけてくる。こっちの力まで抜けそうな話し方だが、それでもずけずけと本題に踏み込んでくる率直さは持ち合わせている、話し方はどうあれやはり頭は切れるほうだ。良く適正審査に通ったなといいたくなるくらいに背が低く、長く伸ばしたブロンドの髪とその話し方もあいまってUAFの制服よりもゆったりとしたドレスを着ているほうが似合っているが、これでも訓練校では成績優秀だったらしい。実際訓練でもなかなかの妙手の一人、でなければ他に通訳を連れて来ている。


 他の二人にしてもそうだ、岩倉の優秀さはいうまでもないが、短く金髪を刈り込んだアングロサクソン系のグリズリーにしか見えないラーキンも戦闘技能、判断能力、指揮能力のバランスの取れた優秀な戦闘員(オペレーター)だ。見た目に反して神経が細いところを克服すれば、すぐにでも分隊長に推薦してもいいくらいだ。


 独立捜査権の行使の初の案件だ、慎重を期さなければならない。部隊全体をつれてくるわけにもいかず、極端な少数精鋭、分隊規模での捜査となったが、それゆえに選りすぐりの人員を連れて来た。結果として、全員の個性が強すぎて、纏め切れてないのはある意味本末転倒だが……。


「――ボス、三十分だけだそうです~」


 言葉の通じるソレンソンが現場の職員と二、三言言葉を交わして戻ってくる。三十分か、思ったより長い、余裕があるくらいだ。極東支部(うち)とは派閥の違う香港支部にしては意外な対応だ、滝原は一体どんな手を使ったんだろうか。


 眠ることない香港湾の片隅、さらにその片隅の閑散とした倉庫街、そこが件の事件の現場だった。


「……うわぁ、酷いですね」


「……ああ」


 隣に立ったソレンソンが酷く気分が悪そうにそういった。それも仕方がないだろう、この惨状は俺の目から見ても悲惨極まりない。


 コンクリートとコンテナ、辺り一帯に飛び散った吐き気を催すような(アカ)の痕跡。その光景は、ここで何があったかを思い起こさせてあまりある。一応死体は運び出させれていても、残された痕跡はごまかしようがない。ここにいた十数人、その全員の凄惨な死の跡が目の前にあった。


 香港支部副支部長を含めた十数人の大量殺人、それがここで起きた事件だ。大量殺人と言うだけでも、大事だが、その中にUAFの副支部長とUAFの所属ではないサイボーグが含まれていた。そのために”組織”の関与が疑われ、晴れて、独立捜査権の初行使例となったわけだ。


「う、これは……」


「……ひでぇ」


「うぇぇ、ひっでぇ。しばらく肉食えそうにないですよ、隊長」


「――作業を始めるぞ」


 覚悟を決めて指示を飛ばす。凄惨な事件現場だが、俺にとってはそこまで珍しい光景ではない。この事件の惨状について何か感情を抱くよりも、この捜査で結果を出すほうが俺にとっては重要だ。


 部下たちに作業を進めさせながら、できるだけ感情を排して、客観的に事件現場を眺める。死んだのは、副支部長を含めて十数人。事件の規模にしては事件現場は狭い、このコンテナ群一帯ですべてが行われている。殺された連中は、まともに逃げることすらできずに全員が殺されている。認めるのは癪だが、この惨劇を作った犯人は中々の手練れだ。数分に満たない時間で十数人を、それもほとんど痕跡を残さずに殺しつく尽くしている。しかも、調査報告を見ればブラックリストに載っているサイボーグも含めてだ。それほどの能力を持つ奴がそうぞろぞろいられいては困る、”組織”の関与を疑うのは当然の話だ。


「残留反応チェック開始。うわ、隊長の数値を除いても、すげえ異常値を感知、やっぱりここにいたサイボーグは一体じゃないですね。というか、何だこの反応? 多ッ、一体何体いたんですかここ!? しかも何でこの一箇所に……」


 俺達(サイボーグ)は戦闘行動を起こすと必ずその場に痕跡を残してしまう。装甲の欠片であったり、エネルギー汚染であったりするが、一番分かりやすいのは動力炉ごとに固有のエネルギー残留の値だ。特徴的なその数値は個別にUAFのデータベースに登録されており、持ち込んだ装置は観測した数値をすぐさま照合してくれる。おまけに数値さえ特定できれば、その反応を元にその個体の痕跡を追えるという万能ぶり、いつもの捜査では極めて有用な装置だ。


