スイーツの会 ロザリアの誤算
窓辺からは夜空の星が舞い降りてきそうなほど輝いている。
紙とペンをとり、たわいも無い出来事をしたためる。
「なにをしている。」
起きている私の姿に、夫となったリュミエールが不機嫌な様子を隠す様子もなく近づいてくる。
「おかえりなさい。」
そういってひざ掛けをはずし立ち上がる。
「夜は冷える、体に障る。」
そう言って軽々と横に抱き上げると、ベットに私を運び静かに下ろした。
そして、習慣のように存在を誇示するかのように目立つ大きな私のお腹に手を当てた。
「眠れなくって。」
この照れくさい心地のよい時間が欲しくって、寝ずに待っていたとは言い出せない秘密。
「何を書いている。」
たわいも無い会話。
テーブルの上に書き残した紙に視線をやりながらエールが尋ねてくる。
「魔女に手紙を書いているといったら笑われますか?」
リュミエールが片手にを口に当てる。
いつもと違う様子に、何かを隠している気がした…いや確信した。
「エール?」
思わず声が低くなる。
「気がついていなかったのか。」
そういって、隣にしつらえてある書斎に消えていき、木の箱を持って帰ってきた。
「あけてみろ。」
そこには…この国に来る前からしたためていた手紙があった。
内容はお菓子の話が主だったけれど、どうしてこの手紙がエールの下にあるのかがわからなかった。
名前も知らない魔女に当てて、姫ではない私から息抜きに送っていた手紙。
お互い素性も知らない、手紙が届くかさえわからない関係だったはず、だからたわいも無い文章しか書いていなかった…けれど。
「…どういうことですか。」
けれど、エールが気づいていて私が知らないのは気に入らなかった。
「あの魔女、俺だって言ったら驚くか。」
驚くに決まっている。
「あの時、…いきたくもない仮面舞踏会だったから、宰相にのせられてあんな格好になったんだ。」
照れくさそうに笑う。
確かに大きかった、けれどあの身のこなしは女性そのものだった。
「男だって気がつきませんでした。」
「そうか?メマリーは知っていたぞ。」
「え?」
一緒に仮面舞踏会に出ていた従姉妹は何も言っていなかった。
「…顔はわからなかったが、幸せそうに食っている姿と、可愛らしい姿が気になって、正体を教えろって何度か言ったんだがな。」
「そう言えばお姉様はこの国に留学していた時期がありましたものね。」
確かに面識が無くてもおかしくは無い。
「何度か正体を教えろって言っているのにはぐらかされて、押し付けられたのが飾りの愛妾だったのがロザリアだった。」
エールがおかしそうに笑った。
「手に入れたかったものを、とっくに手に入れていたのにな。」
優しく髪をなでる。
「あの時は腹がたってな、しかもほかの国で王位継承権でもめている尻拭いの意味もあったし、俺も王位を継いだばかりだったしな。」
「それで2年もほっておかれたんですか?」
「あと少しほっておいたら離縁できると思っていたしな。」
以前私が同じように思っていたことをエールも繰り返した。
「誤算ですね。」
「嬉しい誤算だな。」
どう切り替えそうか、黙っていたことを怒るべきか、素直に今の言葉を喜ぶべきか悩んでいると額に軽く口付けをされる。
「きっと運命だったんだ、俺たちが結ばれる。」
思わずため息が漏れた。
本当に甘い。
スイーツな王様。




