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第二話 マロ平原攻防戦 中編(人類側)

時間はマロ平原に進軍開始まで戻る

場所はマロ帝国、玉座の間

マロ帝国の皇帝がランド王国の使者と会話をしている。


「現在、魔族共は例の薬物の対応に追われていることでしょう」


ニヤニヤとランド王国の使者は言う。

また、その言葉を聞き、同じくニヤつくマロ帝国の皇帝がいた。


「うむ、ならば今が好機、侵攻を開始することにしよう」


皇帝が近くの兵士に合図を出すと、兵士は頷き、直ぐ様玉座の間から出ていった。


「魔族共は直ぐに蹂躙されてしまいますな」


玉座の間から出ていった、兵士の背中を見つつ、皇帝に話す。


「なんせ、軍事国家であるマロ帝国の正規軍、薬に頭を壊されている連中と戦えば火を見るより明らか」


一瞬でけりがつくとケタケタと笑う。

だがそれを否定する言葉をかける。


「…いや、一瞬ではけりがつかないだろうな」


「…なぜです?」


不思議そうに皇帝の言葉に対して疑問を問いかける。


「実はな、今回の編成…将軍以外は新兵なのだ」


「なんと!」


大げさに驚く素振りをする。


「何か策でもあるのですかな?」


まるで皇帝の行いが素晴らしい物だと感じ、興味を示すかのように大げさな素振りをする。

その様子に皇帝は満足したかのように笑顔を見せ話を続ける。


「今回の戦い…薬漬けになった連中と戦うのに正規軍を使っては、我々の実力が魔族共に知られてしまうからな」

「であるならば、新兵を使い、実力を隠しつつ、正規軍を来たるべき戦いに温存しておくのがよいと思ってな」


「素晴らしい!」パチパチ


手を大きく広げ、玉座の間に大きな拍手音が響く。


「マロ帝国の重要な内政も行っているというのに、戦略家としての頭脳をお持ちとは」


ランド王国の使者は、強く目を閉じ、涙を流す。


「いやはや、私は感激しました」


その様子に満足そうに笑う。


「ハッハッハ、そうか、そうか」


ランド王国の使者はふと不思議に思い皇帝に聞く。


「しかしよろしいのですかな?新兵は未来皇帝を支える人材ですが」


「なあに、大丈夫さ」

「人を成長させるには何事も実践からと言うしな。それに薬漬け共に負ける馬鹿はおらんからな」


皇帝は天井の絵を見ながら笑みをこぼす。


「それにしても、将軍以外の兵士が新兵でよろしいのですかな?」


「今回の戦いは誰がどう見ても、勝ち戦だ。心配はいらんよ」


ガハハと皇帝は笑う。

だがそんな様子とは別に、ランド王国の使者は、翼人共和国にいる、とある英雄を思い出す。

そして皇帝に確認するかのように聞く。


「兎人共和国、鹿人共和国、そして翼人共和国の全てがその編成なのでしょうか?」


皇帝はその言葉に疑問を持つが、この戦いは勝ち戦であると先程の事が頭をよぎり、疑問はかき消される。


「ああ、そうだ。」

「なあに心配はいらん、多少の損失は目に見えているさ」


ランド王国の使者は、不味いと思いつつも、今ここで皇帝に反論すれば今までの行いが全て無に帰すと思い、口を噤む。


(翼人共和国にいるのは、20年前の生き残りだ、そう簡単に突破する事は出来ないだろう)


皇帝とは対称的にランド王国の使者は、不安要素に頭を支配される。

とはいえ、今は皇帝の前にいる為、皇帝に称賛しつつも質問を続ける。


「ちなみに、何処から攻めるか決まっているのですかな?」


「全てだ」


「へ?」


「聞こえんかったか?」


「いえ!」

「す、全てと申しますと三カ国同時ということですかな?」


「うむ」


ランド王国の使者は、目が点になる。

いくら弱体化しているとは言えど、多方面作戦はリスクが大きい。

ましてや大半が新兵だ、熟練兵でも何が起こるか分からないのに、3箇所の地形に適用出来るとは思えない。


「ち、ちなみに補給は平気なのですかな?」


「?」

「補給は要らんだろう?相手は15000弱、その殆どが女や子供であり、こちらは50000で対応しているのだ」


その言葉に唖然としながら、翼人共和国の英雄が先程から頭に浮かぶ。


「で、ですが兎人共和国は森林が広がっており、あの森林地帯には嗅ぐだけ死んでしまう毒花や触れただけで仮死状態になる毒の枝が多く存在し、兵士達の進軍には時間が掛かります。」

「鹿人共和国にとっては土地の殆どが沼地で足場が悪く、毎日のように強い風が吹き、海に近い場所では小さな津波が起きる程、悪路です。」

「翼人共和国は平原ではありますが最近では、草や木が生え、ゲリラなどの被害があるやもしれないですぞ」

「他にも…」


「貴様は、我が国が負けるとでも?」


皇帝の声に我に返る。

その直後、先程の自身の態度が過ちであったと頭の中が一杯になる。


「い、いえそんなことは」


そんな様子に呆れつつも勝ち戦と言う考えに染まっている皇帝は深くは問わなかった。


「まあよい…貴国は指をくわえて待っているといい」

「下がってよし」


追い返すように手を片手で振る


「それと、薬で儲けたのはいつも通り、我が国に献上せよ…貴国で儲けたのもな」


「はい」


憎しみを持つも、表情や声では表さず、拳を強く握りしめ、玉座の間を後にした。


現在、ランド王国の表向きは独立国家ではあるものの、裏ではマロ帝国の傀儡国家である。

ランド王国の貴族の殆どがマロ帝国の貴族であり、また、王もマロ帝国の者である。

なぜ、併合せず、傀儡国家にしているかと言うと、ランド王国は魔石だけでなく、薬物の生産も世界でトップクラスを誇る。つまり、ランド王国はマロ帝国の資金源とも取れる。だからこそ、翼人共和国より少し大きくても、要塞や大量の魔術師を雇えるのである。

そして、生産国だけでなく、薬物の効き目を確認できる、国家規模の人体実験場でもある。


今回、皇帝と話したランド王国の使者は、生粋のランド人であり、祖国をこのようにした、皇帝に対して、憎悪を向けている。

だが、それと同時にマロ帝国の強大さも、現在の地位で理解しており、なす術にいた。

だが、今回の謁見で皇帝の考えを理解した。

今回の戦いは確実に負けるであろうと。

それと同時に、負けた後、皇帝の悔しむ顔を思い浮かべ、翼人共和国にいる英雄に思いを託した。

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