CMR #02 ジャガー Eタイプ #18
-ホイールを取り付けます。この間に、ヘッドライト、リアライト、ウィンカーを製作し、エキゾーストパイプのバイパス、ラジエーターを設定します。ドア、フロントガラスは破損、損傷を避けるため、いくつかの装置を取り付けたあとに回します
タイヤが全部、取り付けられると途端にマシンは自動車になります。ただ、ボディもなく、剥き出しのままなので…全体像はいまだ想像の向こう側です
あの状態からは想像もできないな。我れが見たときはどうしていいかわからなかったほどだ
ええ、さすがに以前の状態では誰でもが呆然とします。マシンがジャガーだとわからなかったら誰も手をつけなかったでしょう
-それぐらいフロントボディの損失は痛手です
そうか…それがわかったゼイvlrスを褒めてやらねばならんな
もったいなきお言葉でございます
ええ…では、いくつか放置になっていた部分を組み立てていきます
まかせるが良い
細かい作業ですよ? 目に見えて達成感があるものではありません。あらゆる作業にはこういった目に見えない、裏方的でしかし大事な基礎となる部分があります。そこを疎かにすると…すべて台無しになるほどです。一般的に…地味で、誰も実際には褒めてくれない時もあります。それが大半です。それでも行いますか?
もちろんだ、このマシンが出来上がるのならなんら苦労は無い
-苦労することも厭わない。ここに来たときとは見違えるようです
では…ケーブルハーネスの交換と設置、リアジェネレーターの取り付け、フロントパネル、ダッシュボードの仕上げと調整、内部へのゲルの貼りつけ、内装の取り付け、ドア、フロントガラスの設置にソフトトップの動作テスト、気体供給器の調整とテスト、タイヤの動作テストはジェネレーターの起動テストのあとになりますから…そこは後回しにして、ライトの取り付け、テスト。そこまでをスリットシステムが到着する前までに終わらせます。大変な作業ですが…大丈夫ですか?
そ…そんなにまだあるのか? 大丈夫だ、任せるが良い
ええ…では……これらの設置はものの三秒で終わります
………? そうなのか?
ええ、こういったものは、ダイジェスト、という切り貼りされた映像で済ませるのが一般的なようです。そのタイミングは、3秒、と決まっています。3秒とは…・・・というタイミングと同じカウントで、ほぼすべての最小時間単位でおなじ長さになります
-過去の映像資料もこのタイミングで、次へと行くことになっています。それを使わない手はありません
そうか…我れの勇姿が・・・で終わってしまうのは、残念だ
その点は大丈夫です。ロッkァの行動を中心に編集しますから
-主に知的補助助言AIが、ですが……
それは…がんばらねばならんな
ええ、では、はじめましょうか……
-こんな風にやる気を引き起こさせるのも、リーダーの役割です
----------------------
-実際にはこの時間は、三秒、ではありません。実行動時間は半転と数単位ほど。取り付けることができるものは付け、作成できるものは成型して、それから半日あまりが経ちました。スリットスラスターの到着は早くて翌周期…明日です。マシンはほぼ完成状態。あとはスラスターを取り付け、いくつかのテストと修正、仕上げを行うだけです
---インターミッション----------
ゼイvlrスさん? どうしたんですか?
-ガレージにゼイvlrスさんがいました。明かりもつけずによく…とは思ったものの、彼が執事機能搭載型オートマタであることを思い出して、そんなもの必要ないことに気がついて、声をかけようかどうしようか迷った挙句、声をかけなければいけないような気がして、明かりをつけました
ロッkァの側にいなくてもいいんですか?
-どうも執事オートマタはその主人の傍らから離れることに制限がかけられているようです。ゼイvlrスさんもロッkアからは一定距離、離れられません。一部、条件付きで制限が解除となりますが、それも自らの意思で選択できるのではなく、状況と状態によって、ということみたいです。時間が経ち、ガレージがその一部に入るようになったため、こうしてある程度、自由に行動することができるようになっている、ということです。ロッkアが邪険にしていないから成立しているようなもので、そうでなかったら険悪というか騒動の元にしかならないような気がします
申し訳ございません、EoDMさま、マシンを確認しておくようにと、殿下からお託されておりますれば、現状の把握をいたしていたところでございます
そうですか…それは邪魔をしてすいません。もう完成なので…ロックaも楽しみなんでしょうね
ええ、それはわたくしも同じです。ここまで以前と同じに戻るとは思いもいたりませんでした
? マシンはそれほど酷い状態ではありませんでした。見える部分の損傷が酷かっただけで…データから修繕はいつでもできたと思いますよ
なるほど…やはり見るべき人に見ていただくと、見解が異なるものでございますね
その見るべき人、に私が入っているかどうかは分かりませんが。私は修繕屋です。マシンを修繕するのが仕事です。いくつかのテラン産のマシンを修繕したことあって、構造やシステムがわかっている、ということに過ぎません
-慣れている、ということだけです
…それよりロッカaは大丈夫ですか? 結構無理をして作業していたように見えたので…食事はきちんとできましたか? 休憩は? レストルームで十分に休めますか?
