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配信始めました 〜ダンジョン編〜  作者: ばっつ
第三章 夏休み
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第79話 一路山形へ

 夏休みになって、俺は新幹線で帰省していた。勿論、りんと智子と一緒に帰っている。二人は今年の夏休みも山形で過ごすのだ。

 ところで、山形新幹線つばさは、ミニ新幹線という規格になっている。何がミニなのかと言うと、車体が少し小さいのだ。普通の新幹線は、座席が三列と二列の五列が基本なのだが、ミニ新幹線は二列づつの四列なのだ。そして走る線路も違う。詳しい説明は割愛するが、簡単に言うと東京〜福島間は普通の新幹線の線路を走るのだが、福島〜新庄間はちょっと改良した在来線を走る。なので少し小さい新幹線となっている。しかし、それでも最高時速は、フル規格新幹線と変わらない。


「去年は気が付かなかったけど、座席が回転できて良かったねー」

「ねー。じゃ無かったら、誰かが一人だったよ」

「その時は俺が一人になるよ」

『それはダメ!』

「そ、そうっすか」


 新幹線の座席は回転してボックス席の様にできる。回転する理由は、進行方向に座席を向けるからだと思う、多分。終点で車内清掃後に一気に座席を回転して向きを変えていく光景は、見ていて気持ちがいい。つい心の中で、ご苦労様と言ってしまう。実際口に出すのは照れるから。


「ところで自校に行くのに合宿で無くて良かったの?」

「良いの良いの。合宿にしちゃったら、アキと遊べないでしょ」

「それとね、りんとも話したんだけど、山形で交付されるんなら、合宿でも良かったんだけど、結局、交付されるのって住民票があるところでしょ? だったら急いで仮免取るより、向こうに帰る直前に仮免取った方がいいかなって」

「なるほどね。期間が空いたら、忘れる恐れがあるからな」


 二人は山形で自動車教習所に通う予定だ。俺が通っていた所と同じ教習所に通うつもりの様だ。

 りんのお母さんの実家からは、意外と距離があるので、自転車だとしても通うのはちょっと大変だと言うと、ロードがあるからそれで通うと二人は言っている。実は、智子もサイクリストなのだ(※配信始めました 〜趣味編〜 五話、六話 参照)。まあ、何かがあった時は俺が送り迎えすれば良いやと思い、鍵だけはしっかり掛ける様にとだけ、アドバイスをしておいた。


「あー、それにしても楽しみ〜。お母さんの実家って、都会の喧騒とは無縁で良いところなんだよねー」

「本当それ。わたしんちって田舎がないからさー、憧れてたんだよね。去年お邪魔した時に、カエルの合唱とか虫の音なんて初めて聴いて、すごく感動したよー! それでまた来たいって思ってたんだー」

「去年は逃げる様に山形に向かったからなぁ。でも、今年は好きな人と一緒に、だからね! 去年とは心境が全然違うよね」

「でも、二年連続で学校に通う事になるとは思わなかったなー。知ってたら、去年アキくんと一緒に車の免許も取ってたのになー」

「まあ仕方ないよ。その頃はまだアキと知り合ってなかったし、山形に来てこっちで新しい彼氏ができるなんて思ってなかったもん。それに、それ以前に、アキと出会ってなかったら、よりを戻そうとしてたかもしれない・・」

「りん・・・。無理に忘れろとは言わないよ。あんな強烈で最悪な存在、そう簡単に忘れられないから。でも、どうせ忘れられないなら、こう思えば良いんだよ。アキくんと出会う為の布石だったんだってね。実際そうでしょ?」

「まあ、うん、そう・・・うん、そうだね!」


 りんが一瞬、昔の記憶に引き摺られそうになったけど、智子が上手い具合にフォローを入れてくれたお陰で、りんも元気が出たようだ。やっぱり、みんなに迷惑をかけたって、未だに思ってる様だ。

