表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら料理スキルだけチート! 異世界グルメで王や竜まで胃袋で支配しました  作者: 妙原奇天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/20

第3話 王の晩餐と毒入りのワイン

 王都ファルグランは、想像以上に華やかだった。

 白い城壁、石畳の道、香辛料と焼き菓子の匂いが漂う市場。

 けれど、その空気のどこかに、鉄と血の匂いが混ざっていた。


「……物騒な匂いだな」


 俺と竜――いや、今は人間の姿を取っている“ルーファス”は、城門前で足を止めた。

 金髪の青年のような姿に変化しているが、瞳の奥にはまだ竜の光が宿っている。


『人間たちは戦の準備をしている。食糧庫の匂いが焦げ臭い。腐敗が進んでいるのだ。』


「……戦争、近いのか?」


『ああ。隣国ルディアとの国境で小競り合いが始まっている。王は強硬派だ。』


 そんな中、俺たちは“竜を鎮めた旅人”として王に招かれた。

 つまり、今夜は――王の晩餐会。


 広間はまるで劇場だった。

 長いテーブルには豪華な料理が並び、楽士が竪琴を奏でている。

 けれど、その匂いに俺は違和感を覚えた。

 香りが、少し“濁っている”。


「……変だな。香辛料の混ぜ方が不自然だ」


 王は壮年の男で、威厳のある声で俺たちを迎えた。

「異国の料理人ユウタ・クジョウよ。我が国に竜を従えた者と聞く。ぜひ腕前を見せてくれ。」


「光栄です、陛下。」


 俺は頭を下げながら、周囲の匂いを分析した。

 スキル〈味覚言語〉を発動。空気中の“味”が、音のように響く。


 ――苦い。渋い。鉄っぽい。


 それは、“毒”の味だった。


(やっぱり……料理のどれかに仕込まれてる)


 見れば、王の席の前にだけ、赤いワインが置かれている。

 他の貴族たちは白。

 これは完全に――狙われてる。


「陛下、失礼ながら……そのワイン、少しだけ味見をさせていただいてもよろしいでしょうか」


「ほう? 我が酒に興味があるか。構わん、やってみよ。」


 俺はグラスを受け取り、舌に少しだけ触れた。

 ――即座に、舌の奥で冷たい電流が走る。

 やっぱり。これは即効性の神経毒〈シャルダ草〉。微量なら麻痺、濃ければ死。


「……この香り、素晴らしいですね。ですが――」


 俺はゆっくりと微笑んだ。


「発酵が“早すぎる”。普通のワインなら、ここまで香りが立つには二週間はかかります。つまり、これは自然の熟成ではなく……“誰かが意図的に混ぜた”証拠です。」


 ざわっ、と会場が揺れた。

 貴族たちが一斉にざわめき、王の顔色が変わる。


「何を言う、異国の者が……!」


「なら、確かめてみましょう」


 俺はテーブルに並ぶ果実と水、蜂蜜を手に取る。

 即席で新しいワインを仕込み、〈料理〉スキルを発動。

 光が走り、わずか十秒で琥珀色の液体ができあがった。


「こちらが“本来の香り”です。陛下のグラスとはまるで違う。」


 王は恐る恐る嗅ぎ、次の瞬間、目を見開いた。

「……確かに、こちらは清らかだ……!」


 隣のルーファスが口を開く。

『人間の言葉では分かりづらいだろう。だが、この料理人の舌は真実を語る。味覚は誤魔化せぬ。』


「竜が証言する、か……」

 王は小さく笑い、剣を抜いた。

 その刃先を、隣に控えていた大臣へと向けた。


「毒を仕込んだのはお前だな、バルド公!」


 大臣の顔が蒼白になる。

 手が震え、懐から小瓶を落とした。床に散る赤い液体――シャルダ草の抽出液だ。


「なぜだ!」

 王の声が広間を震わせる。


「隣国と結び、陛下を退けるつもりだったのだ!」

 叫びながら衛兵に取り押さえられる大臣。

 その間、俺は静かに王のグラスを片付けていた。


「……助かった。料理人よ、そなたがいなければ、我は死んでいた。」


 王が深く頭を下げた。

 まさか国王に頭を下げられる日が来るとは。

 俺は慌てて手を振る。


「い、いえいえ! 味見が趣味みたいなもので!」


 ルーファスが小声で笑う。

『人間とは、面白いな。命を救っても、謙遜する。』


「いや、だって、俺は戦わないし……作るしかできないし……」


『だが、料理で救った。……それこそ、この世界に欠けていた“力”だ。』


 王が玉座に戻り、改めて俺の方を向いた。


「ユウタ・クジョウ。そなたの舌は真実を暴き、人を救った。――頼みがある。」


「……なんでしょうか?」


「この国の“食卓”を、そなたに託したい。隣国との講和のために、明日、宴を開く。そこでもう一度、そなたの力を借りたいのだ。」


「講和……つまり、戦争を止めるための“食事会”ですか?」


「うむ。敵国の使者を迎え、同じ皿を囲む。それが最後の交渉だ。」


 ――来た。

 これが、“食卓外交”の始まりだ。


 その夜、厨房にこもっていた俺の前に、ルーファスが現れた。

『何を作るつもりだ?』


「決めてる。争ってる国同士でも、誰もが笑顔になれる料理。」


『そんなものがあるのか?』


「あるさ。――“パンとスープ”だよ。」


 ルーファスが目を細めた。

『……地味だな。だが、妙に温かい匂いがする。』


「だろ? 王も兵士も、腹が減ってる。難しい理屈より、同じ鍋を囲むことのほうが早い。」


 鍋の中で、スープが静かに沸き立つ。

 ハーブの香りと、野菜の甘み。

 その湯気の中に、俺は確かに“平和の味”を感じていた。


次回予告

第4話「食卓の誓い ― 二つの国のパンを焼け ―」

講和の宴が始まる。

王と敵国の使者、そしてユウタの鍋。

一口のパンが、千人の剣を止める――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