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配信始めました 〜ダンジョン編〜  作者: ばっつ
第三章 夏休み
81/127

第81話 葉山ダンジョンコラボ② 厄介な人がいた!

 〜 一週間後 〜


「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

「おはよう。こちらこそ宜しくね」


 葉山ダンジョンの裾野入り口に着いた。すでに向こうは到着していて、準備をしている。流石に装備を家から着けて来る訳にはいかず、更衣室で着替えていた様だ。ちなみに、俺たちは家から着て来ている。一般の作業着の上に防具をつけて行くだけだからね。楽なもんっすよ。武装に関しては、二人とも使役している魔獣がいるので、擬似アイテムボックスが使える様になっている。しかも、サレスに至ってはかなり知能が高いらしく、人化の法が使える様になったとか。襲撃事件の時の戦闘で経験を積んだのが大きい。

 パルディやシロも襲撃事件で経験を積んだが、人化の法はまだ使えない。とは言っても、パルディもシロも人並みの知能は持っている。サレスが並外れてるだけだ。でも、青狼になれば使えるんだけどね。

 そんな訳で、武具は東京の家に置いてあり、必要に応じて持って来てもらってる様だ。


「三人ともすごく軽装だけど、武器とかはどこにあるの?」

「俺はメインの刀とサブの短刀だけなんで」

「私と智子は東京の家から持って来てもらうんです」

「は? 言ってる意味がよく分からないんだけど・・・」

「えっと、こういう事なんです。サレス武器一式持って来て」

「トレミー、お願い」

「持って来たよ、お姉ちゃん。はい、杖とライフル」

「キュ〜〜イ(持って来たよー)」

『ええええぇぇぇ!?!?!?』


 二人が声をかけると召喚陣が二つ現れて、人化したサレスとトレミーが其々武器を持って現れた。

 人化したサレスは、小学四年生くらいで黒髪ショートのウルフカットで顔立ちは智子に少し似ていた。一緒に住んでると家族に似てくるのかな?

 トレミーは言わずもがな。元々がリーダー種なので頭はいいが、まだ人並みとは言い切れない。それでも言葉は理解してるし、簡単な受け答えはできる。まあ、りんには聞き取れないらしいけど。


「お久しぶりです、アキ様」

「久しぶりだな、サレス。こないだの襲撃の時はみんなを守ってくれて、ありがとうな」

「いえいえー、大事な家族ですから、当然の事をしただけです」

「あのー、ちょっと聞いていい? その子って何者?」

「ああ。えっと、先生。去年の卒検で、俺たちが白狼を連れてダンジョンから出て来たのって覚えてます?」

「ええ、もちろん覚えてるわよ。学校始まって以来の事だったらしいからね」

「あの時の白狼のうちの一頭?、一人? ですよ。それが進化して人化の法を使える様になったんですよ」

「初めまして、黒狼のサレスです」

「なんて礼儀正しい・・・」


 先生のパーティの人達は、ほっこりした顔をしていた。が、同時に戸惑いの感情も出ていた。普通の探索者だったら、魔獣は討伐する対象だ。しかし、目の前にいる魔獣はどう見ても人間の女の子だ。いきなり魔獣と言われても戸惑うのも仕方が無い。なので、元の姿に戻ってもらった。当然、服を全部脱いで全裸になる必要があるので、智子とりんで見えない様にガードしていた。なんか、雪が初めて人化の法を使った時を思い出すな。あの時は、いきなり全裸の幼女が現れたもんだから、かなり焦った記憶がある。

 そうして、元の姿に戻ると、先生達は納得していた。黒狼と言っても、体毛が黒くなるわけでは無い。部分的に黒毛が生えるのだ。一番多いのは尻尾だ。そしてDウルフ、所謂灰狼から白狼になる時は全ての毛が白く、黄狼から銀狼になる時に銀毛になると、雪から聞いた。これは、灰から白、黄から銀になる時は種族的に大幅な能力アップがあるのだという。例えて言うならば、猫から虎やライオンに変化するような感じらしい。俺も聞いてびっくりしたよ。そう言う事なんだって。


「あと、襲撃って何? こないだのチェスク商会事件に関係あるの?」

「俺のCHの東京タワーダンジョン編って見ました?」

「もちろん」

「俺たちと戦闘してる時に、別動隊が仲間たちの家を襲撃したんですよ。人質を取るのために。何かあったらまずいと思って、以前に護衛としてみんなに白狼を譲渡してたんですよ。その白狼達が頑張ってくれたんで、襲撃が失敗に終わったんです」