 別にそんな事ないのにな。今にして思えば、逆に良い経験になったよ。あの時の経験があったからこそ、東京タワーダンジョンでのゴミ処理(ひとごろし)が、苦も無く出来たんだもんな。もしあの経験がなかったら、実力的には兎も角、やっぱり忌避感が強く出て苦労した筈だ。だから、良かったとは言わないが、経験的にはプラスだったと言える。


「でさー・・・」

「へ〜・・・」

「でね〜・・・」

「あはは・・・」


 りんと智子のお喋りは尽きない。その間に新幹線は、大宮を出発し、宇都宮に着こうとしていた。宇都宮と言えば、餃子、自転車。餃子はメディアでもよく出るからかなり有名だ。

 そして自転車は、サイクリストにとっては聖地だ。なぜかと言うと、『宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース』があるからだ! これは日本で開催されるサイクルロードレースのワンデイレースでは、最高峰と言っても過言ではない。理由は、カテゴリーが、「UCIプロシリーズ」と言うカテゴリーで、これはトップカテゴリーの「ワールドツアー」の一つ下なのだ。

 元々は「UCIコンチネンタルサーキット」のHC(オークラス)だったのが、一つ上に新しく作ったカテゴリーに組み込まれたのだ。ちなみにHCとはコンチネンタルサーキットのトップクラスでフランス語のHors(オー)から来ていて、いろんな意味があるが、ここでは超とか最高とかの意味で使われている。

 このHCだったジャパンカップが、一つ上のカテゴリーに上がって、名実ともに日本最高峰になった。

 そして、ワールドツアーチームも、全てではないが参戦するので、すごく見応えがあるレースだ。中々行く機会がないので、直に観た事は無いのだけど・・。でも、一度は観てみたい! と言う事で、宇都宮はサイクリストの聖地なのだ。

 あとは、宇都宮じゃ無いけど、JAXAの宇宙センターが筑波にある。日本の宇宙開発や研究などの中心になってるのが、この筑波の宇宙センターである。宇宙好きなら一度は行くべき施設だ。

 そして、栃木と言えば、日光東照宮か。よく、風水を利用して作られており、厄災や災いを防ぐ目的で作ったので、徳川幕府が二百六十年余も続いたと言われているが、俺は違うと思う。(※個人の感想です)

 風水は間違いなく利用している。しかしそれは、龍穴があったからだと思う。単に今で言うパワースポットだったからだろう。徳川幕府に地脈の力を齎す存在として作ったと思う。じゃなかったら、元々あった二荒山神社ふたらさんじんじゃや、輪王寺りんのうじの直ぐそばに作らないと思う。(※重ねて言いますが、個人の感想です)

 それに徳川幕府が二百六十年余も続いたのは、二代将軍の秀忠の功績が大きい。問題が起きたら、直ぐに動いたり、敵対する芽は直ぐに摘み取った。有名な「公家諸法度」や「武家諸法度」を作り、徹底させた。そして天皇家に娘を嫁がせて繋がりを持ち牽制し、江戸幕府の土台を固めていったのだ。そして、幕府運営は自分一人では決めず、かと言って、人任せにもせずで、優秀な側近を揃えていったのだ。なので江戸幕府が長く続いたのだ。東照宮はどちらかと言えば信仰の対象で、民の心の安寧のために存在したと思う。心が満たされれば、反乱は起きないからな。(※しつこい様ですが、個人の感想です!)

 他にも色々あるんだろうけど、何せ行ったことないから、よく分からないんだよな。

 宇都宮の駅を眺めながらそんな事を考えてると、新幹線は駅を出発した。そして、次第の田園風景に変わっていく。時間的にも景色的にも丁度いい。


「この辺で、ご飯でも食べるか。二人はどうする?」

『食べる』


 東京駅で買っておいた駅弁を取り出す。俺が選んだのは、一番人気の弁当、山形で作ってる牛肉を使ってる弁当だ。智子は宮城の牛タンの弁当を買っていた。加熱式なので温かくして食べられるとの事だ。りんは深川めしの弁当だった。昔ながらの下町の料理で気取ってなく素朴な味わいで食べ飽きないのだとか。


