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配信始めました 〜ダンジョン編〜  作者: ばっつ
第三章 夏休み
88/128

第88話 葉山ダンジョンコラボ⑨ 魔獣達の里親

 智子が使役したいと言って来た。


「わたし、クマのキャラクター好きなんだよねー」


 そんな事も言って来た。確かに、智子の部屋には、夢の国のクマや、A国元大統領の名前のクマのぬいぐるみが置いてあったな。確かにあのクマ達はかわいい。

 しかし、目の前のクマはガチのリアルな熊だ。しかも羆だ。正直、可愛いものではない。どちらかと言えば、恐怖の対象だ。でもまあ、大人しくしてれば、かわいい・・かな?


「この熊さんが良いと思ったら、良いんじゃない? 熊さんに聞いてみたら?」

「うん、聞いてみる。ねーねー、熊さん。わたしがあなたを使役してもいいかな?」


 ガウ?・・・・・


 熊が智子を見回している。これは多分、智子の力量を確認してるか、智子の人柄を確認してるか、どちらかだろうな。

 暫く智子を見ていた熊が、正面に来て頭を下げていた。智子に挨拶してるような感じだ。


「ああ、なるほどねー。魂が繋がるってこんな感じなんだー。うんうん。サレスに感じてるのと同じだねー。これから宜しくね、熊さん」


 ガウ。


 智子が、クマの頭に抱きついて頭を撫でていた。熊も目を細めて気持ちよさそうにしている。そして恒例の雪による人化の法を、もしくは変化の法を伝授する。

 雪によると、この熊は条件は整ってるものの、経験が足りず、知能も少し足りないとの事で、変化の法を伝授していた。でも、足りないと言っても、そこはリーダー種。小学四年生位の知能はある。しかし、人化の法を使うには、最低でも小学高学年並みの知能が必要らしい。

 因みにサレスは中一、雪が中二くらいの知能がある。見た目は小学生だけど。そして、パルディとシロは小学五年生位で、深月は小学六年生位の知能だ。経験も積んでるし、いつでも人化の法が使える状態だ。

 ところで、ここで言う経験は人間と接した経験の事を言う。雪は俺の実家で十ヶ月近く暮らしていたし、聖夏は元ボスだ。数え切れないほどの探索者を相手にして来ている。桃花は言わずもがな。


「名前はどうしようかな。ねー、アキくん。この子って男の子かな、女の子かな」

「ちょっと待って。なー、お前って男の子と女の子どっちなの?・・・ふんふん・・・うん、分かった。男の子だって。・・・え? あ、そうなんだ。じゃあ、りんは?・・・あー、なるほどねー。りんに聞いてみるよ」

《相変わらず、当たり前の様に魔獣と会話するよな、まおーは。で? 熊はなんて言ってたの?》

「えっとね、使役された理由なんだけど、人柄だって。優しそうで、芯がしっかりしてそうで、間違ったことはしなさそうだって」

《高評価じゃん。じゃあ、りんちゃんは?》

「りんはライバルだって。だから、誰かに使役されるのは良いんだけど、ライバルに使役されるのはなー、って事なんだって」

《なるほどね。わかる気がする》

「んで、熊に、りんに聞いて欲しいって言われたんだけど、またりんと手合わせしたいんだって。どう?」

「良いよ。楽しかったし。宜しくね、熊さん」


 ガウガウ(うん。僕も宜しくね)


 仲間になった熊は、流石に大き過ぎるので小さくなって貰った。大体、ぬいぐるみ位の大きさだ。それを智子が肩車している。


『可愛い〜』


 女性陣の感想だ。うちのメンバーだけでなく、DSLのメンバーの感想でもある。あの大きさだと恐怖だが、このくらいの大きさになると、恐怖心は無くなり、可愛さが際立ってくる様だ。

 因みに、熊に聞いたら体色も変えられるとの事。なのでパンダのイメージを送って変えて貰ったら、見事なパンダになった。これには、女性陣が卒倒してしまった。成生先生に至っては「尊い・・」と言いながら、鼻血を出していた。しかし、智子だけは倒れずに踏ん張っている。熊を乗せているので、倒れてはいけないと思った様だ。そして、コメントはと言うと、


《羆がパンダになった!!》

《しかも、大きさがぬいぐるみの大きさ!》

《・・・欲しい・・》

《でも、手に入れるには、あの化け物熊に勝つ必要があるという》

《無理ゲーすぎる!》


 そして、五合目の探索も終わり、六合目に入った。と言っても、何かが変わるわけでもなし。少しづつ頂上に近づいていると言うだけだ。出て来る魔獣も変わりは無く、結果・・・。 

