第一話 未来を見る者 後編
足音やドアの音が間髪を入れずに鳴り続ける。
「忙しないですな」
南部方面軍の大隊長が呆れるように言う
「まさか、今後の話をする時に来るとは」
東部方面軍大隊長はやれやれと首を横に振る
「各方面に兵を招集させろ!」
「は、はい!」
西部方面軍大隊長は怒気交じりに、兵士に対して命令する。
現在、各方面の大隊長が、今後の作戦行動をするために執務室に集まっている。
「仕方ないでしょう、宣戦布告されたのですから」
「そんなことよりも、今の現状をどう覆すかが問題です!」
西部方面軍の大隊長は現状に対して怒るように話す。
「このままでは、マロ帝国に蹂躙されてしまいますぞ!」
「わかっております。ですがその怒気をこちらに向けないでくださると助かるのですがね」
なだめるかのように東部方面軍大隊長は手を交えて話すがその行動に西部方面軍大隊長は怒りを表す。
「怒っているわけではありません!マロ帝国との最前線である西部戦線から敵兵が雪崩込んでくる前に手早く!作戦を!決めたいのです!」
「大体、なぜ東部方面から軍をこちらに回せないのですか!?現在、東部方面側に戦争している国は存在せず、兎人共和国は同じマロ帝国の被害者、国境に軍を配置しなくても良いではありませんか!」
「いや、東部方面はこのままで良い」
北部方面軍大隊長の言葉に怒気があふれる顔で振り向く。
「…なぜです?」
「確かに、兎人共和国とは戦争もしていなければ、同じマロ帝国と戦ってはいる…が…」
「もし、兎人共和国が崩れた場合、東部方面からも敵兵が来るだろう」
「…兎人共和国が直ぐに潰れると?」
「あくまで予測ではあるがね…まあ、我が国と兎人共和国は軍事に対して力の入れ方に差があるからな」
「少なくとも彼らは国ですぞ」
「分かっている。それに他にも理由はある」
「東部方面は全てが平原だけだ、北部、西部方面は数は少ないが、大きな岩や頭の高さまである草があるからこそ、頭を使えるが、東部はそれが出来ない…それにランド王国の一部とはいえ、国境を交えているからな」
「…ランド王国が攻めてくるのですか?」
「いや、攻めてはこないだろう」
「…軍事通行権ですかな?」
南部方面軍大隊長の言葉に頷く。
「恐らくな…だが、宣戦布告は必ずしてくるだろう、まとまった兵力を動かすのに市民の目には映るからな…」
「攻めてくるとすれば西部、北部、東部に分散進撃してくるつもりだろう…」
「地理的優位性が確立している場所があれば、誰だってそこに兵力を注ぐだろう」
各方面軍の大隊長は納得したように頷く。
「それと、兎人共和国は陸だけじゃなく海にも面していますからね」
「海軍の支援の元、早期決着するでしょう」
「ですから我が方面である東部方面は動こうにも動けないのですよ」フルフル
東部方面軍大隊長は首を横に振りながら、西部方面軍大隊長に言う。
その態度に怪訝な顔をしながら睨む。
「しかし、少しでも兵力を回せないのですか?」
北部方面軍大隊長は南部方面大隊長の顔を見合わせ、決心したかのように話す。
「…実はな、我が国はランド王国に攻めようと考えている」
「「!?」」
豆鉄砲を食らったかのように東部、西部方面軍大隊長は驚く。
その様子を気に留めず話を続ける。
「ランド王国は我が国が攻めてくるとは考えもしないだろう」
地図に指を差しながら話す。
「東部方面とランド王国の国境に面しているこの"ア平原"は、ランド王国の要塞がない。」
「ここの小さな平原ですが、ここは海に面していますよ」
心配するかのように東部方面軍大隊長は話す。
「ここには何もなく、魔術師の乗った軍艦で、滅多打ちにされます」
「直ぐに攻撃するならな…」
「…攻めるのは兎人共和国に敵兵力が向いてからだ」
「陸で戦う為に敵の歩兵は必ず、この海を渡らなければならないからな…兵力が移転した後、直ぐに攻撃するつもりだ」
一呼吸を入れ、顔を上げる。
「現在は敵兵力が動いている情報は知らされていないが、戦闘準備はすぐに行ってくれ」
各方面軍大隊長に目配りをしながら話す。
「西部方面軍大隊長のチキンはマロ帝国を出来るだけ食い止めてくれ」
「東部方面軍大隊長のピーコックは侵攻開始の合図があるまで待機」
「南部方面軍大隊長のスワンは各方面の援護を頼む」
各方面軍は頷く
「しかし、そんな多方面で戦う兵力はありますかな?」
「ない」
「…が、しなくてはならない」
「我が国に侵攻してきたという過ちを気づかせるためには」
コンコン
ノック音が執務室に流れる
「失礼します。竜人帝国の使節団からトップとの面会を希望されています」
「竜人帝国から?」
各方面軍大隊長は不思議そうに顔でお見合わせる。
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「実に大変な事になりましたな」
白く長い髭を持つ竜人は白湯を啜り、ため息を吐く。
「我々、亜人を魔族とは…」
「マロ帝国もお人が悪いですな」
「そう…ですね」
何を考えているかわからない態度に嫌悪感を交え、探るよう話す。
「そこで、我が国はマロ帝国の被害者である、翼人共和国、兎人共和国、鹿人共和国に対して援助をしようと考えています。」
「援助ですか?」
「ええ、武器や魔石、食料等を」
「「おお」」
チキンとスワンは希望の光にも取れる声を上げる。
「ですが…」
わざとらしく首を横に振り、やれやれと思わせる態度する。
「直ぐにでも食料は援助出来ますが、武器や魔石は"勝てる国"にしか出来ないのです」
「勝てる国?」
「ええ、我が国が貴国等に援助していることがバレたくないのでね」
「もし戦闘に負けた場合、我々から援助した武器や魔石が露呈されますからね」
先程の作戦が脳裏に浮かぶ。
「つまり…善戦していれば良いと?」
「率直に言えばそうですね」
作戦を実行するしか方法ないと未来に仰ぎ、拳を握りしめ返答する。
「わかりました」
余談
短編の「お兄ちゃん、お野菜食べるかい?」に続き、2作目です。
小説を書くのは初めてですので、温かい目で見てくださると助かります。また、見てくださることで、モチベーションも上がります(笑)
今後ともよろしくお願いします。




