CMR #02 ジャガー Eタイプ #25
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ゼイvlrスさんの回復は順調。供給も安定している、組成で問題は起こってない…衣装も身体の素子で行っているから、余分な素子構築が必要になっている。順調、それほど再成製に時間はかからない
なら次の工程を設定、想定しておく
マシンの状況は…貫通孔が二、いや三か、あれだけ射撃音があったのにこれだけとは不思議だ。反対側にも…ない。これなら簡単に直せる。擦れた跡、ぶつかったような痕も同様…コーティングが弱い。やはり、古いタイプのコーティングは反発力が弱くて、マシンを十全に守れない。新しいものにしておくべきだった。傷のほとんどはマシン前面、フロントボディに集中している。後方ボディには…ない、素晴らしい。フロントガラスにもない。ガラスは全部新しいコーティングと投影フィルムだ、それで傷らしい傷がなかったのかもしれない
「ええ、そうです。車、というのはそういう風に運転するです」
「わかりました…わたくしでもできそうですね」
「ええ、特にこのジャガーは安全装置をいくつも搭載していますから、どなたでも安心して運転ができますよ」
なんの話をしているんだい? ふたりして……
内部の、居住空間の確認をしたいんだけど、イマークが実践形式で操作説明をしている。お母さんが乗り気だ、運転したいんだろう、食いついている。ここから見えるシートには…なし、ドアの内側にも…特に……
「なんだい? エードン。お客様の前で、そんな失礼じゃないか」
覗きこんでいたらそんな風にイマークにいわれた
「ああ…いいえ、すこし確認したいことがあったので…失礼いたしました」
「いいえ、構いません」
ない。ゲルがきちんと能力を発揮している。ジェネレーターも大丈夫、正常に動いている。サイドガラスの上下、ソフトトップのモーターのテストは後。フロント内部…エアシュラウドとポイント・ブリズサーズ、屈間移動用の空間制御発生装置…前面投射装置。開けないと確認できないけど…フロントグリルは破損していない。ウィンカー、トップライトにも損害なし、当たった形跡もない。タイヤも大丈夫
思っているよりも被害が少ない。wrgが守ってくれたからだけど…このジャガーはなにかあるんだろうか?
以前の事故の話では、損傷はほぼフロントのみ。一番がフロントボディ。サブフレームの曲がりぐらいから見てもスピードは出てた。それなのに事故の衝撃が後ろにまで伝わってない。質量慣性の法則によって圧力がかかったはずなのに、トランクルーム、ドアが歪んでいない。きれいなまま…ボディが無くなっていたから確認のしようがないけど…今回も前にしか被害がない
これはあれかな? どこかで聞いた話だ
幸運を運ぶマシン
いくつかのマシンには奇妙な逸話が付帯する。その中で、所持しているだけで幸運が訪れて、幸せになる…というおとぎ話をもつマシンがある。もともと移動用のマシンの本質は、運搬。重い荷物をいくつも…ではなくて、幸運を運んできたってまったくの間違いじゃない。現に…今のところ誰も怪我ひとつ負っていない
まあ…AUgiSは怒るかも知れないな。ガレージはアウギスの身体と見てもいい…それがひどい状態。修繕するにも…賠償はそこの三人組にするしかないだろう。マシンの修理費のいくつかも…ああ、保険にはまだ入れてない、本当に…大損害だ
コパイロット、システムエンドも大丈夫、正常に機能している。ダッシュボード内の確認も後…だけど何もなさそうだ。ドア内に入れ込んだ気体供給用のスプラインと装置だけが心配か。あとは…下部の検査も後回しだ
空間維持を使用している今でも修繕はできる。ただ空間膨張の圧力差の影響で、傷ついた部分の表面がへこむ可能性ある。正確にするにも比率補正をした方がいい…ガレージの装置がダメ、イーゼルは使っている。どれも後回しだ。だけどこれだけなんだから幸運だと思わないと
「それみろ、このカルVイシューュイ。お前はいっつもどっかバrゲhフュyアbrテ。だから女にモテなくて反動でそんなんになってんだろーが、このダルdyーア」
「ガガガガーーーンンン…オレよりモテなくてペheボなやつに、ペheボペheボいわれたッポ。もう立ち直れないッポ」
紐で繋がれた子豚たちは、足を延ばして互いを罵り合う。口悪く…いくつかはたぶん、母星語でいいあう。ただ、いうだけいうと満足したのか、今度は互いに力なくガクン、という感じにうなだれた。それをやや小型のもう一人のイゼさんの仲間が無感動な目で、拘束している
周りが穏やか…さっきまでの騒動が嘘のよう。火が消えたからか消火隊も、確認に来るはずの役所も来ていない…? こういった時には一番に来て、引っかき回して、余計なことをして行くのに。その三人組も捕まえてしかるべきところに連れてって貰いたい。ワルグだけがまだ、周囲を警戒している
「何かあるのかい? wrg」
「いや…ただ、違和感が、ある」
違和感? というよりなんだろう? この静寂で平穏な場は? こっちの方がなんとなく気になる
「AUgiS、なにか異変は?」
▽▲ N 倒壊確率 変動なし▲▽
いやそうじゃなくて…指示が悪かったか。でもこういった場合、何を聞けばいいんだろう?