「なんか・・・色々大変だったんだな・・・」


 勇者に同情されてしまった。別にもう気にしてないし。会社も無くなったし、ざまぁー、としか思ってない。

 順番が逆になってしまったが、改めて自己紹介をした。まず俺たちが名乗り、次に向こうが名乗った。


 クリム役の人が、工藤優さん、二十五歳

 カトレア役の人が、成生恭子さん 二十四歳

 ガーベラ役の人が、本栖芳美さん 二十二歳

 ウージー役の人が、本荘浩太さん 二十四歳

 セージュ役の人が、木の下悠里さん 二十歳


 だそうだ。それにしても、先生の名前、初めて知った。そういう名前だったんだ。コスプレ先生って呼んでたからなぁ。それとみんな同い年じゃ無いんだね。木の下さんに至っては、俺たちと同い年だ。

 それと工藤さん。顔立ちも中性的なのに、名前も中性的なんですね。さぞかしモテるんだろうな。と思ったが、分かってしまった。工藤さんと本栖さんが付き合っているという事を。しかも、割と本気の付き合いだ。それこそ結婚をも視野に入れてる感じだ。何故分かったかと言うと、魔力が絡み合ってるのだ。しかも、結構複雑に。俺と雪達みたいに、魂が魔力で繋がってる訳じゃ無いけど、もしかしたら、深い所まで絡んでるかも。そして他の三人はそれを生暖かい目で見ている様な気がした。

 しかし、このパーティ、別の問題も抱えてるな。本人達は気が付いてる人と、気が付いてない人が居るみたいだけど。こっちに飛び火しないといいな・・・。


「それじゃあ、軽く打ち合わせしとこうか」

「はい。あ、そういえば、こちらでも配信していいんですか?」

「ああ、大丈夫だよ。ゲストじゃなくてコラボだからね」

「分かりました」

「それじゃ、まずは・・・」


 大まかな流れが決まった。オープニングの後に一合目と二合目は俺たちが、三、四合目はDSLディサイプルストーリーラバーズが請け負い、あとは二合ずつ交代で探索して行くと言う流れだ。でも、流石にダンジョン。予定通りに行かない事は多々ある。なので、臨機応変に行こう、と言う流れになった。

 こんなの、打ち合わせしなくても、その場その場で決めてもいいんじゃ無いかなと思ったのは秘密だ。


(兄ちゃん、気を付けてね。なんかあの人から不穏な気配を感じるから)

(ああ、分かってる・・・って、桃花? どこに居るの?)

(家に居るけど。でもダンジョンの近くだったら、地脈を通じて、ある程度分かるから)

(そういえば、初めて会った時もそんなこと言ってたな。とにかく気を付けるよ)

(絶対だからね!)


 オープニングを撮るために、ダンジョンに入り少しひらけた場所に移動した。まずはDSLから始まる。俺たちは脇で待機だ。その間にこちらも配信の準備を始める。


「えーと、ドローンの設定は・・・・これで良いかな」

「ねーねー、アキ。なんか緊張してる?」

「え? あ、ああ。うん、緊張してる・・かな?」

「ふ〜〜〜ん・・・?」


 りんと智子がこっちを凝視して来る。なんか圧が凄いんですが。この目は何かを疑ってる目だ。俺が隠し事をしてると思われてるのか? まだ何も喋ってないだけだぞ? でも、遅かれ早かれ言わなくちゃいけない事だからな、今言っとくか。でも向こうに聞こえないようにしないと。


「初めてのコラボだからよ、緊張しったのよ。しかも去年習た先生だしよ、あと中級探索者だべ? 緊張もするったなー」


 言いながら、メモ用紙に書き込んで二人に見せた。


「ああ・・そう言う事なのね・・。本荘さんがねぇ」

「うん。実はよ、先生とコラボの日程のやり取りをしてる時に、内密に相談、って言うか注意を受けたんだよ。本荘さんがの事で。良い方向に向かえば良いけど、悪い方向に向かったら・・ねぇ。だから、ドローンの設定を自動防衛モードにしておいたの。対象はドローンを含めたウチのメンバー」


 そう、本荘さんは木の下さんの事が好きなのだ。しかも拗らせ系らしく。近寄る男を威嚇しているらしい。当の木の下さんは、本荘さんの気持ちには気付いているが、付き合う気はさらさら無いと言っていた。それどころか、鬱陶しく思ってる節がある様で、たまに冷たい視線を送っていた。しかし、そこは拗らせ系。それを照れ隠しと受け取ってる様なのだ。