「UAFの正規品の数値を除いて、再チェックしろ。なんでもいい、他の数値を見つけたら報告するんだ、いいな?」


「へいへい、分かりましたよ、隊長」


 おそらくUAFの数値で探しても大した意味はない。ここでこいつらが何をしていたのかは大体の見当は付く、それこそ目を逸らしたくなる現実と言うわけだ。そのことに対して疑問を持つなと言うほうが無理があるが、それでも今はそのことについて彼に答えを与えてやる余裕はない。自分勝手だが、彼等自身で答えを出していくしかない。俺がどう答えたところで、こいつらの中の疑念をすっかり拭い去ることはできないだろう。


 それでも仕事はしなくてはならない。義務を果たすのは最低限の条件だ。


「バイザーを付けろ、現場照合だ。覚悟を決めろ」


「りょ、了解」


 端末に繋いだオルタナバイザーを装着する。外付けの端末でなく体内でその作業を行えればいいのだが、そんな便利な機能は生憎付いてない。こういう捜査は機材に頼るしかなかった。


 バイザーに投影された現場発見当時の状況と現実を重ね合わせる。痕跡だけが残された殺人現場にあるべきものが戻る、ぶちまけられて滴る血、壁にへばりついた内臓、そして死体、あるべきものが全て、あるべき場所に戻された。


「うっ!?」


「ぬぅ!?」


「っ!?」


 三人が思わず後ずさる。戦闘経験があり、仲間の死を見てきても、それでも一方的な殺戮の跡は思いもしない衝撃がある。おまけに今回は死体のほとんどが、首を切り落とされていたり、真っ二つにされていたりとまともに人間の姿を保っている死体は一つしかない。彼らは戦士だが、凄惨なスプラッタを見た経験はない。彼らの反応を臆病者と罵ること俺にはできない。むしろ、彼らの反応は正常そのものといえる。


 この場で正常じゃない奴がいるとすればそれは俺だ。凄惨に殺された彼らの姿を見ても、俺は何の感情も抱いてはいない。いや、むしろ当然の結果だとさえ思っている。ここにいた連中は所詮、どこまでいってもただの悪党に過ぎない。当然の報いとはいわないが、こいつらとて自分が病院のベッドで死ねるなんて思っていなかっただろう。こいつらの死にそれ以上の感傷など必要ない、重要なのはこいつらを殺した奴の狙いが何だったかだ。


「――呆けてる時間はないぞ、各員事前の指示通りに動け。体を動かしてれば、余計なことを考えずに済む。ほら、始めるぞ」


「…………は、はい!」


 俺の声に気を取り直した彼らはいそいそ作業を始める。身体を動かしてれば不必要な事を考えずに済むのは本当だ。その分、俺が無い頭を絞ればいい。


「さて……と。ここからならよく見えるな」 


 一息にコンテナの上まで駆け上がり、遺体が再配置された事件現場を俯瞰する。見える死体の数は変わらず十六人、倉庫街の入り口側に纏めて半分、奥のほうにもう半分。暗闇に紛れての奇襲であろうことは容易に想像がつく。徹底しているのはどの死体も即死、しかも、首を切り落とされているか、真っ二つにされているだ、恐ろしいほどに無駄が無い。まるで作業だ、切り口からは殺意以外の感情が感じられない。


 さらに、無数の死体の山から少し離れた二つの遺体がある。太った見覚えのある副支部長とこの場にいた件のサイボーグ。検索に掛けるまでもなく、バイザーにデータが表示される。(ワン) 厳仁(ヤンレン)、ブラックリストに名前がある、十数件の破壊活動と殺人、その他諸々の犯罪行為、ここ香港ではそれなりに名の通った奴だったようだ。それも、こうなっては大した意味もない。データは派手だが、大して注目すべき点はない。離れたところにこいつの左腕と首が落ちている、最初の奇襲をどうにか退けたはいいが、そのあと簡単に首をはねられた、そんなところだろう。


 問題はもう一つのほうだ。UAF香港支部副支部長、張小龍(チャンシャオロン)、悪名名高き、肥えた溝鼠のほうだ。この男の周囲には黒い噂が絶えなかった、いや、噂ではない、実際のところこいつはそれだけの悪行を積み重ねてきた。それがわかっていながら誰も手を出せないほどに、この男はありとあらゆる悪徳で武装していた。だが、その鎧もこの下手人が相手では意味を成さなかったようだが……。