「特に何もないね、最初だけだったな」
「そうだねー、こう、バンっ、って出て、バーッ、ってなってくれると面白かったんだけど」
マシンからやや離れた位置で、それでもイルファさんはワルグの方を見てそういう。kリアラは安心したように、でもモニタから目を離さずに首をかしげる
「まあ…問題がないのが一番だからな、楽できるし、平穏がいい」
平穏がいい? kリアラが? なんだってそんな騒動大好きじゃなくなったんだ?
やっぱり何かおかしい
「ま、あたしたちがゆーしゅーだってことだな」
「まあ…それは確かにそうだな」
互いに顔を見合わせてそんな風に笑いあうkリアラとイルファさん。本当に仲良くなるのが早い。ロッkアはイゼさんになにか指示をしてて…お母さんとイマークがいつの間にか、位置を交換して、イマークに操縦を教わっている。運転席でステアリングを握る
「ではこの運転は11や17にすぐに覚えさせることができるのですね」
「ええ、操作法を導入すればすぐにでも。そのためのプログラミング構築も今回の修繕に含ませていただきます。すぐにご習得なされることでしょう」
「ありがとう。わたくしが運転できるようになるのもそなたのおかげです」
「ああ、もったいなきお言葉です。自動車の運転は、わたしが出向いてでもお教えいたします。もちろん、料金はいただきません。いいえ、わたしが運転手になり、聖下の送り迎えをいたしましょう」
「それは頼もしいですね。しかしガレージの運営に精進なさい。ここをこのままにしておくのはいけません」
「はい、その通りです。聖下・ティティス」
ほんとうになんの交渉をしてるんだい? イマーク。いまはそんなのを進めるタイミングじゃないだろう?
04といわれた男性体がマシンのドアの前で直立不動の姿勢で立っている。大柄だからやや邪魔…お母さんとイゼさんのサポートをしている…この人もボット、全員、そうなのかな? 見回す……
「…なあんていうと思ったかってッポ。全員、やられてしまえばいいッポっ!」
子豚がそんな風に威勢よくいって、両足を器用に靴裏を…踵? を、パンパンという風に合わせた
「さあ、驚くがいいッポ。華麗なる脱出の時間だッポ」
自慢げに小さな胸を張る
が…そんなことさえものんびり、といった感じで、ふーん、という風に見ている。さっきまでの緊迫感がまるでない。誰も、何も聞いていない。おかしい
「何も起こらねーじゃねえかっ、一番下っ! 期待させんじゃねー」
確かに…何も起こらない
「おかしいッポ。信号が伝わっていないッポ? 誰が邪魔してるッポ?」
信号? 邪魔?
