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第一話 未来を見る者 前編

初陣です。(連載は)よろしくお願いします。

1991年春。人類連合軍と魔王軍の長きに渡る戦争で魔王軍を倒し、人類は安寧を魔王軍の魔の手から取り戻した。

しかし、人類連合軍と魔王軍の戦争は苛烈を極め、全ての生物の居住地や作物は、戦争により、破壊され、魔王軍の影響は、未来永劫その地に刻まれる事になった。

本来の安寧を取り戻すため、人類は手を取り合い、木々を植え、作物を育て、全ての生物が住める環境を整えることを、胸に秘め、明日への希望を望み、それに応えるように行動することを誓ったのであった。


そして、魔王軍のような極悪非道な存在は、未来永劫消し去るべきだと、人類の歴史に刻まれた…




これから話す物語は、ありきたりな英雄譚ではなく、勇者一行が率いる人類連合に対して、無謀にも戦いに挑んだ魔王軍の話である。


話は戦争が起きる前の30年前まで遡ることになる……

-----

1960年冬。翼人共和国、首都フレーム


「ふむ…」


執務室でため息交じりに唸り声をあげる翼を持つ男性が一人、自国の領土と周辺国が描かれている大陸の地図を眺めていた。


「やはり…今のままでは我が国は滅ぼされるな…」


自身の国と人類の国を交互に見つめる。

自国と隣接している2カ国あり、1つは自国より少し大きい領土を持つランド王国、そして悩みの種である、自国より3倍ほど大きい領土を保有している、マロ帝国。


(人類の中で3本指に入る軍事国家、マロ帝国…)

「人口、資源、魔術師を多く保有し、世界で4位の軍事力を持つ国家…」

「もし…戦争になった場合、1週間も耐えることは出来ないだろう…」


翼人共和国とマロ帝国との国境付近は広大な平原が広がっており、剣術を巧みに扱う騎士や強力な魔法を扱う魔術師にとって、本来の能力を発揮出来る、魅力的な地形となっている。

だが、国境付近であれば、彼の不安要素は絞られる事が出来たかもしれないが、それ以上に最悪なのは、翼人共和国の保有している領土の全ての地形が平原となっている。

彼は苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。


「あの条約さえなければ…」

コンコン


「失礼します、北部方面軍大隊長殿に手紙が届いております。」


「手紙?」


兵士から手紙を受け取り中身を確認する。

内容は、西部方面の大隊長からの悲痛な叫びとも取れる文字列であった。


「…」


内容を進めていくうちに顔が強張る。


「西部は予備兵が足りないのか?」


「は、現在、西部方面は暴動が起きている村に対して兵力を回しており、マロ帝国の国境線に兵力を回せない状態となっています。」


「…暴動はいつものか?」


「は!」


彼の同意に視線を落とし、西部方面に同情と憐れみを思う。


「北部方面の予備兵力の半分を西部に回してやれ」


「は、ですがよろしいのですか?」

「最前線である北部方面が手薄になりますが」


「構わん、それよりも暴動を早めに終わらせるように西部方面に伝えろ」

「それと、水を一杯持ってくるように伝えてくれ」


「は、承知しました」


そう言うと、彼は執務室から出ていった。

少し遅れて、ノックがされる


「失礼します。水をお持ちしました」


「ああ、ありがとう」


カップを受け取り、口に含む。

そこであることを思い出す。


「そういえば、飲み物でも影響を受けるな、我々翼人は」


カフェインを含む、コーヒーを思い浮かべる。

現在、西部方面では強力な興奮作用があり、破壊衝動に囚われてしまう薬物が出回っている、それも翼人に対して効果的に働くものであり、年々被害数を増やしている。


「事前に被害を防ぐ事が出来ればよいのだがな」


その薬物を生産、密輸している国を理解している。ランド王国だ。

現在、翼人共和国は地理や領土故に輸入にのみ頼っており、世界で有数の魔石産出国であるランド王国から、生活上で欠かせない照明や水を出す魔道具のエネルギー源となっている魔石の中でも純度の良い魔石を輸出している国である。

