ギャルズミートの研修生グエッツの死
深夜の養豚場。一人の研修生、グエッツは激しく肩を上下させていた。
「ハァ、ハァ、ハァ……。コノ、地下倉庫……ナンナンダヨ。声、キコエルヨ……」
静まり返った敷地内に、場違いな女の啜り泣きと、掠れた悲鳴が木霊していた。
「キャァ……助けて……誰か、お願い……」
恐怖に足を震わせながらも、グエッツは誘われるように階段を降りていく。暗い地下の奥、鉄格子の向こう側に、絶望に染まった女子高生が転がっていた。
「アシ、ナイよ……。あなた、ドウシタ……?」
グエッツは絶句した。鎖に繋がれた彼女の下半身は、無惨にも失われていた。
「助けて……っ、お願い、助けて!」
少女が縋りつくように叫んだその時、背後の闇から冷ややかな声が突き刺さった。
「グエッツ。なんで、こんなところにいるんだ?」
社長だった。逆光で顔は見えないが、その手には巨大な解体用ハンマーが握られている。
「シャチョ……なぜ、オンナノコ、コンなことスル……?」
「それはな……うまい肉を作るためなんだよ」
言葉が終わるより早く、鈍い衝撃がグエッツの側頭部を襲った。
「グッ……! シャチョ……ナニ、スル? アナタ、おかしい!」
必死に頭を抑え、後ずさるグエッツ。しかし、社長の瞳には慈悲の欠片も宿っていない。
「はっはっはっ……黙れ! うまい肉を作るためなら、俺は悪魔にだって魂を売り渡すんだ!」
狂った咆哮とともに、ハンマーが何度も、何度も振り下ろされる。
――グシャッ、ミチッ。 頭蓋が砕け、脳漿が飛び散る生々しい音が地下室に響く。
「うぅ、ぅぅ……。ミンナ、ニゲロ……。ベトナムの、パパ……ママ……ゴメンナサイ……。オカネ……」
仕送りを待つ家族の顔を思い浮かべながら、グエッツは地面に突っ伏し、二度と動かなくなった。
「あぁぁぁぁぁぁ! 助けて、助けてぇ!!」
目の前の惨劇に、女子高生が狂乱の叫びを上げる。社長は返り血を拭いもせず、忌々しげに彼女を睨みつけた。 「お前の悲鳴がうるさいから、こいつが気づいたんだろうが。本当に、面倒をかけてくれる……。だが、タケルのためには、まだ生かしておかなきゃならんからな」
社長は無造作にグエッツの脚を掴み、ゴミのように引きずり始めた。
「……そろそろ、タケルを呼んでくるか。こいつは細かくミンチにして、番犬の餌にでもしてやるよ」
巨大なミンチ機のモーターが唸りを上げる。夢を持って日本へ来た青年の命は、ただの「廃棄物」として処理されようとしていた。
「タケルゥ! ほら、新しい『おもちゃ』があるぞ」
先ほど研修生を撲殺した男とは思えない、猫なで声が地下室に響く。
「あぁぁぁ、うわー! うわー!」
暗がりの奥から、歓喜の咆哮を上げてタケルが這い出してきた。彼は足元に転がるグエッツの死体など目にもくれず、その背中を無造作に踏みつけ、一目散に女子高生へと突進する。
「ギャァァァァァ! バ、バケモノ……ッ!」
恐怖のあまり少女が叫んだ瞬間、パァンと乾いた音が弾け、彼女の頬が腫れ上がった。
「バケモノだと……? うちの息子になんて無礼なことを……!」
社長の猛烈な張り手が飛んだのだ。少女は衝撃で奥歯が折れ、もはや悲鳴を上げることすらできなくなった。
「ウヘェェェェェ……」
タケルは満足げに喉を鳴らし、自らのズボンを蹴り脱ぐと、抵抗できない少女にのしかかった。彼女の口に己の唇を強引に押し付け、獣のような舌で執拗に舐めまわす。脂ぎった手で全身をペタペタと愛撫し、タケルは自らのどろりとした欲求を少女へと叩きつけた。
「あっ……あ……」
焦点の定まらない瞳。少女の精神は、あまりの屈辱と恐怖に音を立てて崩壊し、ただの「肉の塊」へと成り果てていた。
「よし……タケル、もう満足か?」
「うわぁぁぁ!」
タケルが満面の笑みで応えると、社長は優しくその頭を撫でた。
「じゃあ、ミンチにしちゃうからな。危ないから、タケルは離れてるんだぞ」
重苦しい唸りを上げて、巨大なミンチ機が起動する。まずは、まだ温かいグエッツの遺体が投入された。バリバリと骨を砕く不快な音が響き、出口からはドロドロの肉塊が吐き出される。社長宅で飼育されている八頭の獰猛なドーベルマンたちは、主人が投げ与えた「元研修生」の肉を、一瞬で平らげた。
続いて、放心状態の少女もまた、生きたまま機械の闇へと飲み込まれていく。彼女の肉は明日の朝、他の飼料と絶妙な比率で混ぜ合わされ、豚たちの餌となるのだ。
すべてを処理し終えた社長は、返り血を浴びた顔で、愛おしそうにタケルを見つめた。
「明日もまた、いい肉が仕上がるぞ……なぁ、タケル」