kリアラと顔を見合わせる。知らない、という風に小さく首を振る
こういった小さい類種は威勢だけはいい。それが特徴だとはいえ…誰もその話を気に止めないのは変だ
「……そうか、イェハブ。統制を解除、通信規制をオフに」
そうイゼさんが誰かに通信する。そういえばさっきお母さんと一緒に来たもう一人の姿が見えないような……
「N 該隷 打消 上位個体命令 遂行」
キャンセル? なにが……
ガンッ パシュ ザーーーーーー
金属が切り裂かれる音に続いて、何かの制御が途切れる音が続いた。機能が不能になったときにわざわざ、発生させるようになっている雑音。子豚たちを捕まえてたイゼさんの仲間の一人がその制御を離して…イゼさんに掴みかかった
「03!」
目の前に来た03といわれる個体をイゼさんが足で蹴って吹き飛ばす。03はかろうじて残っていた作業台へと突っ込んで、それを横転させた。拘束から解除されていた、子豚と口悪いネズミが目を点にして、自分たちの頭の上を通っていったそれに首をすくめる。目の前に半透明な楯が現れた。マシンの横に立っていた大男がそれを出現させてマシンを…お母さんを守るように警戒態勢を取る
「チャーンスッ」「あ、アニキっ」「待ってッポ」
そのタイミングで子豚とネズミがてんで違う方向へと逃げ出した
「逃がすっ!」
ワルグが子豚の方を捕まえよう…と動こうとした瞬間、誰かが目の前を横切った。珍しくワルグが躊躇した、一瞬だけ、遅れた
「何をする、貴様! 離せ」
「殿下!」
「動禁 要求 動確時 殺実」
ロッkアが腕を掴まれて拘束されていた。ふたりから引き離される。wrgが直立不動の姿勢でそれを見送る
「05!」
ドォンッ
直後、なにかがガレージに落ちてきた。かろうじて生きていたガレージの空間制御がそれに持ち堪えることができずに、消滅して天部が崩壊していく。天板が次々に落ちて瓦礫が降ってくる
「なっ」
「kリアっ」
瓦礫の中、イルファさんがkリアラを抱きかかえて、ガレージの端の崩れていない方へと飛んでいった。04といわれた男性体が出現させた楯を真上に向けて、さらに領域を広げて、車内にいる二人を覆った。その二つの歪極が、頭の上で瓦礫をその淵に沿って落下させていく
ガレージの天井が崩落した。その向こう、煙の中にふたりが消えていった
塵と埃がガレージ内を舞う。マシンの周りだけは何ともない…煙さえも入ってこない。逆に維持の淵に沿って煙が舞い上がって、入口への視界以外が遮られた
「バグズ 非厄 排命優実 優実? 優順 優項 優実 優順・・・・・・」
入口を押し潰して、ワゴン? のような四角い黒いマシンが着地していた。曲がって脆くなっていた柱、折れたシャッターがそれに押し潰されている。そしてその間まで、瓦礫もホコリも何もない空間ができていた。ワルグがここまで落下してくる瓦礫を消し去ってくれたらしい。煙る《けぶる》砂ぼこりがその何もない空間に、逆に流れこんで渦を巻く
「命ずる、主人である我れを離せ。これは上位隷令である」
「命令 N 最上位隷令 N 隷令 O 上位隷令 N 上位隷令 O 命令 N 最上位命令 N? 補足 N 捕縛? 補体 不足? 拝命 O 優実 優順 項選 選項・・・・・」
「命令を拒否? き……」
首筋に赤い刃先を押し付けられ、ロッカaが口をつぐんだ。黒々としたマシンの前にロッkアとやや小さい…ボットが立っていた。さっき、イゼさんが05といっていたオートマタ…ただ、挙動がおかしい
「殿下」
「……………ロッkア」
「05、殿下を離せ。それは我らの隷令にはない」
イゼさんが冷静な冷淡な声で諭す
「N 上位隷令 N 上位個体命令 N 上位隷令 N 上位個体命令 N 上位・・・・・」
05はマシンの前で…さっきの大男の拘束具を使用して、ロッkアを拘束している、右手でバンドを、左手で赤い刃先を出現させて。形成がイゼさんたちと大分違う、知的交渉可能体のものじゃない。立方体をいくつも内側へと重ねたような顔のない頭部。V字の鎖骨部分のない体、腰には水平回転するパワーユニットプラグイン。情報統制特化型のオートマタ?
「N 上位隷令 に に に ににににににに・・・・・ 言抑 解除 主語 選択 帝国語 選択N 組入 推奨 多語動禁」
「!」
ワルグがその瞬間を見逃さずに、動こうとしたのを05は抑制した。ロッkアを縛るバンドがさらに伸びて…たぶん、制御できていない。首を絞めつけはじめる。息はできているみたいだ、大丈夫。だけど苦しそうに歯を食いしばる
「!?」
「動禁 制御 N 相殺」
ワルグが大きな動きも何もなく何かした。指先だけで…でもそれは相手に届く前に、聴覚音も視覚光も何もなく打ち消された。相殺した際の僅かな衝撃とイオン臭。質量子操作を打ち消した? あの体のどこにそんな装置が? 後ろのマシンか
予測演算がずいぶんと速いと思っていたけど…後ろのワゴンタイプのマシンも支配下にあるみたいだ。道理でワルグに付いてこれている。質量子崩壊は同等の質量子の局所発生で打ち消すことができる
「05、殿下を離せ。これは隷令だ」
「N 上位個体による…隷令は 上位個体により隷令を・・・上位個体による 隷令は 上位個体により隷令・・・・・」
イゼさんがそういうと05はまた、同じ動作を繰り返した。そのたびに行動が止まる。ワルグがその隙に動こうとすると、そのたびに再認知が発動して、静止させる。その間を行ったり来たりをして、05の挙動は一致しない。この症状は前にも見たことがある
これは…ウイルスだ
あれ? おかしいな? 順調に伸びてるぞ? すいません もう少しかかりそうです