「どれもこれも美味しそうだねー。りん、アキくん、シェアしよう」

『いいよ』


 一旦、自分の弁当を三分の一食べて、次の人に回すといった方法をとった。


「美味〜い。牛肉も深川も牛タンも、全部美味し〜」

「いい値段するけど、これなら納得って味だね〜」

「わたしは今までこれを知らずに生きてきた事を後悔するよ〜」

「アキは食べたことあるの?」

「去年の帰省の時に海鮮丼を食べた」

「あー、マグロとイクラのやつね。美味しかった?」

「美味かったよ。今回は別のを食べようと思ったから買わなかったけど」

「去年の私は、全く食欲が無かったからなー」

「そんな感じだったから、わたし達もサンドウィッチ位しか食べてないんだよね。帰りは寝てたし」

「でも、今年は同じ寝るでも、いい夢が見られそうだよ」

『ね〜』


 と言いつつ、ご飯を食べてお茶を飲んだ後、少ししたら二人とも寝てしまった。顔が少しニヤけてるところを見るに、いい夢を見てるんだろうな。二人の心の安寧になってると思うと、それだけでなんか安心する。二人には笑顔でいてほしいから。ネットとかでよく見かける言葉を思い出す・・・「守りたい。この笑顔」・・・。まあ、笑顔というより、ニヤけ顔ではあるけど、可愛いのには変わりない。


 新幹線は福島駅に到着した。ここで連結は解除して、山形行きの「つばさ」と仙台方面の「やまびこ」に分かれる。その為、この駅では少し長く停まる。そして、当然俺たちが乗ってるのは、つばさだ。

 福島駅をやまびこが仙台方面に、つばさが山形方面に向けて出発した。最初こそ平野部を走っていたが、直ぐに山間部を走る。結構な渓谷を走るものだから、時期が合えば、紅葉を眺めながら走る。それで無くとも、新緑や雪景色なども綺麗だ。


『・・・・zzzz』


 それにしてもよく寝てる。なんか徹夜でもしてたのかな? 昨日は二人と会ってないから分からないけど。起こすのも可哀想だし、着くまでは寝かせておくけどね。

 そうしてる間に山形駅が近くなってきた。そろそろ二人を起こさなくちゃな。


「そろそろ着くよ。起きて、二人とも」

「んぁ・・・。ありがとう、アキくん・・ふあぁ」

「もう着くのねー・・・。よく寝たなぁ・・」

「昨日、二人とも徹夜でもしてたの?」

「まあ、色々ね」

「まあいいか。山形駅で在来線に乗り換えるんだ。そこから三十分位で駅に着くから。さてと、姉ちゃんに迎えの電話しておくかな」

「久しぶりの山形だー」


 在来線に乗り換えて三十分。到着した駅で降りて駅舎を出ると、姉ちゃんがすでに来ていた。


「おかえり、三人共」

『ただいま、夏菜さん!』

「ただいま姉ちゃん」


 姉ちゃんの車に乗り込んでりん達を送り届け、自宅に戻った。一年ぶりの地元だ。


 〜昨日の夜〜


「明日から山形かー。楽しみだね。りん」

「智子、私こんなの見つけたんだけど。今から送るURLを見てみて」

「何々? 掲示板だね。えっと・・『まおーを語る板』? これアキくんの事?」


   〜   〜   〜   〜   〜


46:名無しのまおー

まおーって何者なんだろうな。強いんだかそうじゃないんだか、よく分からないよな。


47:名無しのまおー

中間くらいじゃないかな。決して弱くはないよ。探索者歴一年であの強さだったら、中の上辺りか。


48:名無しのまおー

それより、周りがヤバすぎ。三尾の妖狐に銀狼、元ボスライオン。パーティメンバーもバーサーカーにアサシンにぶっ壊れ魔法使いに異世界風のランサー。最近は覚狸なんて妖怪も加わったし。


49:名無しのまおー

チェスク商会に喧嘩売って完膚無きまでにぶっ潰すんだもんな。工場なんて跡形もなくて更地なんだろ、今は


50:名無しのまおー

しかもみんな美人、美少女ときた。巷じゃハーレムまおーって呼ばれてるもんな。


51:名無しのまおー

打ち上げ飲み会配信を見たけど、お姉さんも美人だったぞ。しかも、方言女子だ! 萌えるー!!


