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ドッジボールやらない?
橙陽高校の入学式が終わると、校内は一気に騒がしくなった。
廊下も階段も、中庭でさえも、どこもかしこも部活の勧誘で溢れている。
そして──ここにも。
「君、ドッジボールやらない?」
「……ドッジ、ボール?」
野球部が練習に使っていたボールを拾い、軽く投げ返した環田快冴。その様子を見ていた体操着姿の上級生男子ふたりが、突然声をかけてきた。
思わぬ勧誘に動きを止める快冴をよそに、先輩たちは勢いよく続ける。
「そう! ドッジボール! 俺たち、その部員なんだ!」
「君のボールさばき見てさ、これはぜひ勧誘しなきゃって!」
しかし快冴は、まだ要領を得ない様子でぽつり。
「ドッジボールって……何ですか?」
快冴は中学まで、山と田んぼに囲まれたど田舎の小規模校に通っていた。人数が足りないせいで、大人数でするスポーツにはほとんど触れてこなかったのだ。
「ドッジ知らないとか正気か!?」
「おい! そういうこと言うなって!」
「うぅ……すいません……」
思わず謝る快冴に、長身の先輩が苦笑しながら手を振る。
「いやいや、謝らないで。じゃあさ──うちの部、見学してみない?」
快冴は少し戸惑いながらも、どこか心が弾むのを感じた。
そう、これが――高校生活の、新しい青春の始まりだった。