「…………どうして、こいつだけ違う? 何故だ?」


 頭の中の先入観を振り払う。問題はUAFの副部長が殺されたことじゃない、こいつだけ他の犠牲者と明らかに殺され方が違う、それが問題なのだ。


 心臓を一突き。首を刎ねるのでもなく、体を真っ二つに分割するのでもなく、心臓を突き刺している。急所に向けての一撃、一見効率の殺し方に思えるが、この犯人なら首を刎ねるか、そのまま真っ二つしたほうが話が早い。なのにわざわざ死ぬまでの猶予が残る心臓を突き刺した、そこにどういう意味がある、その意味を理解できればこの犯人についても理解できる、そんな予感さえ感じていた。


 哀れみからか? いや違う、この敵はそんなものは持ち合わせていない。怒りか? それならもっと派手に殺すはずだ、この敵はそういう類からはそんな激情の類は感じられない。では、なんだ? 気紛れのはずがない、何か必ずあるはずだ。


「……そういうことか」 


 コンテナから降りて、副支部長の死体と向き合ったときにはたと気が付いた。そうか、簡単な話だ、憎しみだ。しかも、消しても消えない体のうちから精神を焼く憎悪、酷く身近だったその感情をあろうことか俺は見落としていた。副支部長の殺され方からは拭い切れない憎悪を感じ取れる。隠そうとしても、俺も似たようなものだどうしようもなく感じ取れてしまう。


 理由はどうあれ、この犯人は副支部長に何らかの恨みを持っている。まあ、こいつに恨みを持っている人間なんていくらでもいるだろうが、敵の行動理念が少しは理解できた、それは収穫だ。


「――再測定完了っと、さっきまで隊長のいたあたりから現場の周辺に未確認の数値がありますね。この数値……どっかで見たような……」


「追えるか? せめてどちらのほうに逃げたかどうか位は知りたい」


「やってみますけど、期待せんでくださいよ、隊長」


 装置での追跡は便利だが、完璧ではない。痕跡を誤魔化すのはそう難しいことではないから、逃げ方をわきまえてる奴なら逃げ延びられるはずだ。もしこれで追えるのなら、それこそ御の字だ。


「未確認……ってことは新型ですね。隊長、やっぱり犯人は――」


「そのはずだ。でなければ困る」


 岩倉の言うとおり未確認の数値なら新型の動力炉しかありえない、その開発はここにいたようなただのマフィアには無理だ。連中の技術力じゃあ精々既成の技術の劣化品か今回のような横流し品が関の山、新しい技術の確立はUAFの開発部か、それこそ”組織”だけだ。UAFのデータベースに数値が登録されていない以上、”組織”の新型と考えるのが当然の筋だ。


「――隊長、司令からの秘匿通信です。お繋ぎしますか?」


「通信? まあいい、繋いでくれ、ラーキン」 


 香港支部のほうに聞き取り調査に向かった滝原からの通信、こちらから掛けようとも思っていたところだし丁度いいが、電話で済むのにわざわざ秘匿通信とはよほど聞かれたくない話題らしい。なにか重要な事を掴んだのか、それともよほどまずい事を掴んだのかのどちらだろう。


「――01? 私よ」


「ああ、俺だ。何があったのか滝原?」


「ええ、中々面白い情報が手に入ったわ。でも、先にそっちの現場報告お願いできる? それによっては私の持っている情報の価値が変わるから」


 妙な口ぶりだが、滝原の指示、従っておくのが最善の答えだ。なにがあるにせよ、彼女の指示が間違っていたことは一度もない。


「――分かった。俺の所感と現場の様子でいいなら、今報告できる」


「お願いするわ。とりあえずでいいから教えてちょうだい」


 指示通り、感じたことと客観的な事実を分け、必要な情報以外を切り捨てて、端的に状況は伝える。分かったことは少ないが、そのどれもが事前の予想の裏づけとなる重要な情報ばかりだ。


「……そう、となると余計にわからなくなるわね」


「どうかしたのか? 滝原」


 滝原らしからぬ奥歯に何か挟まったような物言い、よほど何かおかしな情報を掴んでるのだろうか。それとも俺の報告した情報に何かおかしな点があったのかのどちらかだ。


「……そこで取引されてた品なんだけど、ナノカーボン繊維五十キロ、プラズマ炉のコアモジュール三基と新式ライフル十丁……らしいのよ」


「サイボーグのパーツか。まあ、予想通りだが……」


 定番の品々だ。俺が五年間呆けていた間も、裏社会の市場はそう変化していないらしい。俺が逃げ出す前もこういう取引は行われていた。今現在行われているよりももっと、杜撰で大雑把なものだったが、大筋は同じだ。悪行には違いないが、そうおかしな点はない。


