CMR #02 ジャガー Eタイプ #27
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コンソールからkリアの声がした。kリアだけじゃないほかにも…でもどうやって? ただ…それはなんか……
「なにいってるってポ。こんなに…いててててポ。刺さってるッポ、痛いッポ」
「死ね…死ねっ。あんた小さいんだからそこの隙間から逃げればいいだろうが」
「無理ッポ。いま外に出たら死んでしまうッポ。それなら一緒に死のうだっポ」
「い・や・だ・ね。あたしは……」
「kリア、なんとか開けたよ、こっちへ…なにじゃれ合ってんの?」
「じゃれ合ってねーっての、こいつ、放り投げてきて、どっか」
「それは酷いっポ、生死を分かち合った…いででででッポ」
三人で楽しくやっている、っていう感じのものだった。こっちは大変だっていうのに…なにをしているんだい?
「kリアラかい? そっちは大丈夫なのかい? どこにいるんだい? それに…どうやってジャガーで連絡して来てるんだい?」
僕が聞くよりも早くイマークがそうセンターコンソールに話しかけた。丸まって、ただイマーク、そこは外れないからそんなに手荒く扱うのはやめてくれないかな? それとジャガーのコンソールにマイク機能なんてないから、こっちから話しかけても相手にはたぶん、聞こえてないよ
「いま、ガレージの有線ラインを接続して、そこからマシンへと送ってる。こっちはいま…通用口の近く。備品ラックの後ろんとこ。ただ、瓦礫と後ろにはなんだっけ?」
「03」
「そー、そんなのがおっちんじまってて、棚とかいろんなものと一緒で邪魔で、身動きが取れねーんだよ」
通用口…こことは対角線、斜め左前、あそこか…確かに備品ラックが向こうへ倒れていて、その後ろの壁に取り付けてあった棚のいくつかが無くなっている。あれが落下して塞いでいるのか…今度はもっときちんと留めておこう
そっちへと飛んでいく時、kリアがマシンを抱えていった。自分の命より大事な装置だ。kリアが置いていくはずがないとは思っていたけど…こんな手段で使うとは思ってなかった
「アウギス、通用口らへんの状況を教えてくれ」
▽▲ ……… ▲▽
「? AUgiS?」
▽▲ n ▲▽
どこか遠くからそんな声が聞こえた。オフィスの方からだ、なんだってそんな……
「AUgiSさまは先ほどの崩落で知覚、聴覚、発音すべての装置が破損、操作が不能になっておいでです。現在、こちらとのコミュニケーション手段は失われており、オフィスとそちらの知覚センサーのみが稼働いたしているようでございます」
ゼイvlrスさんがそう教えてくれる
「それは…まいったな」
ガレージ経由でkリアラに指示を届けることができない。いくつかの、目、も失われたことになる
「接続はできてるんだけどさー、そっちの状況が全く入ってこないんだよ。完全に切れてるね、これは…あ…まって、今、サーバー横の出口から二人組が逃げてった。アイツら…鍵壊していきやがった」
「なんて二人組だッポ。全部あいつらが悪いだッポ」
「いいや、あんたが悪い」
ふたりしてそうツッコむ、なんとかしてこっちの状況を伝えたいんだけど…それに聞きたいこともある
「ダメだ、上位隷令をことごとく破棄された。こちらの命令を受け付けない」
黙っていたイゼさんがそういった。顔と声といっている内容があっていない。上位隷令?
「05に指示を出していたのですか? そんな危険な…それでは17も感染の危険があったでしょうに」
「そんな愚かなことはしない。相手に押し付けただけだ、受け取っていない」
ゼイvlrスさんがそう窘める…指示? 通信? 押し付ける……
「ゼイvlrスさん、アウギスと通信できますか? もしくは…kリアのマシンには…無理か。なにかこちらのことを相手に伝えることはできませんか?」
「02がいる、それに指示すれば相手にも伝えることができる」
「いいえ……」
「ダメだねー、中のセンサーは全部ダメだわ、こりゃあまいったねー。外の…裏口のものが生きてるけど…なんだい? あのマシン? あっはっは、入口、全部、落ちてるじゃねーか」
「これ、あたしたちが乗ってきたVtBANだよ。なんでこんなとこに?」
ああタイミングの悪い、こういった時のkリアは空気が読めない。これは…話し続けるぞ?
「どうぞゼイvlrスさん、kリアの話しはこの際、聞き流してください」
「左様でございますか? 宜しいので? 何かお大事なお話しがおありなのでは?」
「気にしないでください。いまは、ゼイvlrスさんの方が大事です」
「左様で…では、周波動波での交信は相手側にも筒抜けになると推定いたします。極秘の情報のやり取りは行わない方がよろしいかと」
「どこ触ってんだよ、このクソ豚。小せーんだからそこの隙間から出れんだろうが」
「誰がポークビッツだッポ。傷ついたッポ。責任を取っておれと…痛ててててッポ」
「頭、握りつぶしてもいいかな? こいつ、ちょうどいい大きさだし」
「やめるッポ。そこを触るのならこっちを……」
「イマーク、ジャガーの音量を下げてくれるかな?」
最初からそうやっていればよかった
「ふ、ふふふふふふふふふふ」
ほら、笑われたじゃないか
「聖下」
「ああすいません。不謹慎でしたね、続けてください、ふ、ふふ、ふふふふふ」
笑い上戸かな? 確か…昔の諺? ではそんな風ないい方だった
「ランダムでパスコードを変更するのは?」
「触んなっていってるだろうが、あんた、イルファに抱きつけよ」
「お送りになられる最初のパスコードを取得されましたなら、以降のランダム性も効果が無くなりますれば」
そうか、確かにそうだな
「それにその送信で02がダメになる…いや上位個体としてそれを拒否できるか。ただ、02は情報統制に対しては脆弱だ。そのまま受け入れてしまう可能性がある」
「こっちに触ってもいいんだッポ? それなら……」
さっきの通信からイルファさんが感染状態ではないことが分かった…?
