第二話 マロ平原攻防戦 前編
戦いが始まる前に、地理の話をさせてもらいます。
マロ帝国と翼人共和国の間には大きな平原があり、20年前の人類と亜人との戦いに勝利する要因になったこの平原は当時のマロ国から名前を取り、マロ平原と呼ばれ、人類側にとって魔術師や騎兵が活躍した歴史ある平原となっている。
それと同時にこの平原は翼人共和国にとっては忌むべき物であり、また、人類側が侵攻して来させないよう、戦争終結と共に草や木を生やし少しでも相手の地理的優位性を減らすべく、昔から準備を進めていた。
「昔から備えた甲斐がありましたな」
老兵が平原を見ながら西部方面軍大隊長のチキンにそう話す。
「…そうだな、北部のあいつの言うとおりだ」
マロ平原に対して、睨みつつも北部方面軍大隊長の行動に称賛するような返事をする。
「北部方面軍大隊長殿は20年前の英雄ですからのぉ」
「当時の二つ名は確か…」
「空の監視者だ」
言葉を遮るかのように返事をする。
その様子に笑みを浮かべ、北部方面軍大隊長と西部方面軍大隊長の仲が良かったことを思い出す。
その様子に呆れる様子で話す。
「そんな事より兵の配置は進んでるのか?」
「ええ、若者の配置は終わりましたな、年寄り連中は前衛なのでまだ、配置ら出来ては居ませんが…」
老兵に対して、つっこむかのように目を向ける。
「南部方面から援軍を貰ったとはいえ、やはり少ないな」
「総勢4000弱でしたかな?」
「これでも北部と東部よりかは兵を配置出来てはいますがね」
「相手は万単位で来るのだぞ、圧倒的に足りん」
その様子に苦笑いしながら話を続ける。
「住民の殆どを兵士転換にしましたが、やはり足りませんな」
現在、翼人共和国の人口15000弱から、約10000を正規軍として扱い、他は予備兵となっている。
「…兎人共和国は我が国よりも軍は居ないのか?」
東部方面から兵を少しでも引っこ抜く方法は無かった考えているとふと思い出す。
「兎人共和国は我が国よりも軍は少ないのか?」
「ええ、正規軍は約3000、今は殆どが民兵で…兎人共和国と比べればまだいい方ですな」
「…やはり、軍を政治のトップにしたおかげですかな?」
ニヤリと西部方面軍大隊長に目を向ける
その様子に嫌悪感を感じつつもその行動の正しさを証明するかのように話す。
「今や戦乱の世だ、上が危機感を持たないでどうする」
「…実際、国民を兵士にしたおかげで、早めの配置が出来ているからな」
その言葉にやれやれと首を振る
そこで最後の兵士が指定の場所に座る
「できましたかな?」
バサバサと兵士の羽の音が下の方から聞こえる。
「兵の配置が終わりました」
「ご苦労さん」
笑みを浮かべながら老兵は若い兵士に話す。
若い兵士が地上に降りるのと確認すると、チキンは口を開く。
「後は待つだけだな」
その言葉にウンウンと頷き、敵兵が来るであろう平原の方に目を向ける。
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暫くすると、全身フルアーマーとローブを着た集団が歩いてくるのが見える。
「おいでなすった」
老兵は絶望することは無く、今の現状を楽しんでいるかのように状況を話す。
老兵の言葉を片耳で聞きながら、視線は集団に固定される。
「しかし、飛び続けると肩に来ますな」
老兵が肩を回す
そんな様子に気にも留めずに話す
「敵兵は何人だ」
「2の4の…」
「大体5万ぐらいですかな?後ろからぞろぞろと出てきていますから総数は分かりませんがね」
ふと下の方を見ると大半の若い兵士が震えている
その様子に老兵は笑いながら話す。
「若い連中にはちと厳しいですかな?」
