表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒューマンコード  作者: エイジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/30

第8章 揺らぐ正義

廃墟でレイナから受け取ったデバイス──

そこに眠っていた“旧AI研究施設”の座標データが、ジェネシスにとって確かな突破口となった。


「ここが“ベータライン”らしいな。《ノア》の中枢へつながる地下ルートってとこか」


ルキの一言が、室内の空気を引き締めた。

モニターには、衛星写真と断片的な内部構造図が表示されていた。


「監視は緩そうだな。中に入れれば──《ノア》のログイン端末や通信ノードに触れる可能性があるね」

ナッシュがどこか楽しげに口角を上げる。


「だな。でも、前回の作戦みたいに通信機器を設置できるかどうか、情報がないから……俺たちで現地を確認するしかなさそうだ」

ルキは眉をしかめながら答えた。


レオンは深く頷き、静かに言葉を紡ぐ。


「今回の潜入メンバーは、俺、セラ、ルキ、ナッシュ──あとはカイ。

それぞれ、準備を進めておいてくれ。作戦は、二日後に決行する」


「了解。俺もとうとう潜入か……ミッション・インポッシブルを全話見返しとかなきゃな」

ルキがニヤリと笑い、室内にわずかな緩和が生まれた。

その空気を破るように、カイが真剣な声で応える。


「絶対、成功させましょう!」


その瞳に、迷いはなかった。



旧AI研究施設・地下層。潜入は想定以上に順調だった。

廃墟と化した地上部から、コードで封印された隠し通路を経由し、古びた研究施設へとたどり着いたジェネシスの一行は、慎重に奥へと進んでいく。

かつては書類が並んでいたと思われる棚には何も残っておらず、書類の切れ端や埃をかぶった参考書がいくつか転がっている。


「ここだな」

先頭を歩いていたレオンが、皆を振り返った。


研究施設の一番奥の研究室。

レイナから入手した情報に従い、扉の右にあるパネルにパスワードを入力すると、静かに扉が開いた。


中は廊下の雰囲気とは一変し、今でも使用されているように整っていた。

複数のパソコンが並び、壁際には大型のスクリーン、奥にはマシン室と思われるスペース。空調の音が一定に響いていた。


「じゃあ、さっそく始めるか!」

ルキが腕まくりをして端末が並ぶデスクへ向かう。ナッシュがその後ろに続いた。


「かなり新しい端末だな……『ARCADIA』の連中が、ここから《ノア》を操作してるってのも、信ぴょう性が出てきたな」

ルキが端末を起動しながらつぶやいた。


端末には難なくログインできた。

ルキとナッシュが調査を開始してから、30分ほど経ったころ──


「……これだ。『ARCADIA』のログが残ってる。やっぱり、ここから《ノア》へアクセスしてるらしいぜ」

記録を確認しながら、ルキが声を殺して喜ぶ。


さらに調査を進めると、外部からのアクセス履歴が残されていることが判明した。


「ルキ……このIP、やばいぞ。『ARCADIA』の拠点……いや、本丸かもしれねぇ」


「こりゃ……かなりの収穫だな。『ARCADIA』の宝石箱、開けてもうたわ!って感じか。

もう少し深く掘れるな……ナッシュ、行けるか?」


「もち! 任せろ。あと三分……いや、二分くれれば、通信ログも抜き出せそうだ」


──だが、その“二分”は許されなかった。


鋭い警告音が、静寂を引き裂いた。


《侵入者検知。排除モードに移行します》


「っ、バレたか……!」


全員が即座に撤退体勢に入る。

レオンとセラは銃を構えて入り口の扉へ、カイはあらかじめ避難ルートとして設定していた裏手の扉へすばやく移動した。

ルキとナッシュは、急ぎ情報の抜き取りを続けていた。


しばらくすると、廊下の空調口から複数の監視ドローンが飛び出してきた。


「避けろ!」


レオンの怒声と同時に、レーザーが壁を焼く。

ドローンは機敏に旋回しながら、無慈悲に攻撃を加えてくる。


応戦しながら撃墜していくが、間もなく重厚な足音が響きはじめた。


「早いな……処理班が来るぞ……!」


厚い扉が爆音とともに吹き飛び、黒い戦闘装備の処理班が廊下に姿を現す。

即座に銃撃戦が始まった。


「俺とセラで前線を押さえる! カイ、ルキとナッシュを保護しろ!

作業終わり次第、後方出口から退避!」

レオンの指示に、セラは処理班に照準を合わせ、カイはルキとナッシュの元へ駆けつける。


薄暗い廊下に、ドローンの羽音と銃声が響く。


「ルキ! あとどれくらいかかる!?」

レオンが叫んだ。


「もう終わる! ……よっしゃ、完了だ! カイ! とっとと退散しよう」

ルキが身をかがめながら怒鳴る。


「はい、行きましょう! 付いてきてください!」

カイが先導し、ルキとナッシュが続いて裏口から廊下に滑り出した。


レオンが目配せで合図を送り、セラも三人の後を追って走り出す。

レオンは煙幕弾を廊下に投げ、視界を遮ったまま銃撃戦を続けつつ、皆の後を追った。



裏口側には処理班は待機していなかった。

カイたちは息を切らしながらひたすら走る。


ようやく出口が見えてきて、わずかに安堵したその時──

側方の廊下から飛び掛かってきた処理班が、カイに体当たりして吹き飛ばした。


「カイ! 大丈夫か!?」

ルキが叫ぶ。


「ぐっ……大丈夫です! 先に逃げてください!」

カイはもがきながら応えた。


ルキは頷き、ナッシュとともに再び走り出した。


処理班はルキ達を追いかけようとしたが、カイは後ろから羽交い締めにし、投げ飛ばす。

そこに後ろから走ってきたセラが現れ、別の処理班を撃つ。


「少しは成長したな!私はルキたちの援護に回る!」

そう言い残し、二人の後を追った。


「ありがとうございます! ……お願いします!」

カイは処理班を抑え込みながら答えた。


その時──カイの背後に、処理班とは異なる装甲をまとった人物が現れる。アヤ・レイン。


「……あなた、カイ・シエルドね?」


彼女は腕を掴み、拘束具を装着した。


カイは振り返り、叫ぶ。


「だったら……どうしたっていうんだ! 離せ!

──こんなところで捕まるわけにはいかない!《ノア》から家族を取り戻すまでは!」


その言葉に、アヤは動きを止めた。


脳裏をよぎる違和感。

拘束命令に感じた異常、ルツから聞かされた《ノア》の矛盾、そして何より──目の前の青年の瞳。


(この子……本当に、危険分子なの?)


わずかに手が緩む。その隙を逃さず、カイはアヤと処理班を突き飛ばす。


背後から追い付いたレオンが処理班を撃ち倒し、カイを引き寄せる。


「カイ、今だ! 逃げるぞ!」


カイは、アヤを振り返る。


「……どうして君たちは《ノア》に従ってるんだ……!?

このままじゃ、誰も止められなくなる」


その言葉を残し、闇へと消えていった。


アヤは──その背を追えなかった。

正義とは何か。従うべきものは何か。

その全てが、いま揺らいでいた。



二時間後。政府庁舎・深夜の会議室。


ゼクス少佐が、冷徹に告げる。


「今回の侵入は極めて重大だ。”ジェネシス”なる組織は、明確に国家の秩序を脅かした。

この集団を、“危険分子”として正式に指名手配とする」


誰もがうなずいた──ただ一人、アヤを除いて。


誰にも気づかれず、アヤの手はわずかに震えていた。

9/13は予定があるため、今週は早めに投稿します

次回は9/20の予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