CMR #02 ジャガー Eタイプ #22
---アンネセサリー------------
「きゅぽゅううううううぅ」
「え? なんだい? これ…」
ワルグが持ってきたのは、頭…肩の上に乗っけたさっきの女性体……乗っかった? 片手に大男の半身…胸の位置が大きく開いているユニット上部。そして、もう一方に小さな…子豚?
「そいつがゴアhズ…ファキー・pガhワーだ。そっちに入っていたやつだ」
そう声が聞こえたほうを見ると先ほどの男性体がゼイvlrスさんを抱き起していた。顔を覆っていたプロテクターが取れている。このふたり…よく似てる。親戚か何か…エクセルギー供給? そうか、この方もボットか
ただ…供給するエクセルギーが足りていない。ゼイvlrスさんの崩壊が止まっていない。これだけでは完全に修復とまではいかない
「パワーテッドデバイサー? ですか?」
「そうだ…そいつらはミニポークデルタリンだからな」
操縦者が装着し、各装置の制御補助を装着者の挙動と思考で行うことができるようにする、昔でいうところのパワードスーツ。装着型簡易環境外適用接続補助機はデザインとユニットをユニバーサルにすることでいくつもの装置にそのまま搭乗できる。ただ……
「この大きさじゃジャガーには無理」
小さな身体を持つ類種は通常のマシンを操縦できない。適当? な大きさのものを付けて補う必要がある。それでもこのタイプは大きい。小さい方は自分を大きく見せたがる、何かで読んだ。マシンで小型類種用のものはあまり需要がなくて、どこも作りたがらない。採算が合わないから敬遠される。自分たちで作ってくれればいいんだけど、こういった類種の方々はどうも…無頓着で横柄、高飛車なところがあって、自分たちではやらりたがらない。だからといってガレージを壊していい理由にはならないけど
「うーん」
上半身にはジェネレーターがそっくり、無くなっていた。爆発も何も起こさずに、機構だけを消滅させている。これじゃあ…待てよ?
構造が複雑だけど…いくつかは液化素子でできている。これを使えば崩壊は止められる。それには……
「それはどうしたんだい? ワルグ?」
頭の上で女性がなまめかしく動く
「ねえ~、ね? もう一回、さっきのあれ、ねえ…、やって」
後ろにハートが付いているような感じに、器用にくるくる、回る
「なんでか、こう、なった」
感情は読めない…顔に出ないワルグが珍しく顔に、困った、って出している。外骨格で表情が動かない類種はそれ以外の方法で情動を伝えるけど、ワルグはその中でも出ない方になる。こんなワルグは珍しい
「大変かもしれないけど…そっちの装置をこっちへ持ってくれるかい? あと…知的補助装置、通常起動してるかい? 空間制御でガレージの維持を、それからkリアラを呼んでくれるかい? こっちはもう大丈夫だって伝えてくれ」
▽▲ O 一部機能に不具合があります 起動に失敗しました 再起動、反応なし 早急に接続を確認してください ▲▽
「なんだって…」
なんでかいい方が気に入ったらしいAUgiSがそういう。まあ…ガレージの状況を見るとそうなるだろう。取り付けたばかりの装置や接続もダメか。柱、天井、壁、倒壊しはじめたらみんな危ない。マシンも下敷きになる、それだけはなんとかしないと…そうか
「ゼイvlrスさんは動けますか? 動かせますか?」
こっちの人もかなり損耗している。損傷しているようには見えないんだけど…出力が足りてない
「大丈夫だ、これぐらいなら全損はしない。だが…組成するための材量資が足りていない」
つまりエクセルギーは大丈夫だけど、身体を直すための材料が足りていない、と
「あちらの方々は?」
ガレージの外では同じようなプロテクターを着たふたりが、空間制御で消火をしている。器用に立体に空間歪局を形成させて、周囲隔離している。真空状態にしての消火、あれならすぐに消える。大丈夫だろう
その向こう、周りの店舗や住居から火災を心配した集団ができていた。あとで謝罪に行かないと
「アレらはタイプが違う。定着しない可能性がある」
用いている材料の品質が違う、と
「ワア! ガレージが! なんだってこんなっ…エードン? 大丈夫なのかい?」
「ゼイvlrス!」
「なにがどうなってんだよ、いきなりこんな…扉がめちゃくちゃじゃないか、またワルグがやったな」
イマークたちがバタバタバタと、通路から顔を見せる。それぞれがそれぞれの感想と着眼点でものをいう。ほんと、うちのスタッフはこんなバラバラなのによくできている
「イマーク、ジャガーのジェネレーターを起動させてくれ。kリアラ、液化素子を補充したいんだけど、中に何が入ってるかわかんないんだ。いくつかの除去と判別をするアルゴリズムを組んでくれ。ワルグ、バイパス用のスプラインを持ってきてくれ、それと…」
「ラインコンバーター、プラグコンプレッサー、イーゼルシュラウド」
「うん、頼むよ」
こういうときのワルグは理解が速くて助かる
「液体素子? また面倒なものを…何が入ってるかわかんないのか? じゃあ、なにを判別するかわかんないじゃないか」
「それを判断するための分別機構を組んでくれっていってるんだよ」
「ああ? 判別をするための分別? ………、なにが入ってるかわかんねーから、それを取り除くための判別プログラムを組めってことか? 取り除くのがわかってないと、対象が絞れなくて大雑把になっちまうけどいいのか?」
「ああ、それでいい。まだ時間はあると思うけど、そんなにはないと思って…ええと……武器とか刃とか見えたんですが、ライフルとかナパームとか…掃射装備は出したりしてました?」
