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Classic Machine Re:Makers  作者: 桜葱詩生
CMR #02 ジャガー Eタイプ シリーズ3

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CMR #02 ジャガー Eタイプ #10


---??1?---------------


「いまの見たか? おい」


「見ましたぜ、アニキ、ありゃあ絶対、お宝だ」


「おうよ、見張ってた甲斐があるってもんだ……なあに、先にこっちがやっちまえばどこに何をいおうとかまやしねえ。俺たちのモンってんなもんさ」


「さすがアニキ、冴えてるぅー」


「まあな…しっかし、こんな辺境にあんなバケモンみたいなやつがいるとは思いもしなかったなあ……ありゃあ相当だ。あんなでっけえもん軽々と片手で持ち歩けるとか…相談しといてよかったぜ」


「そうっすね…でもアイツら来ねーすね?」


「ああ…すぐに来るっていってやがったのによ…なにぐずぐずしてんだか。ハンターってのは時間厳守がモットーだってのに……」


「そうっすね、あ、アニキ、おれちょっとトイレっす」


「またかよ…あんまバレんなよ? 怪しまれっとことだからな……」


彼らは知らない。この周辺にある店舗、ガレージ、拠点というものは、持ってきたものが金になったらすぐに帰り、目当てのものが手に入ってもすぐに帰る。それが基本だということに。いつまでもこんなとこでぐずぐずなんてしていない。そんなことしてたらそれこそ金にならない。だから、こんなふうに一か所にずっと止まって動きもせず、なにも降ろさず、買わない、取引しない、そんなののほうがここでは目立つ、ということに


あるガレージの裏口が見える、やや離れた位置に円筒形の物体が止まっている。垂直にではない。曲面を地面につけるように、それでも転がっていかずに器用に止まったその機体の後部タラップからは、時折、茶と黒と緑(ミリタリー)の全身タイツを着た如何にもなヤツが出入りする。そいつはのんきに周囲にある食堂や店舗を冷やかしては、なにがご機嫌なのか、なにやら音程のずれた鼻歌をふんふんふんふん、吹きならしながらここへと帰ってくる…鼻らしきなんてものは、その(かお)にまったくないにも関わらず


そんなやつが自分たちの周りを平然と歩いていたらここら辺の連中は訝る、疑う。見たことない奴がこっちの仲間かどうか、探る。どんなところにでも、訳ありの店舗やガレージはある。真っ当なものだけが立ち並び、真っ当な商売ばかりが、商売ではない。どうやってカモろうか…そんなふうに店員は愛想よく笑う。どうやらそいつはダイナー『wエィブ(ウエィブ) (アンド) ウェhw(ウェィハー)』の接客店員(ウェイトレス)に夢中らしく、この店に足しげく通っては、聞いてもいない自慢話をしていく


「へえー、遺蒐物ハンターってそんなすごいんだ~。憧れちゃう」


「へへっ、まあな…最近登録されて話題になった奴だってオレの手柄ってわけさ」


「えー、すごーい、じゃあ…ここにもなにかお宝があるの?」


「もちろ…おおっと、そいつぁあナイショだ。他のやつに聞かれて横取りでもされたら大変だからな」


「ええ~? お・し・え・て・よ・~。ねえ……」


「いや~。今夜、ベッドの中でならいいぜ?」


「ごめーん、今夜はオールなの。ならずっと店にいられる? ちょうど飲み物が空いたし…なにか頼む?」


「わりぃ、これでも俺っちは忙しくてね…じゃあな、また来るよ」


「はぁ~い、またねー」



ゴキブリとハンターはどこにでも沸く



そんな太古からの教えにもあるように、いつの時代にも気づけないやつはいる。それを気づかせないようにうまく乗せることができるものもいる。トイレを借りに来て、一番やっすい飲み物を頼んだだけの客にこれだけ愛嬌を振りまくことのできるウェイトレスも相当なものである



