舞踏会のスイーツは?
太陽の日差しも傾きかけた頃、ロザリアの自室ではマリアの嬉しそうな声が聞こえていた。
「姫様、ドレスです。」
マリアによって朝から磨き上げられたロザリアは磨き上げられた肌とは逆に表情は曇っていた。
「見たらわかるわよ。」
ロザリアは疲れきった声を出す。
「さあ着替えましょう。」
「あっ、待って。この前誕生日にお父様から頂いたドレスを着るわ。」
「でも、陛下から頂いたドレスがありますけれど。」
そう言って青いドレスをロザリアの目の前にひろげる。
「それマリアの趣味じゃない。そのフリルもレースも。」
色合いは落ち着いているがフリルやレースがさりげなく、それでいて豪華にしつらえられているドレスをロザリアは指差した。
「重そうよ。」
ドレスの見栄えよりも、率直な意見をロザリアは言った。
「姫様、おしゃれは気合ですわ。」
拳を握ったマリアが力説する。
「茶会や晩餐会なら我慢できても、舞踏会よ。そんな拷問耐えられない。」
「姫様。」
「お父様から頂いたドレスでもおかしくないでしょ。そのドレスは機会があれば着るから。」
手をひらひらと動かしロザリアは青いドレスを片付けるようにマリアに示した。
「機会ではダメです。」
マリアも負けまいと大きな声で言った。
「……じゃあ、絶対。」
既に疲れきったロザリアはマリアに逆らうことなく妥協案を出した。
「わかりました。」
少し残念そうにマリアは時間が迫っていることもあり、ロザリアの妥協案にのった。
マリアが嬉しそうに、ロザリアを着飾る。
「姫様、素晴らしいです。」
マリアが感嘆の声を出す。
ロザリアの黄金の髪を結い上げ、自国の父王より誕生日の贈りものにもらった金紗の入った薄い桃色のドレスをまとったロザリアはまさに輝いていた。
豪華と呼ぶには清楚な印象を与えるためか、わざとフリルを少なくししなやかな布の美しさを引き立てるようドレープを幾重にもとったドレスの華やかさよりも、ロザリアの緑色の瞳がーその視線が、仕草が、清廉な印象と共に忘れられない姫へと変える。
マリアは完成された美しさに大きく息をはいた。
「まさに姫様です。」
感慨深げにマリアは前から、横から、後ろから、ロザリアの細部までをチェックする。
「なにいってるんのよ、マリアも早く準備して。」
ロザリアがマリアに声をかける。
「私はこれで。別室に控えておりますわ。」
夜会、晩餐会、舞踏会といわれるパーティーでは使用人達は席を同じくせず別室にて控えることになっているため、マリア模範的な答えを返した。
内心、今まで陰口を言った貴婦人達がロザリアの美しさに驚愕する姿を見られないのは残念と思いつつ。
ロザリアは、そんなマリアの気持ちをしってか知らずか不思議そうに首を傾ける。
「なにいっているの。マリアも侍女をしてくれてはいるけれど貴族だし大丈夫よ。私だけ夜会にいっても……面白くないじゃない。側にこなくていいから…ね。」
ロザリアは上目遣いにかわいく瞳を潤ませながら言った。
そして机の方に行き、リュミエールからもらった貴族たちの様子を記載した紙をマリアに手渡した。
「私一人じゃ全部みれないの。」
マリアはうなだれる。
……側に来なくてもいいから、離れて姫様の様子を、周りの貴族たちの様子をさぐれということだと付き合いの長いマリアは悟った。
「こういうことには頭が回りますね。」
マリアはため息をついた。
「なにそれ、大事なことよ。」
ロザリアが答えた。
「そこに、あのバカ王からもらったドレスもあるしね。マリアの好みに作ってあるしちょうどいいじゃない。」
ロザリアはにっこり微笑んだ。




