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スイーツな王様  作者: 月帆
本編
12/114

カカオからチョコレート

七輪を見つめながら黒い豆が焼けるのじっと待つロザリアがいた。

「焼けたわ。」

嬉しそうにカカオ豆の香りを楽しむ。

今日は料理長はいない、代わりに料理長の部下が『ご用があればお手伝いします。』と別室で控えている。

「料理長と話すのも楽しいんだけれど、たまにはね。」

ロザリアはマリアのふりをばれないように気を使うこともなく、久しぶりに自由にお菓子作りを楽しんでいた。

「ここからが手間なんだけれどね。」

一人うっとりとしながら豆の皮を剥き、石臼を回す。

石臼を回していると、次第にロザリアの腕は重くなっていくが『私のカカオ、素敵になって会いましょう。』とおまじないを唱えながら腕の重さに耐える。

朝日とともに訪れた厨房に、太陽の日差しが強く照りつけ始めたころ、ロザリアは満足げな一言を発する。

「できた、これを湯煎にかけたらできあがり。」

小さくうなづき、ロザリアは軽やかに回る。

何度も何度も湯煎を繰り返し、他の材料と混ぜ、なめらかになるまで練り合わせる。

カカオがチョコレートに変わる。

「いい香りよね。」

ロザリアはやや滑らかのかける手作りチョコレートを口にいれる。

「やっぱり苦い。」

予想していた味にロザリアは笑顔になる。今日作ったチョコレート、これを使って今度は何を作ろうかしら。

ロザリアの心は陰り出した太陽とは逆に輝き出していた。

そう晴れやかに言うと、ロザリアは別室で控えていた料理長の部下に声をかけ、自分の居室へと戻って行った。


陰り出した太陽をみて、お昼を食べ忘れていたことにロザリアは気がついた。

ロザリアはこれからのんびりとマリアとお茶をして、夕食をすませたら、たまには二人でごろ寝でもしようかな…と思いながら部屋への道を急いでいたら…見つけてしまった。

庭道からみえる赤い花、アザレアが数本咲いていた。

ふとアザレアに合いそうな花器を思い出す。

……チョコレートケーキを食べる時、テーブルにアザレアの花があれば、お菓子が華やかになる。

いい思いつきだった。

疼く心を抑えることができず、思わず庭道からはずれてスカートをたくし上げ、淑女とはいいがたい格好になりながらアザレアをとり何げなく庭道に戻る。

さりげないしぐさでスカートを整え、 帰り道を急ぐ。

「帽子に葉がついていますよ、侍女殿。」

丁寧な口調でロザリアは背後の上から声をかけられる。

そして、肩の側から緑の葉っぱを差し出された。

侍女用の帽子が少しずれ、金色の髪が帽子の中からこぼれる。

ロザリアは、自分の特徴的な髪の色を隠すために厨房に行く時は帽子をかぶっているのにと焦りながら帽子の位置を直す。

声のほうを振り返ると…そこにいたのは、この前庭園であった青年だった。

「何をしていたんだ。」

先ほどの丁寧な口調とは違う、きつい口調。

圧倒的な迫力。

庭道ではなく、庭師でもないのに庭から出てくれば侍女としての行動からは逸脱している。

責められて当然だとロザリアは思う。

「あの…これを。」

アザレアを見せる。

本来であれば、勝手に城の花を手折ることは罰せられても仕方が無い行動だが、青年の顔が緩んだ。

「花?」

そう言って青年はロザリアの手にもっていた出来たてのチョコレートの入ったカゴを無造作に開く。

ロザリアが青年の行動に手に持っていたアザリアを落とす。

「うまそうだ。」

チョコレートの欠片をとりロザリアの口にいれる。

「なっ。」

「毒は…ないと。」

そういって青年はチョコレートを口にする。

「苦いな…けれど、癖になりそうだ。」

青年は落ちたアザリアを拾い上げロザリアに渡す。

チョコレートに口を塞がれ、ロザリアはなにも言えない。

「楽しみだな。」

そういい青年は城の中へ消えて行った。

口の中のチョコレートが溶け、消えた頃…ロザリアはつぶやいていた。

「変な人。」

と………。

誤字脱字修正いたしました。

アザレアの飾る場所を変更いたしました。ご指摘ありがとうございます。

文章推敲いたしました。

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