《今までこのCHでいろんな蹂躙を見て来たけど・・・》

《このタイプは初めてだな・・・》

《熊さんが吠えた瞬間、魔獣がひれ伏すなんて、初めて見た》

《今までは涙目で逃げる魔獣を、モン娘達が笑いながら蹂躙してたからなー》

《そうだったねー。まさに『血塗れの天使』だったねー》

《何その天使、怖ぁ・・・》


 魔獣が出てくると、パンダの格好をした熊が一鳴き。すると、魔獣が恐怖から平伏してくる。そして魔獣達の道が出来上がるので、俺たちはそこを通るだけで済む。 そして、そんなこんなで、六合目はあっという間に踏破してしまった。警戒心ゼロ。なんなら談笑しながらの探索だった。まさに冗談抜きでピクニックだった。

 ところで、智子の口数が少ない。しかも何か考えてる様子だ。どうしたのかなと思い、声を掛けようとすると、「名前・・・名前・・・」と呟いていた。使役した熊の名前で悩んでいた様だ。ふーむ、名前かぁ。名付けって難しいよなぁ。変な名前つけたくないし・・うーん・・。


《智子ちゃん、何か悩み事?》

「熊の名前で悩んでるみたいですよ」

《名付けは大変だからねぇ》

《まおー、アドバイスはないの?》

「うーん、サレスを参考にとしか思いつかないなぁ。もしくは朋香を参考に、かな」

《見守り隊に質問。サレスちゃんは分かるけど、朋香ちゃんって誰?》

《まおーと智子ちゃんの子供。もう年長組なんよ(全て夢の中の話です)》

《ちなみに、りんちゃんとの間には双子の冬樹くんと美涼ちゃん。桜ちゃんには皐月くん、椿さんには牡丹ちゃんがいるぞ。(全て夢の中の話です)》

《ハーレムですか・・・》


 夢の中な話だけど、みんな可愛いんだよなぁ。冬樹達が言うには、みんなと結婚すれば産まれるのは確定って言ってたし、あんな可愛い子達と会えるのは楽しみ以外ないな。そして、桃花と聖夏は確定してないらしい。どっちに転ぶのやら。


「朋香・・モカ・・智・・トミー・・うーん・・」


 悩んでるな。俺も経験あるけど、ほんと名付けって大変なんだよなぁ。俺も考えるか。見るとりんも考えてる。


『う〜ん・・・・』

《三人して同じ格好で悩んでるなんて、仲がいいな、おい》

《まおーと嫁達だからな》

「サレス・・ソーサレス・・ソーサラー・・マジシャン・・ウィザード・・ウィズ・・ウィズ! ウィズにしよう!」

《お、決まったか》

《ウィズ。良いんじゃないか、智子ちゃんらしくて》

「君の名前は『ウィズ』だよ。宜しくね、ウィズ」

「がう(うん。よろしくね)」


 名前が『ウィズ』に決まった。うん、コメントでも言ってるけど、魔法使いの智子らしくて良いんじゃないかな。ウィザードからだもんな。うんうん。良い名前だ。

 お、ウィズが変異種に変わったぞ。これでさらに強くなったな。りんも今度は勝てるか分からなくなったぞ。まあ、ライバルだし、勝ったり負けたりで切磋琢磨していけば良いな。


「名前が決まったようね。なんか、子供の名前を考えてるみたいで、微笑ましかったな。それにしても、攻略中に名前を考えるなんて、すごいわね」

「アキさん達と攻略すると、なんか色々バグってくるな」

「談笑しながら歩いてるだけだもんねぇ。挙句、警戒心ゼロで名前を考えてるし」

「普通は、常に警戒しながら進むんですけどね」

「それにしても、魔獣を使役するのっていいわねぇ。私も使役したいな」


 そんな声が聞こえて来た。これはもしかしたら聖夏の眷属の里親が見つかるか? 丁度四人いるし、今回の探索の短い間だけど、為人は把握したつもりだ。この人達なら、安心して任せられると思うし、ちょっと聞いてみようかな。


「メスライオンの魔獣なら、譲渡できると思いますけど。どうします?」

「それってもしかして」

「ええ。聖夏の眷属です。実は里親を探してたんですよ。聖夏さえ良ければ、ですか」

「私は、いい人が貰ってくれれば本望ですし、あなた達なら安心して任せられると思ってます」

『よろしくお願いします』


 みんなに譲り渡す前に、魔獣を使役するの注意事項を伝えた。

 一つ、契約陣は使わないので、その分、信頼関係を育む。

 一つ、相手も感情があるので、奴隷の様には扱わない。

 一つ、使役していても、信頼関係が崩れれば、一方的に契約解除される。


 などだ。これは結構重要な事で、魔獣を使役するにあたり、最低でも覚えておかなくてはならない事だ。

 最初は四人とも驚いていた。聞くところによると、過去のテイマーは隷属陣を使って契約していたらしい。それは奴隷契約に等しいので、本当の意味での使役にはならない。無理矢理に言い聞かせてる様な状態なので、魔獣の能力を十分に引き出せていない。と教えると、成生先生は少し思うところがあった様で、