「妙なのはここからよ。この商品(……)だけど……新式ライフル以外、回収できてないの」


「……確かに妙だな」


 回収できなかったということは、つまり犯人が持ち去ったということだ。だが、なぜだ? この犯人が”組織”の手のものなら、わざわざここにあった資材を奪う必要などない。連中の資材の潤沢具合はUAFと比べてもさらに圧倒的だ、どうしてわざわざ目立つ資材を奪っていったのかわからない。


 わざわざ資材を奪っていくような輩がいるとしたら、それはここで死んだ奴らのような連中だ。連中からすれば、ここにあった資材は宝の山と同じだ。持ち去っていっても、何もおかしなことはない。だが、精々マフィアの用心棒風情のサイボーグじゃ、どうやってもここまで手際の良い仕事(……)は無理だし、新型の動力炉の開発なんて問題外だ。しかしそうなると、資材を持ち去る意味がわからない。


「――考えたくないけどここまできて当てが外れたかもね」


「かもしれんが、”組織”以外に誰が新型の動力炉開発なんてできる? もし、そんなのがいたらとっくに目を付けてるはずだろう?」


「それはそうなんだけど…………」


 考えれば考えるほど思考の迷路にはまり込んでいく。いっそ、持ち去ったことに深い意味を求めるのをやめてしまいたくなる。ただの嫌がらせか、気まぐれといわれたほうが気が楽だ。


「……今結論を出すのは危険ね。そっちの調査が終わり次第、一旦香港支部まで戻ってきて。そこで考えましょう」


「了解した。一時間後に合流しよう」


「ええ、こっちも――ちょっと待って」


「? ああ」


 このまま考えても埒が明かないと、合流の算段をつけ、通信を切ろうとした矢先に、通信の越しに伝わるほど向こう側が慌しくなる。何かあったのだろうか?


「……あの腐れ副支部長。上等よ、やってやろうじゃない。01、合流場所を変えるわ、いまから送る住所で待ってて」


「あ、ああ、俺はいいが……どうしたんだ?」


 送られてきた住所に見覚えはない。住所的にはこの香港郊外、町の外れの方ということしか分からないが……。


「そっちの犯人ははずれかもしれないけど、副支部長の方はただの悪徳副支部長じゃなかったみたいね。この住所、前にサーペントから送られてきた情報にあったのと同じなのよ」 


「――つまり張副支部長は、裏切り者の一人だったかもしれないってワケか。となると、犯人はなんだ? ますます分からんな……」


 UAFの中にいる裏切り者たち、今まで影も形もつかめなかった連中の一人をようやく見つけた。もう死んでいたとしても、張小龍の痕跡はどうにも手詰まりな現状を拓く鍵になる。犯人については何もつかめてはいないが、それでも収穫はあったというのは嬉しい報告だ。それと同時に地位のある副支部長でさえも裏切り者一人であるという事実に戦慄と怒りを覚える。どうであれ、ここで死んだ連中には哀れみも同情も掛ける価値はないというのは確かだ。


「もう逃げてるかもしれないけど、この住所に向かうのは早いに越したことはないわ。運がよければ、連中の尻尾をつかめるかもしれない」


「分かった、すぐに向かう。その場所で合流しよう」


 敵が近くにいるかもしれない、そう認識したことで身体の内から力が湧きあがる。予定外だが、上等だ。思わぬ収穫ともいえるだろう、体が鈍ってきたところだ、ここらで本業に戻るとしよう。


「……隊長、どうかされましたか?」


「いや、なんでもない。それより移動するぞ、準備に掛かれ」


 よほど剣呑な気配を発していたのか、ラーキンが心配そうに声を掛けてくる。連れて来たのがこいつらでよかった、こいつらならばこれから確実に起きるであろう荒事においても、足手まといになることはあるまい。


「い、移動ですか? ですが、香港支部の許可は……」


「ない、だが、そう気にするな、岩倉。これからやるのはただの殴り込みだ、大した事じゃないさ」


 戸惑う岩倉に気分よくそう返す。我ながら救いようのない本性だ、ひさしぶりの戦闘の予感に頭は完全に切り替わっている。だが、いまはそれでいい、裁きを受けるのは為すべき事を為してからだ。そのためには闇の底に潜ることも、これ以上の罪に手を汚すことも厭いはすまい。

どうも、みなさん、big bearです。今回は調査回です、あと、しばらくはこの面子がメインです。では、こんなだめ作者と拙い文章ですが、どうかこれからも暖かい目でよろしくお願いします。

誤字脱字報告、ご意見、ご感想、ご質問等ございましたらぜひぜひお書き込みください。

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