---??2?---------------


「ございませんでした」


そう従者は(こうべ)を垂れた


青、白、金、銀、赤、黄、緑。様々な色をふんだんに使った豪奢な部屋はその使用目的とはまるで反対の調度品で飾り立てられていた。優美と贅沢と華美。おおよそ、その名称にあっていない部屋の主は、そう聞いて、少しだけ短く押し黙り、同じような間合いでため息をついた


「そうですか…それで行先は?」


Voucal(ヴォーカル)によれば、2526490クォフォトニースクウェア離れた辺境の……」


「距離はよい」


「はい…2353R/ΔvCs^10^14i、辺境星にて、大陸位置……」


「もうよい……」


どうしてこう融通が利かないのか。同じタイプだというのに個性があって、同時に応対や返答が違う。それが面白いといって数を揃えたのだけれど…揃えたのはここの主ではあるが彼女ではないのだが……あまりにも実直過ぎて、面白みがない。改良と改善、そんなのをいくつも試したが、一向に面白くならない。役に立たないわけではない。ただつまらない。能力がどれほど高くても、応用と適用範囲が狭く、できなければ、どんなものも役には立たない。その役に立たないものを役立つ位置に置き、有用に使うのもまた、彼女が置かれた立場であるのだけど


「あの子は…お爺さまのことを英雄視していましたからね……」


窓の外に並ぶ二つの星を、困惑した顔をわざと作りながら、眺めながら、そう思いを馳せながら、彼女の内心は実に楽しげだった。いままで反抗的な態度というか、これといった己の意思を、わがままを、実の子だというのに、彼女は聞いたことがなかった。上の子はそうだったのに、なぜか、下の子は聞き訳が良く、素直で、不満がなく、簡単だった。それはある意味、有益であるように見えて、その実、彼女たちの状況と権威に関しては、危うい側面を併せ持つ


「分かり次第、迎えを。騒ぎ立てないように、穏便に、露呈しないように。いいですね?」


それではいけない


他者の考えに寄り添う必要はある。しかし、迎合する必要はない。聞いてやる必要はあっても、聞き入れる必要はない


「すでに出立の準備はできております」


それが…、出立?


違和感ある言葉に、思わず振り返る。部屋に似合っている動きにくそうなスカートが翻る。このふんわりと広がってストン、というふうに落ち着くのが大好きだ。そう思いを巡らし、合理性ばかりを追求するのはやはり問題がある、とも再認識する。主人の思惑と心情に思い至らない。どうしてここまで個性が出るのか…そこは楽しいが、全体集合は個々の個性を反映しない。反対に個々の個性を全体に反映させたら、それはそれで統一されてしまい、面白くなくなる、本当にどうしたらいいものか……


こういったモノでなければ周囲に置いておけない、とはいえ、これでは主人らしい主人を演じられない。すごくの昔の逸話にある、領主と奴隷。囚われた奴隷はわたしたちの方か……


「ウィrセトをつけなさい」


「ご威光のままに」


国庫からものを持ち出された上に、管轄外にまで運ばれる。セキュリティやら警備やら、どこから見ても、どこかの厄介なところから、改善と文句と、そんなのが山ほど来るほどの事柄。完全犯罪…露呈しなければ。それはここに抜け道が存在していることの証左になってしまう。それは困る。忘れ去っていた品であるとはいえ、提示されるまで、教えられるまで、まさか紙に伝言が残されているということに気づくまで、誰も分からなかった、という事実は変わらない。紙に伝言…なんて古典的な。それだけでわくわくが止まらない


にやけそうな顔を必死に押し隠す


どんなことをしているのか? すぐに飛んで行って確かめたい…衝動を抑える。心を抑えることにいつの間にか慣れてしまった…そんなことを感じつつ


いまは動けない


二連星を見上げる。片方の色はここから見ても鈍い。その色は今の現状を表しているように見える


動かせない


自分の置かれているこの身と同じ


動かない


ほんの少しの小さいことを、大きく、自分の利にしたがるようなものがいるうちは




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