 最初は、いい大人だし、まさかねぇ、と思っていたのだが、今日会ってそれが事実と判明した。俺に向ける視線に、たまに殺気が混じってるのだ。先生が言うには、そろそろパーティの限界が近いかもしれないらしい。

 では、何故こんな事態になったかと言うと、遡る事二ヶ月前。木の下さんがメンバー加入した時だ。実は木の下さんは二代目のセージュだ。初代は、関西に転勤という事で、メンバーを抜けざるを得なかった。そこでメンバー募集をかけた所、やって来たのが木の下さんだった。木の下さんは、元々このCHのファンで、メンバーの募集を見て、すぐに応募した。余程イメージにあったのか、すぐに合格。次回の配信から出演してもらったという。

 その頃から、本荘さんが変わって行ったらしい。具体的には、木の下さんを意識した発言が目立つ様になった。木の下さんも小中学生の初心じゃない。彼氏がいた事もあるし、人並みの経験もそれなりにはしている。先にも言った通り、本荘さんの事は気が付いていたし、木の下さんは本荘さんと付き合う気は、全く無い。このパーティ自体は好きだったので、崩壊させたく無いが故に、曖昧な返事をしていた。

 しかし、その態度が徐々に露骨になって行き、木の下さんの男友達にも威嚇する様になって行く。その所為で、友達が離れて行き、仲間内から孤立して行った。怒った木の下さんは流石に文句を言ったが、全く聞く耳を持たず。呆れ返った木の下さんは本荘さんを無視をし続け、その事を先生に相談していたという。


「そんな事があったんだねー」

「木の下さんも、可哀想だね」

「先生が言うには、その事があって、工藤さんと本栖さんとの三人で注意しに行ったらしいんだけどね、『プライベートの事に口出しすんじゃねぇ!』って逆ギレされて、殴り合いの喧嘩寸前まで行ったらしい。その時に、これはもう終わりだな、って感じたんだそうだ」

「じゃあ、このコラボって誰が提案したのー? 先生かと思ったけど、そうじゃ無いみたいだしー」

「木の下さんらしいよ。突然『この人達とコラボしたい!』って言って来て、あまりの剣幕に工藤さんが了承したんだって」

「なんで何だろうね?」

「さあ・・・?」


 そんな会話をしながら配信の準備をする。服装は家で着て来たので、あとは武具を装備するだけで済む。今回は特別に籠手ではなく手甲を準備した。探索者用の武具店を見ていたら、ちょうどいいやつを見つけた。籠手やガントレットだと、どうしても素手の時が戦い辛いので、何かないかなと探していたのだ。今日の実戦で使い勝手を確かめるつもりだ。使い勝手が良ければ、このまま使っていく。

 さて、準備を始めるかな。脛当てOK、手甲OK、胸部防具OK、鉢金OK、武器OK、体調OK、全て良し。


「みんな準備できた?」

『うん、OKだよ』

「よし、それじゃ・・あれ? 木の下さん?」

「それじゃ武内くん、今日の配信、いろいろ宜しくね」

「あ、ああ。こちらこそ宜しくお願いします・・・」

「おやおや〜? 早くもたらし込んだのかなぁ?」

「手の早い旦那様だ事」

「な! お、俺は何もしてないぞ!?」

『冗談だよー。冗談』


 準備も終わり、配信を始めようとした矢先、木の下さんがこっちに来て、挨拶をして行った。が、なぜに苗字呼びなのか。配信関係だったらみんな、アキかまおーと呼んでるんだけど、苗字呼びは今までいなかった。なので、二人からあらぬ誤解を受けてしまった。二人は冗談って言ってるが、あの目は半分疑ってる目だ。俺、何もしてないのに。

 しかし、自然に苗字呼びしてたな。配信や動画で言ってない事もないけど、みんなアキとか、まおーって呼んでるからな。知っていても、配信でしか俺を知らなかったら、苗字じゃなくて、アキと呼ぶんだと思うけど。それ以外での知り合いか? でも、会った事ないと思うんだけどな・・・! 

 殺気を感じてそちらを視ると、本荘さんがこっち、と言うより俺を睨んでいた。あー、相当拗らせてるな。他の男の人と話すのもダメなのか。厄介極まりないな。知らんぷりしとこう。時間もないし、配信の準備をしないと。

 

「ドローンの準備はさっき終わった。人の準備もOKっと。よし始めるか」

『了解』


 ドローンを撮影配信モードにして起動した。当然、自動防衛機能は維持したままだ。


 さあ、始めるか。

誤字脱字報告、ありがとうございます。

いつも助かってます。

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