第9話 探索者になるには?⑥ 休憩中の一コマ
「いい質問ですね。結論から言うと、一般の人は簡単には魔法は使えません。理由は・・・」
なぜかと言うと、呪文と言うのは『魔法を発動させるためののキーワード』では無く、『魔法を発動させるためのイメージと集中力』だからだ。要は呪文を唱えてる間にイメージを固め、集中するための文言である。ファンタジー物によくある、魔力を持った魔法文字を組み合わせてあーだこーだやって魔法を使う、と言う訳では無い。
言ってしまえば呪文の内容は何でもいいのだ。きっちりイメージさえ出来れば。しかし、それだけでは魔力が足りず魔法は発動しないので、それを補うための媒体が必要になってくる。
その媒体となるのが各属性の魔石なのだ。この魔石を武具やアクセサリーに付けて、初めて各属性魔法が使える様なる。そしてこの各属性魔石や魔石がついている武具は免許所持者や許可を得た人しか購入する事ができない。なので一般人が魔法を使うのは簡単では無い。
また、魔力を感じたり操作できる様になると、自力で魔力を集める事が可能になるので、詠唱は不要になる。と言うことだった。しかしそうなると別の問題が発生するのだが・・・。
「ちなみに、媒体となるアクセサリーはこちらで準備してあるので、後で受け取って下さい」
はい、問題が解決しました。そんな物持ってなかったし、教材にも入ってなかったし。どうするんだろう?って思ってたら学校で準備してたのか。アレかな。無闇矢鱈に魔法を使われない様にかな。まあ、そうなんだろうな。
「さて、ちょうど時間なので、ここで休憩に入ります。10分後に魔法実習館に集合してください」
「終わった終わったっと。シュウ、休憩室行こうぜ」
「あ、ちょっと待って。今片付けるから」
先生が退室すると同時に話しかけてくる奴がいる。高校の時の友人で名前は「神鳥俊希」と言う。ここで偶然再会したのだ。神鳥の家はこことは違う地域で、近くにダンジョン学校があった筈なんだが、何故かここの学校に入学していた。どうやって通ってるのかと思って聞いてみたら、ウィークリーマンションを借りて、ロードバイクで通っていると言う。この間見せてみたったら、100万円近くするロードバイクだった。相変わらず金持ちだな。正直、羨ましい。
取り敢えず6人で休憩室に移動する・・・6人?何で?人数が多いぞ?
「神鳥俊希さんって言うんだ。アタシは堀田紫乃って言うの。騎士を目指してるんだ。よろしくね」
「初めまして〜、折井智子です〜。魔法使いでーす」
「どもども、索敵&斥候担当の宮藤亜香里って言います。よろしくです」
「・・小野寺りんです。槍使いです・・。よろしくです・・」
「おっと、名前しか言ってなかったね。俺は小刀の二刀流なんだ。シュウ共々よろしくな」
さすが中も外もイケメンで笑顔が眩しい神鳥。三人と早くも仲良くなりやがった。
が、小野寺さんはちょっと警戒気味だな。まあ仕方ないかな。神鳥に少し事情を話しておくか。誤解されたら小野寺さんが可哀想だしな。
こうして俺は神鳥に事情を説明してから、六人で雑談しながら休憩室に向かった。
side-女子四人組
「ねーねー、アキくん、ちょっと・・・あれ?いない?」
授業が終わって声をかけようと思ったら、アキくんがいない。周りを見渡してみるとドアに向かって歩いて行くのが見えた。そしてその隣には友人らしき男の人も。誰だろう?結構格好いい人だけど。そう思った瞬間、胸の辺りがズキリと痛苦しくなる。まだショックを少し引き摺っているのかも知れない。
「武内くんの隣の人、友人かな。凄いイケメンだね。りん、大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがとう亜香里」
亜香里が声を掛けて来た。正直、少し引き摺っていたから助かった。そしていつもの四人が集まる。
「武内くん、行っちゃうよー。追いかけないとー」
「うん、そうね。隣の男の人はこっちが相手するから。りんは武内くんの相手をしていていいよ」
「うん、わかった」
私たち四人は何食わぬ顔で、アキくん達と一緒に教室を出て、休憩室に向かう。アキくん達が気付き、“いつの間に?何でいるの?”って顔をしている。
「あれ?君たちって確か授業前にシュウとわちゃわちゃしてた人達だったっけ。ここでシュウと知り合ったのかな。初めまして、シュウの友人で神鳥俊希って言うんだ。よろしくね」
アキくんの友人の方から挨拶してきた。紫乃達が挨拶を返している。私も挨拶を返そうと思い挨拶をするが、警戒心が先立ってしまい、うまく返せなかった。事情を知ってるアキくん達が、少し心配そうな顔をしている。ダメだな、しっかりしないと。
見ると、アキくんが神鳥さんに何か耳打ちをしていた。何を話してるか、予想がついた。神鳥さんの顔が怒りに変わっていったからだ。そしてこっちに顔を向けると、優しい顔になっている。やっぱりアキくんが事情を説明したっぽい。そのまま話をしながらみんなで休憩室に向かった。
▼ ▽ ▽ ▼
休憩室に着き、各々コーヒーや紅茶などを飲みながら、みんなで雑談の続きをしていた。
「俺とシュウはさ、高校一年の時からの友達でね、ずっと一緒のクラスだったから、ほとんど一緒に遊んでたなー」
「アタシ達もそれ。高校からの友達なのよね」
「でも俺たちはなー、卒業したら別々になってねー。俺は地元に残ったんだけど、シュウがさ、東京に進学したんだよ。だから会うのは久しぶりなのよ」
「アキくん東京にいるの?何で言ってくれなかったの?あ、そうか。恥ずかしくて言えなかったんだね。もう、照れ屋さんなんだからー」
「あんな状況でそんな事言えるわけないだろうが!」(ゴスっ!)
「イタ〜、また手刀落としたー」
こんなやり取りをしていたら、他の四人が何か言いたそうにこっちを見ている。そして、
「お前ら、ずいぶん仲良いな。付き合って三年って言われても違和感ないぞ」
「うんうん。りん、本当に知り合ったばかり?」
「一体アタシ達は何を見せられてるんだか」
「「ち、違う違う。付き合ってなんかいません」」
「なーんか、怪しいなー」
俺と小野寺さんは、お互い顔を見合わせてから、必死に否定しまくった。しかし、お互い顔が赤くなっている。これじゃ説得力が無さすぎるわー。小野寺さんなんかはテーブルに突っ伏しているし。なんか、ゴメン。
休憩時間がもう直ぐ終わるので、俺たち六人は席を立ち、魔法実習館へ向かった。実習館はここの建物の隣にあるので、直ぐに辿り着ける。到着するまでの間も話は続いていて、事情を聞いていた神鳥は、小野寺さんを心配していたが、さっきの様子を見て少し安心したらしい。堀田さん達に出来る限り協力するとも約束していた。さすが完璧なイケメン。フォローも忘れない。こりゃ、小野寺さん達四人も惚れちゃうかもな。




