スイーツの材料を探しませんか?
「姫様、昨日からどうなされましたか?」
マリアが心配そうにロザリア声をかける。
「なにが?」
「シュークリームが余っております。」
机の上には昨日から減らないシュークリームが飾りのように置いてあった。
時計の針は十時を指し、いつもならば二人でお茶を楽しむ時間だが、ロザリアは準備されたお茶にも手をつけず、窓の外ばかり見ていた。
「いつもなら、さっさと食べられてしまいますのに。」
そう言いながらマリアはせっせとシュークリームを頬張る。
「私、太っちゃいます。」
マリアは大きな口で次のシュークリームを頬張る。
「大丈夫よ、私以上にマリアは動いているから。」
適当な返事をロザアリアは返した。
マリアはシュークリームを差し出した。ロザリアは受け取りつつ…いつもなら早く食べたいのに、今日は食べたくない自分にため息が出そうになった。
ロザリアの私室の扉をノックする音が聞こえる。
マリアはすばやく立ち上がり、自分のお皿とコップを隠しロザリアの背後に控える。
「どうぞ。」
ロザリアがマリアの様子を確かめながら返事を返した。
「陛下がお見えです。」
私室の扉の外で護衛する騎士の声が響く。
「わかりました。」
ロザリアの言葉とともに扉が開きリュミエールが入ってくる。
「今日はどうされましたか?」
ロザリアが平静を装い尋ねる。
「今日の仕事は休む。」
リュミエールが答える。
「お体でもお悪いのですか?」
リュミエールの血色のいい肌を見ながら、ロザリアが尋ねた。
「まさか。たまにはいいだろう。お前はどうせ暇なんだから出かけるか。あとは頼んだぞ、マリア。」
そう言うと、リュミエールは手を取りロザリアを半ば引きずりながら歩き出した。
堂々とした足取り、王宮一番注目される存在であるはずの人物が誰にも見つからないよう馬屋にロザリアを案内する。
あきらかに慣れている様子だった。
「待ってろ。」
そう言いリュミエールは馬屋の中に消えた。
そしてリュミエールの代わりに出てきたのは一人の老人だった。
「ほう、人を連れてくるとは珍しい。」
そう一言だけいうと毛並みのよい手入れされた馬たちの世話をするため厩舎のほういってしまう。
残されたロザリアは帰ってしまおうかと真剣に悩み始めたころリュミエールが戻ってきた。
「待たせた。」
現れたリュミエールは着替えていた。
いつも目にする豪奢な衣装ではなく、何度も袖を通したことがあることが隠しきれていない、それでいて貴族の古い趣向を凝らした衣装だった。
下級貴族の装いですらリュミエールが袖を通せば強い光を帯びる。
「なにを?」
「行くぞ。」
短い言葉に栗色をした馬に横乗りさせられる。
「馬ぐらい乗れます。」
「その格好でか…二人乗りもいいだろう。」
リュミエールはロザリアのドレス姿を指摘する。ロザリアの足首まであるドレスは、馬にまたがるには不釣り合いだった。
リュミエールは先に馬にまたがり、ロザリアを引き上げ横乗りさせる。
馬を操るため、手綱を握るリュミエールにロザリアは抱きすくめれ得るような格好になる。
そして馬を走らせ始めた。
リュミエールがまず訪れたのはひなびた一軒の宿だった。
城下町の一角にあるというのに、路地裏にひっそりと溶け込むようにある宿は表通りの喧騒とはうってかわり静かな佇まいだった。
リュミエールは馬の背中を撫でつけると馬は気持ち良さそうに目を閉じた。
「いい子だ。」
馬は栗色の毛をリュミエールにすり寄せながら一声鳴いた。
「さあ、いくか。」
宿の中にはいると、恰幅のいい女主が出迎えた。
「流石に王宮の服ね、目立つこと。」
そういうと女主は有無を言わせぬ勢いでロザリアを宿の一室に招き入れ、着替えさせた。
「あの…。」
質素な服に身を包み、ロザリアの特徴である金髪は編みこまれ帽子の中に隠された。
「なかなかの出来栄えだな。」
リュミエールが女主に声をかける。
「当たり前。」
女主が威勢よく答えた。
「こい…街を見せてやる。」
いつもであれば返事より先に手をつかまれるが、今になって手を差し出しロザリアに選択肢をリュミエールは与えた。
「仕方ないですね。」
ロザリアはリュミエールの手をとった。
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