52:名無しのまおー

まおーって、どこ出身だっけ?


53:名無しのまおー

山形。


54:名無しのまおー

山形弁か。ズーズー弁しか知らんけど、どうなの?


55:名無しのまおー

すっごい良かった!!!  方言女子サイコー!!


56:名無しのまおー

そんなに良いの?


57:名無しのまおー

まおーも偶に山形弁喋ってるでしょ? あれをしっとりした喋りにして、女の人が喋ってるところを想像してみ?


58:名無しのまおー

・・・・すいません! お姉さんへの課金はどこですか!!


59:名無しのまおー

な? 破壊力がすごいだろ?


60:名無しのまおー

破壊力と言えば、こないだ、九十九里でまおーとりんちゃんと智子ちゃんを見かけたんよ。多分海デートしてたんだろうな。(※趣味編 七〜十話参照)


61:名無しのまおー

ふむふむ


62:名無しのまおー

そこにさ、モン娘三姉妹が水着で現れたのよ。みんなヤバかったけど、特に雪ちゃんがヤバかった!


63:名無しのまおー

銀髪ロリっ娘がだぞ、紺のスク水着てたんだ! しかも胸の白い所には「5-2 武内 雪」って書かれてたんだぞ!


64:名無しのまおー

ガタッ!!!! マジか!!


65:名無しのまおー

動画は? 配信は?


66:名無しのまおー

無い。完全なプライベートだったみたいだから。


67:名無しのまおー

見れたやつはラッキーだったな。俺も見たかった。写真は誰も撮ってないの?


68:名無しのまおー

写真撮影は無理だろ倫理的にも。それにまおーのCHってそんなに登録数多いわけじゃ無いからな。誰も気が付かないだろ。

75:名無しのまおー

今日学校でまおーを見たぞ。なんか綺麗なお姉さんとダンディなおじさんと一緒に居た。


76:名無しのまおー

あー、ギルドで噂になってるね。新しいハーレム要員か? しかも男もか? って。


77:名無しのまおー

しかもその女の人、喋りが「のじゃ」なのよ。見た目が二十代前半なのに。


78:名無しのまおー

のじゃ女の子かー。想像すると、なんか良いな。


   〜   〜   〜   〜   〜


「これかー。ハーレム要員ってかー。」

「なんか引っ掛からない?」

「何が?」

「アキって、ハーレムまおーって言われてるけど、意外と身持ち固いでしょ?」

「そうだねー。別に節操がないってわけじゃ無いもんね」

「ダンジョンで言ってたでしょ? 天照大神様と高木大神様が会いに来るって」

「あー、言ってたね」

「私、その二人なんじゃないかなって思うのよね」

「根拠は?」

「なんと無く。あと、のじゃ喋り」

「分かる気もするけど、根拠が薄いねー。今度アキくんに聞いてみたら良いんじゃないかな? やましい事が無かったら、ちゃんと話すでしょ」

「だね。今度二人で問い詰めよう」

「了解だよー。ふふふ。公開説教再びとなるかな?」

「そんなもんになって欲しく無いけどね」

「ところでさー・・」


 こうして二人の夜は更けて行った。


第78話での天鈿女命の話の内容と、最後の方の月読命の台詞を、凡そ合計千文字位書き加えました。

書き加えただけなので、余り話の流れは変わってません。

なので、読まなくても平気ですが、今後の布石も少しありますので、読んで頂けたら、幸いです。

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