聞いてみる、こういったのは目撃者に聞くのが一番だ
「いいや、そういった物はなかった」
「あった」
「イルファ?」
女性体がワルグにくっついたまま、顔と体をこっちに向き直していった。いつまでついているつもりなんだろう? あまりワルグの邪魔はしてほしくないんだけど
「輪っか、たぶんあれはプラズマカノンの応用。だからプラズマの発生装置が入ってる。あと、それがあるならイオニックブラストもできる。小型にできるのならブラスターライフル、実弾系は使ってなかったから、ない」
なるほど、こういったことは女性体の方がよく見ているのかもしれない。すごい観察力だ、感心する
「じゃ、そのあたりの除去を頼むよ」
「わかった…あんた、すこし手伝って。どういったものだったか教えて」
「えー? こっから離れるのイヤ」
器用に丸まってくっつく。それじゃあワルグの視界が遮られて見えないんじゃ……
「手伝ってくれたら後でじゃれあわせてやっから」
そういうと女性体…イルファは跳ね上がって喜んだ
「ほんと? 手伝う、手伝う。えっとねえ…」
飛び降りてふたりしてモニタと睨めっこしだす。そんなふうに僕を見てもなにもできないよ? ワルグ
「ゼイvlrスは助かるのか?」
推移を見守っていたロッkァが心配そうに尋ねてくる。何もできないのがよほど悔しいのか、顔に汚れがついていても気づいてない
「大丈夫です。いまは再組成させるためのエクセルギーと材料が足りていないので、それを補えば元に戻ります」
問題は…液体素子が暴れないかどうかだけ
「そうか…安心せい、ゼイvlrスさん、我らがそちを直してやる」
「殿下」
ふたりして同時にいう。さすがにこのタイミングでは、ロックaもこだわらない
「マシンって…ジャガーのかい? まだ出来上がってないんだろう? 大丈夫なのかい?」
マシンまで恐る恐る向かったイマークが内部を覗きこみながらいう
「大丈夫だ、出来上がってはいる。ジェットがついてないだけで、あとは問題な…待った。一応ジェネレーターが損傷していないか確認してみてくれるかい? コンソールはいつものように出るから、ジェネレーターの自動検査と、あとは目視でも確認してくれ。ゲルがついているから大丈夫だと思うけど、念のために頼むよ」
「わかった、で、聞くけど起動させてどうするんだい? 危ないからここから出しておくのかい?」
運転する真似をして入口を眺めるイマークだけど、シャッターが半分、垂れ下がったままだ。あそこを通すのはさすがに操縦の上手いイマークでも無理だろう。取り除かないと
「いいや違う、空間制御でマシンの周りを保護してくれ。ガレージから落下したものが当たらないように。それと、ゼイvlrスさんの身体組成のエネルギーと材量資が足りないから、その提供をマシン経由で行おうと思う。出力的にも構造的にもそれが一番いい…というか、今現在、ジャガー以外に適当なものがない」
「ガレージのがあるんじゃないのかい?」
辺りを見回してもそういう。この状況で?
▽▲ N いくつかの損傷により十分に行えていません 入口、横、支柱が崩落した場合、ガレージ天部が落下する確率 66%です ▲▽
「そうなんだって」
そんなにあったのか……
「ワオ」
頭を抱えたがる気持ちはわかるけど、今は抑えてくれよ、イマーク
接続を繋げる順序が大切だ。スプラインを大男のプラグへ、コンバーターをその間に入れ込んで、ジャガーで吸い上げる。コンバーターとkリアラの制御で内部の危ないものを除去して、コンプレッサーで圧力をかける。ここで飛んだらアウト。kリアラとイルファさんには頑張ってもらわないと
ガレージの装置が生きていれば形状のトレースができたけどそれは無理だ。イーゼルシュラウドで形状補助と圧着を行う。ただ…これだと材量資の供給スピードが間に合わないから、もうひとつのジェネレーターでそれを補う。もうひとりの方には無理をさせるけど、経由と形相構築は同じボットで同士でなら相性がいい…はず。あとは…ゼイvlrスさんが液化素子の制御ができる力が残っているかどうかだけ。それと…除去できなかった変なものが突発的に発動して周囲に被害をばら撒かないか、含まれていないかどうかだけ
kリアラが珍しく遅れている。対象がわからないからヘタに組むと有効な素子まで除去してしまう。どこまでやっていいのか迷っている。テストしている時間はさすがにないし……
「お待ちください、エードンさま」
ゆっくり崩壊が始まっていても声色は全く変わってないゼイvlrスさんがいう
「再組成を行う必要はございません。それではマシンにも被害が及びます故、わたくしのことは構わずにお逃げください」
そうはいっても…そうか
「最終手段としてワルグに天井部分を吹き飛ばしてもらうという手もありますので心配はいりません。ゼイvlrスさんは安心して直ってください」
「ニャ!」
これでガレージはダメになるだろうけど、安全は確保できる
「待った、エードム。さすがにそれは被害が大きすぎる、認められない。再建にいくらかかると思ってるんだい? そうでなくても赤字だっていうのに……」
イマークが真っ青になってジャガーから顔を見せる。さすがにマシンの下の部分に被害はないと思うよ?
「まあそうかもしれないけど…ガレージに来たっていうのに壊れて帰った、では申し訳ないよ。ここの評判にも関わるからね? 手は抜けない」
ジャガー以外の修繕品ができたと思えばいいだけさ
「しかし…」
「直りなさい。1011、これは命令です」
そんな凛とした女性の声がガレージに響いた。え? 今度は誰だい?
※アンネセサリー 不必要な 蛇足という意味です




