誕生日のスイーツは?
「どう手作りチョコレート、みてよ。マリア。」
興奮を隠そうともしないでロザリアは黒いチョコレートをマリアに見せる。
「もうしばらくねかせなきゃいけないけど。会心の作よ。」
マリアはロザリアの言葉を微笑ましく思いながら、もっと他のことにこの集中力を見せて欲しいと祈るのだった。
「でも姫様、お疲れになったでしょう。」
「手間も美味しさの隠し味だから。」
ロザリアはにっこり微笑んだ。
「んー、腕疲れちゃった。マリアのマッサージ好きなんだけれどな。」
上目遣いで可愛くロザリアがマリアの顔を見る。
「ちゃっかりしておいでです。」
ロザリアは横になる。そして、マリアはロザリアの腕を揉み始める。
「気持ちいい。」
「それで、姫様…他に変わったことはございませんでしたか?」
女官長に何か尋ねられた時のために、ロザリアに変わったことがなかったか尋ねる。
「なんにも……あ、そうだ。変な人に出会ったわ。」
そう言ってロザリアはアザリアを手に入れた時のことをマリアに話す。
「なんだか、宰相様に会ってから…いろいろな方に会いますね。」
『そろそろ侍女のふりをするのも潮時では…』と口にしようとしてマリアはやめた。
なぜなら、ロザリアは疲れたのか眠ってしまっていたから。
「困った姫様。」
マリアはそっとロザリアの側を離れ、毛布を取りに部屋から出て行った。
「こっちは宰相様用。」
忙しく厨房の中を動くロザリアの姿があった。
「宰相様用にはチョコレート使わないのかい?」
料理長がロザリアに声をかけてくる。
香ばしいチョコレート生地の焼ける香りとは別に、ロザリアは、最近よく作るようになったクッキーの型抜きを慣れた手つきで行っていた。
「ええ、宰相様は執務の合間に食べられるかもしれないから簡単に手でつまめるように、いつものクッキーにしたの。」
ロザリアは手間隙かけてつくったチョコレートを宰相に渡してなるものかと舌を出す。
型抜きしたクッキーの生地を鉄板に並べ焼く準備をする。
「出来たかな?」
竈から黒いケーキを取り出す。
「これは、わ…誕生日用のケーキ。フォンダショコラ。」
ロザリアは思わず私の誕生日と言いそうになる。
「マリアちゃん、誕生日なのかい?」
「まさか、カカオは姫様の父君からの贈り物よ。姫様の誕生日ケーキよ。」
少し説明口調になってしまったことをロザリアは後悔する。
少しの間の悪さを取り繕うようにロザリアは、フォンダショコラを綺麗に箱の中に入れる。
自分の居室に帰ったらマリアにこの会心のスイーツを自慢しなくてはとロザリアは心に誓う。
そして、先ほど作ったクッキーを焼きあげる。
出来上がった、クッキーをカゴにいれアザレアの花を飾る。
「綺麗な花だね。」
「たまには花を添えて見るのもいいでしょう。」
ロザリアは笑う。
「さ、フォンダショコラの余りで作ったホットチョコレート。いい香りでしょ。」
ロザリアはそういいながらホットチョコレートを鍋からカップに注ぐ。
しだいに甘い香りが立ち込める。
「一緒に飲みましょうよ。」
料理長とのんびりした時間を過ごしたあと、料理長の部下の人たちにもホットチョコレートを渡す。
「料理長も、皆さんも、いつも私のわがままに付き合ってくださってありがとうございます。」
料理長の部下たちは少し困った顔をしながら会釈を返してくれた。
ロザリアは、料理長は私のことを気に入ってくれているみたいだけれど、付き合わされるこの人たちは本当に迷惑をかけていると思う。
別に料理長もいちいち付き合わなくてもいいのにと思うが、厨房で何か起こった時責任を取らされるのは料理長だから仕方がないとも思う。
「温まりますよ。」
そう言ってロザリアは微笑み、一礼して厨房をあとにした。
残り香は、甘いチョコレート。
残り香は、甘い香りのチョコレート→残り香は、甘いチョコレート
意味の重複修正致しました。ご指摘ありがとうございます。
アザレア毒性があります、食べないようにしてください。ご指摘ありがとうございます。
誤字脱字、文章推敲いたしました。