「だからこそ、老兵共の後ろに下がらせたのではないか」
呆れながら、返答する。
「ですが良いのですかな?若い連中が後ろで」
「敵前逃亡するやもしれないですぞ?」
ニヤニヤとチキンに話す。
「逃げたければ、逃げれば良い。」
「我々は死に行くのではないのだ。無理強いはせん」
チキンの優しさを感じる言葉に感心しながら、平原の方に目を向ける。
地上の兵士達の前まで兵士が迫っているのが見える。
老兵は太陽の存在を確認するように後ろを振り返り、すぐさま、敵兵に対してニヤニヤと笑みを浮かべる。
「さてさて、お硬い連中にとってゲリラをどう対処するか見ものですな」
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舞台は地上に移る。
敵兵は夕日を前にしており、翼人軍の兵士を確認できずに、進軍していた。
そして、翼人達が隠れている岩や草、木になんの警戒心もなく通っていく。
100人ほどが、老兵の横を通っていく、だがそんな様子をじっと、老兵は微動だにせずにいた。
「…」
老兵は若い兵士達の所まで敵兵が行ったことを確認し…
ナイフで横の敵兵の首に刺す。
一瞬の出来事に後続の敵兵は固まる。
その様子を気にせず、老兵は敵兵を刺していく。
「敵襲!!」
一人の敵兵士が叫ぶと、その声に応えるようにその場の敵兵士達が盾を一斉に構える。
だが、その行動は遅く、一人二人と犠牲者を増やしていく。
また、他の老兵達も、その声を聞いたあと近くの敵兵に攻撃を開始する。
前衛にいた敵兵が後続の様子を確認しようと振り返る。
その様子を確認した若い兵士達が前衛に対して、声を上げながら襲う。
「何が起きた!!」
敵の将軍は近くの兵士に首根っこを掴みながら聞く。
「て、敵襲です!」
「んなことは分かっている!敵は何処だ!」
「敵は前衛に対して強襲を行っています!」
別の兵士が将軍に返答する。
現在、老兵達は敵歩兵のど真ん中に展開しており、敵の魔術師にも攻撃を行っている。
敵兵はパニックに陥り、大半の敵兵は老兵達の攻撃に対処できずにいた…
「作戦はひとまずは成功ですかな?」
チキンの横にいる老兵は確認するように話す。
チキンは地上の混戦を見ながら、若い兵士達の方に目を向ける。
「…」
敵兵の前衛は立て直し、若い兵士達対して、少しずつ対処していくのが確認できた。
そして意を決したように告げる。
「爆撃開始」
後方に隠れていた兵士は、チキンの合図を確認し、飛び立つ。
兵士達はチキンと老兵の後ろまで飛び立ち、魔石のは入った箱を両手で抱え、後方にいる敵兵の頭上まで飛んでいった。
地上にしか目を向けていない敵兵は、頭上にまで、近づいてくることに気づけなかった。
ヒューと音を立て、魔石の入った箱は地上に落下し、そして爆発する。
「!!」
突然の爆発に敵の将軍は驚く。
乗っていた馬が、その音に驚き、乗っていた将軍を振り落とす。
「ぐっ…」
飛んでいた兵士は、補給する為に後方に飛んでいく、その様子を見ていた将軍は近くの魔術師に命令する。
「対空魔法!!」
「は、はい!」
近くにいた魔術師達は飛んでいる翼人達に対して、数多くの火の玉や小さな雷を放つ。
2人3人に当たったことに歓声をあげる。
だがそんな様子に気にも留めず敵の将軍は翼人達に睨みつける。
「敵兵は新兵ですかな?」
老兵は不思議そうに敵兵を見つめる。
突然の出来事に対処出来ていないのは理解しているものの、時間が経った今でも、対応出来ていない事を理由にそういう結論に至った。
「ならば好機だ、少しでも敵兵に血を流させる」
チキンは片手を上げ、敵兵の側面にいる兵に命令する。
「攻撃開始!」