また、魔石は強力な魔法を使う魔術師にとって必要不可欠であり、軍事面でも利用されている。

この世界において重要な天然資源である。

その天然資源を我が国も輸入しているものの、それと同時に薬物も密輸されている。


「は、ですが、密輸している商人に対して注意喚起するしか方法がありません。」


彼の意見に同意する他ない。

その対処として、魔石の輸入を減らしているものの薬物の量が増えている。恐らく、輸入回数が減ったことにより、出来るだけ多くの数を盛って、1回輸入で儲けようとしているのだろう。

…他の対処を考えれば考えるほど、条約の内容に対して嫌悪感を募らせる。


「ランド王国に対して、さらに注意喚起をしますか?」


「いや、いい…した所で結果は目に見えているからな」

「全てはあの忌々しい条約のせいだな」


「クロマニョン条約ですね」


その言葉に頷く。

条約が締結された20年前、一度人類と亜人の大きな戦争が起きた。結果として、亜人は敗れ、人類側が有利となる条約を提示してきた。

その内容は、悲惨であった。内容の一部として、人口15000以内まで、亜人を減らし、大隊長以上の士官を作ってはならず、指定された地形でのみ国家を形成することなど、亜人類に対して不利になるような項目がずらりと並んでいる条約である。

しかしこれでも、譲歩された条約ではある。

理由として、戦争としては負けたものの、一度人類側を亜人類よりも多く減らし、人類滅亡まで迫らせる事が出来たのだ。

だが…そんな絶望的な戦局を変えた者がいた。


「勇者…」

「圧倒的な実力を持つ者」


勇者は人類側における最高戦力。

強力な魔法と剣術のみで、大群を倒し、亜人側における最高戦力であった竜族を単騎で全滅させ、人類側に栄光をたらしめた存在である。


「ですが、勇者は現在はおりません」

「勇者が居ない現状、攻めることは難しいとは思いますが、せめて、圧力を強めることはできないのでしょうか?」


「…貴官も知っているだろう?我が国とランド王国の国力の差を」

「攻めることは疎か、守ることでさえ難しいのだぞ」


現在、翼人共和国は要塞になるものが存在しておらず、また、作ることさえも禁止されている。

さらに拍車をかけるのが、兵力だ。


「ランド王国の保有している、常備兵力は約1万、戦時になれば5万以上の兵力を動かせると聞く」

「…我が国の総人口を容易に超える兵力を出せる時点で圧力などとは到底無理だ。」

「…それに、かの国は魔術師の保有数も主要国に引けを取らない…さらには世界有数の魔石産出国…」


世界有数の名を守るかの如く、ランド王国の軍人の約半数は魔術師となっている。

まさに鬼に金棒…

執務室に少しの間、沈黙が流れる。


「…隣国のエルフ王国と兎人共和国に強力を仰げないのでしょうか?」

「エルフ王国はランド王国よりも、魔石産出は少ないですが、現状を少しでも変える事はできます。」

「それが無理でしたら、兎人共和国と共にランド王国に声を挙げるのはどうでしょうか?」


「…エルフ王国は中立を保ってはいるが、最近では人間との関係も良好で、文化交流も行っているらしい…もし、貿易先を変えた場合、経済制裁が確実にある。とは言えないが、起こる可能性は高いだろうな」

「…それに兎人共和国は既にランド王国に対して注意喚起は行っている」


「結果は?」


「惨敗だ。ましてや、我が国よりも薬物への被害は酷いらしい。」


ため息交じりに話を続ける。


「それに小国風情が声を上げたところで、意味など


突如扉が勢いよく開けられる。


「失礼します!き、緊急事態です!」


突然のことに驚きつつも彼の言葉を聞く


「つい先程、マロ帝国は鹿人共和国、兎人共和国そして、我が国に対して、宣戦布告をしました!」

「また、亜人は人類を脅かす魔の者として、亜人改め、魔族と呼称するように世界に呼びかけています!」

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