-体力が自身が行いたい行動に追いついていません。こればかりはすぐに、とは行きません。あとやはりkリアラに食事を任せるのはいただけません。ゲストルームやレストルーム、フードスペースなどの拡張や設置が急務です
ご配慮、感謝いたします。平素と異なる環境と作業ですれば…しかし、この体験は殿下によい見識と視野をお与えになることでしょう。主人に代わり感辞と賛辞をお申し上げます
………なにもしてませんがね
-こき使っただけです
いいえ、それでおよろしいのだとご推察いたします。殿下には異なる環境でのご成長が必要な時期でございますれば……
必要な時期? ですか?
-確かにこの年頃の子供にはそういったものが必要になると思いますが……
申し訳ございません。その質問に対する返答を行う権限を持ち合わせておりません。お察知いただきたく存じます
……わかりました
-本当に面白いAIボットです。普通の知的交渉体っぽい、こんな情緒的なやり取りは見たことがありません
-どうなっているのか分解、解析したくなります
すこし、お話をお聞きくださりますでしょうか?
え? ええ…くださりますでしょうか? ああ、聞いてくださいってことですね。かまいませんよ
おありがとうございます
-そういってゼイvlrスさんは押し黙りました。本当に珍しいボットです。どういったAI構造をしているのでしょうか? どう蓄積されたらこんな風に成長するんでしょう? 気になります
「……わたくしはこちらの席に座っておりました。スピードが出ている、とは思いましたが、そのような感覚はまだ成立されておらず、その走行でも安全である、と短結してしまいました」
? ええと?
-なんの話しでしょう? 右側、助手席のドアを愛おしそうにしています
「前聖皇さまは冒険、危険、異性体、そしてギャンブル…賭け事がお好きな方でございました。掛け金はいつもご自身のお命。おおよそ、剣聖皇王とお呼ばれするお方とは思えない、奔放で豪胆なお方でございました」
-へえ…そんな肩書きが……ロッkァが使いたがる理由もこのへんにあるような気がします
「こちらのジャガーを修繕なさったのも同じ理由です。誰もが所持していないものを所持し、自慢したがる。それはわたくしたちにはわからない感覚でございます。その一端でも…そう思い、修理をお手伝いをいたしました。まさか…どう操作してどうするのか? わからないとは思いもいたりませんで」
………
-確かにテラン産のマシンの操作は特殊です。こんな平面移動だけを考えたマシンはそんなにありません。補助装置もありません
「そのために惑星上にサーキットなるものまでご用意し、それに飽き足らず近くに観光周星までお造りになられて、颯爽と操縦し…まさか、ブレーキという装置が壊れるとは、思いもいたりませんでした」
-それは……
強度不足? ですか? そんな簡単に発生するとは思いませんが……
-そのような肩書きを持っているのなら起こるかもしれません。もしかしたら……
「わたくしたちではわかりかねます。情報が提供されておりませんゆえ。しかし、マシンは横滑りをし、そのまま正面の植生物に衝突いたしました…まさか、聖皇さまがお逃げになられていないとは思いもせず。わたくしだけが先に逃げ延びてしまうことになるとは思いもいたらずに……」
……、そんなお方なら簡単に逃げれると思いますが……
「ええ、わたくしたちもそう短結いたしました。しかし、そうなさらずに…不思議に思われますか? 主人を差し置いて自身を優先する。通常なら採用しない行為です。そう隷令されていたとしても、解除し、お救いしなければならなかったのに……」
それで聖皇さまは……
-亡くなられた……
「ピンピンしておいででした。わたくしたちの心配など、どこ吹く風…これもテランの諺でございますね。しかし、前聖皇さまが愛されたマシンは故障、破損、破壊。このような無残な状態のまま、決定によって、蔵の奥に留め置かれることになりました。どれほど聖皇さまが残念がったか…心残りだったか……思い至ることもできません」
それでロッカァに教えてここまで持ってきた、ということですか……
「ご正解にございます。殿下は前聖皇さまをそれはそれはご尊敬しておいででしたので……?」
! また明かりが? kリアラがまたなにか……
「kリアラさまはお帰りになられ……エードンさま!」
え?