「テイマーが使えない職業って言われてる理由って、そう言う事なのかもね」


 と言っていた。

 隷属陣を使っても信頼関係を築ければ問題ないのだが、どうしても、人間は魔獣を道具として扱う事が多い様だ。事実、過去のテイマー達は隷属陣で契約後、ほとんど奴隷の様に扱っていたらしい。それでその挙句、契約解除されて逃げられるならまだしも、襲いかかってくる事もあったと言う。魔獣にも感情はある。人間と同じなのだ。だから奴隷の様に使われると、不満が溜まっていき、信頼関係も何も築けない。そして、不満だらけの魔獣が限界を越えると、契約解除して離れていくのも当然なのだ。


「まあ、桃花が言ってたんですけど、いわゆる事実婚みたいなものらしいです」


 俺がそう言うと、みんな納得がいった様で、首を大きく縦に振り「あー、なるほどね。確かに」と言っていた。


「よし、聖夏。頼む」

「うん。みんなおいで」


 聖夏が声をかけると、召喚陣が現れて、四頭のメスライオンが現れた。大人しいとは言え、ライオンだ。初めは四人とも少し怖がっていた。しかし、俺が「触っても大丈夫ですよ」と言って、四人に撫でて貰うと、徐々に慣れていったのか、恐怖心は無くなり思い切り撫でまくっていた。


「あ〜〜、可愛過ぎる〜。武内くん、こんなの反則だよ〜」

「本当ねぇ。明日からの授業に連れていこうかしら」

「アキさん、この子達って名前あるの?」

「名前はないんで、各々で付けてください」

「ところで、この子達って強いのかい?」

「そうですね・・・ふむ・・黒獅子ですね。それなりに強いし、名前を付ければ変異種になりますから、さらに強くなりますよ」

「そうか。七合目から魔獣も強くなるし、この子達にも戦ってもらおうかな。いいかな?」

「ガウ!(任せて!)」


 聖夏が泣いている。全ての眷属の里親が見つかって、嬉し泣きしていた。聞けば、雪の異空間はすごく居心地が良く、快適な空間らしい。しかし、それはそれとして、信頼できる人間と契約し、名前を付けて貰えたら、とも思っていたそうだ。それが叶ったのだ。聖夏にとっては嬉しい限りだろう。涙ながらに俺に向き直り、頭を下げた。


「兄さん、いや、主人殿。ありがとうございました。私の眷属が全員、信頼できる人に行く事が出来たのも、主人殿のお陰です。本当に・・グス・・ありがとうございました!」

「俺は何もしてないよ。聖夏の教えが良かったから、受け入れられたんだ。全てはお前と眷属の努力が実を結んだんだよ」

「うう・・に、兄さん! うわあぁぁ・・・」

「はは。お前は根が真面目だからな。肩の荷が降りて緊張の糸が緩んだんだな。落ち着くまで思う存分泣いていいぞ」


 聖夏に近づき、頭を撫でた。それで感極まったんだろう。泣きながら抱きついて来た。この子は真面目だからな。ずっと悩んでたもんな、眷属達の事を。それが一気に片付いたんだもんな。ほっとして緊張の糸も弛むだろう。思う存分泣けばいいさ。


《良かったなー。聖夏ちゃん》

《ずっと気にしてたもんね。眷属達の事を》

《DSLの皆さん、いい子達なんで、可愛がってくださね》

《それにしても、魔獣タラシの名は伊達じゃないな》

《ああ。知らない人が見たら、金髪美少女に泣き縋られてる、タラシにしか見えないぞ》

「どっちにしてもタラシかい!」

《そういう運命なのだよ、まおーは》

「大丈夫。私と智子は全部わかってるから」

「そうだよ、アキくん」

《あのー、あの人達、ダンジョンで何やってんですか?》

《アレはまおーのCHでよくやる、俺たちがまおーをいじって、マオーが凹む。それをりんちゃんと智子ちゃんが慰めてイチャイチャするという恒例行事なのだ。これを見るためのCHでもある》

《へ、変なCHなんですね・・・》


 変なCHですみません。でも別にバズろうとも思ってないんで、いつものスタイルは変えません。


 それは兎も角、DSLの七合目攻略が始まった。

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