「最初にワルグに斬りかかったのはイルファさんだったような……」
「そうでしたね、あれは面白い立ち回りでした」
「聖下」
イゼさんが苦い顔をする。表情も声の感情も変えられるんだな
「あ、こいつ、握りつぶすと柔らかくていい感じだ。捩じり撒いていい?」
「02は近接戦闘に特化している。どうしてもその傾向が主体となる」
つまり戦闘をするときは無鉄砲に突っ込んでいく、と
楯をワゴンの方に向けて展開している04さんを見る。さっきまで透き通っていた楯が今は不可視状態になって、視界を遮っている。ジャガーのフロント部分の形状に沿って広げてられている。空間制御と質量制御の同時使用…なるほど、これなら物質状態でないから、振動感知でこっちの会話が筒抜けになることもない。これを維持するには、結構な出力リアクターがいる。それで大型なのか
「04さんも上位個体ですよね? では…さっきの03さんというのは?」
「やめるんだッポ。そんなことをされると…ちぎれてしまうッポ」
「敬称はいらない。我々は知的交渉可能体に対しては破壊行動を選択されない限り、適正的に従下するようにできている」
つまり生命類種には本来なら攻撃をする主体性を持たないと
「03は…いま動作不能という側面から考えて、強制的にインナープラグされたのだろう。蹴り飛ばした時の衝撃でそれが外れて、それが自己防衛スタックの発動条件となって、機能を停止させた。そう考えるのが妥当だ」
つまり無理に動作させられたために自己サスペンデッドを選択したと
「ぎゃはははは、やめろ、背中を登るんじゃねー、くすぐってー……」
「イマーク、もう少し音量を下げてくれるかい?」
ジャガーにしがみついて耳を押し付けているイマークにそう頼む。それでも音が漏れ出てきている。お母さんまで…肩を震わせている
「エードン、kリアラが心配じゃないのかい? それに…なんか迫られているみたいなんだよ、雇い主としてそういったことにも配慮しないといけないじゃないか」
「わかったから…?」
そうかこの手があったか
「ジャガー経由の有線では?」
相手は情報統制型、情報処理と速度でこっちが勝てるかどうかは微妙、先手を取られると厄介だ。けどさすがにここの、この接続は持っていないはず。今のガレージに生きているラインはないけど、ジャガーのがある
ジャガーとAUgiSとを監視と制御のために繋いでおいて正解だった。何事も準備、予備をしておくものだ
「それならジャミングもサンプリングもされないと思いますが」
何をどうしたらいいのかまだわからないけど、これでkリアと連絡が取れる
「現状ではその策がもっとも有効であると推定いたします」
「イマーク、そこから出て、後ろの棚からケーブルハーネスを取ってきてくれないかい? そのコンソールの横にあるユニバーサルポートに突くタイプのやつで、スプライン、となってない奴がいい」
「え? 嫌だよ、僕じゃなくてもいいじゃないか」
目だけを見せてそういいかえす、確かにそうなんだけど
「いや、今、自由に動けるのはきみしかいない。これは重大任務だ。ガレージの未来と現状を打開するための鍵はきみだ、イマーク。僕たちはきみの行動に賭けるしかないんだ」
なんてったって一番近いのがきみだからね
「いやでも…危険じゃないのかい?」
「ワルグがなんとかしてくれている。それに04さんもいる。きみは助手席から出て、すぐ後ろの棚のところにあるケーブルを取って戻って、そこのコンソールに差し込んでくれればいいだけだ。簡単だろう?」
「君が、簡単だ、っていうのは難しいっていっているのとおんなじ意味だよ、エードン。学校のテストだってなんだっていつだってそうだった」
それはきみが勉強しなくてデートばっかりしてたからじゃないかな?
「聖下!」
イゼさんとゼイvlrスさんが驚いたようにお母さんを窘めた。お母さんは黒い遮蔽膜を解除してイマークに向き合う
「頼みます、これはそなたにしか頼めません。ロッkアを助けてやってくれませんか?」
「わかりました、聖下、このイマークめにお任せください」
そうお母さんに懇願されて…なんだい? その返事の仕方は? イマークが勢いよくドアを開けて、出ていった。お母さんがジャガーの音量をまた、少しだけ上げた
そうして…イマークはケーブルを間違えることなく、手に取るとマシンに帰り
「これだろ? 任せてくれ」
コンソールに入れてこっちに寄越した
ビッ キラン
だからその親指を立ててニヤってするのはなんなんだい?
まあいい、これで……
「このラインをどのようにするのですか? 11に渡せばいいのですか?」
「ええ…いえ、それではゼイvlrスさんの負担が大きくなって……」
「構いません、思うに…交信を経由させるだけでございますれば、負担は皆無でございます。それに…AUgiSさまの状態も気になりますゆえ、ここはわたくしにお任せくださいませんか」
「しかし……」
「良い、11、おやりなさい。17、サポートを、04、命を懸けて二人を守りなさい」
「ご威光のままに」
三人が揃ってそう返す。04さんも大丈夫、感染はない。これでなんとか……
「06 姿体 我願了丁・・・出現 於 要請 立ヰ習了・・・保護 要求」
06?
そんなことを05がいいだした
さあ これで助けるための手段ができました




