スイーツはみんなで楽しみましょう
マリアは綺麗に片付けられたテーブルの上に便箋を広げ文をしたためるロザリアを眺めていた。
便箋に今日作ったパウンドケーキの味について事細やかに書き綴っていくロザリアに、マリアはうんざりした様子で話しかける。
「スイーツの会でございますか。公爵令嬢様といい、いいかげん誰ともわからない方との交流なんておやめになったほうが宜しいのでは?」
『スイーツの会』についてマリアは苦言を呈する。
ロザリアが社交界デビューをした十五になった頃、ロザリアの国では各国大使などを集めて大体的に聖誕祭が行われた。
10年に一度行われる聖誕祭は、聖誕祭と名を借りた各国首脳の情報収集の場と成り下がっているのだが、そこでロザリアは運命的な出会いをする。
聖誕祭の催しの一つとして開かれた、各国首脳、大使の子弟達を中心とした仮面舞踏会にロザリアもイチゴのショートケーキをあしらった仮面を被り参加していた。
そこで出会った魔女に粉した人物と大いに話は盛り上がり、お互い文のやり取りを約束をし今でもその交流は続くこととなっていた。
ただし、お互いの正体は隠したままで…。
文の手段は、ロザリアの国にある城の大きな木にある穴の中に手紙を置いておくという風変わりな方法で…文の相手はロザリア、公爵令嬢、謎の魔女の三人だけ。
「だって面白いんだもの…それに暇だし。」
ロザリアが口を大きく膨らませた。
「それにマリアも時々手紙についてくる、マニアックな本を貰って喜んでいたじゃない。」
謎の魔女は文でマリア好む武装具について書くと、珍しい武装具の文献も贈ってくれる気の利く文通相手だった。
「武芸は姫様を守る上で大事なことなんです。」
「そう?私だって護身術は学んでるよ。マリアより成績良かったのに。」
「姫様は技量はお有りでも、単純ですからね。」
軽口を言い合いながら、ロザリアはパウンドケーキについてのコメントを書き上げた。
「次は何を作ろうかな。」
ロザリアはにっこりと微笑んだ。
二人の穏やかな日常だった。
誤字脱字・文章推敲いたしました。
ご指摘ありがとうございます。