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配信始めました 〜ダンジョン編〜  作者: ばっつ
第二章 配信者になりました
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第67話 東京タワーダンジョン⑰ ボス鷹を使役しました

(じゃあ、僕は一旦帰るね。ボス戦頑張ってねー。またねー)


 八咫烏のヤタさんが飛び立って行った。かなりの速度が出てるんだろう。あっという間に小さくなって見えなくなった。ハァ、全く心臓に悪いよ。いきなり神様の使いが出てくるなんて思わないよ、もぅ。

 しかも、最高神のニ柱が会いに来るって、どういう事? いや、それ以前にどんな格好で来るんだろう? よく絵で見る格好だったら、目立つ事間違い無しだ。大抵の人は、コスプレか何かだと思うんだろうけど、ある程度の探索者だったら、尋常じゃ無い魔力量を感じ取るんだろうな。智子のお母さんとか。そうすると、神様だとバレてしまう。そうなったら、面倒くさい未来しか思い浮かばないぞ。何か考えておかないと。

 そして思い出した事もあった。これはボス戦だった。八咫烏の存在が大き過ぎて、忘れていた。ボスはいるかな。あ、居た居た。鷹の魔獣が岩陰に隠れてこっちを見てる。しかも、なんか涙目で震えている。うん、気持ちわかるよ。あんなもんが出て来たら、逃げたくなるよね。俺も逃げたかったよ。体が動かなかったけど。八咫烏の目的が俺だったけど。


「なんかあのボス、泣いてない?」

「そりゃあ、直前まであんなモンが居たら、泣きたくもるよー。それにー、あんな近くまで来られたら、チビって気絶する自信があるよ、わたしはー」

「私も自信ある。アキ、よく冷静に話してたね。最後の方は冷静じゃ無かったけど」


 話しながらりんがボスに目を向けると、ボスが一瞬ビクッとなった。完全に怖がられてるな、これは。りんは武器を仕舞って、ボスに手招きすると、ボスがりんに恐る恐る近づいて行った。そしてりんはボスに抱きついて撫で始めた。


「鷹さんおいで。怖かったねー。私も怖かったよ。でももう大丈夫だよ。逃げずによく頑張ったねー。えらいねー、よしよし」

「りん、何でボスを慰めてるの?」

「なんか涙目で震えてるのが、可哀想になってきちゃって」

「まあ、りんらしいっちゃあ、りんらしいかな」

《園児をあやす保育士にしか見えないな》


 亜香里ちゃんと紫乃ちゃんが少し呆れ気味に言ってる。涙目で震えてるからって、慰める人は、まあいないかな。普通だったら、嬉々として討伐するだろう。しかし、俺もりんと同じ事をするかもなぁ。最近は魔獣を見る目が変わったからな。戦わなくていいなら無理には戦わない、が俺の信条だしな。

 ボスに目をやると、感極まったのか涙目で震えながらりんに抱きついていた。そんなボスをりんは優しく撫でて慰めていた。微笑ましいシーンなのかも知れないけど、あれ、一応、ボス魔獣なんだよな。それだけ、ヤタさんが怖かったのか。


《あ、そうそう。まおー、八咫烏となんかあったのか?》

「えっと、説明すると長いんだけど、簡単に言うと、最高神のニ柱が、俺が真眼持ってても良いか気になってヤタさんを派遣したんだって。結果は大丈夫だったんだけど、ヤタさんもニ柱も、みんなが俺をまおーって呼んでるからってんで、ヤタさんもニ柱も俺をまおーって呼ぶ事に決めたってのと、ニ柱がそのうち会いに来るってので、混乱するわ、呆れるわ、って感じ」

《『・・・・・・・・・は???』》


 みんな目が点になってる。なんなら、ボスも点になってる。そりゃそうだわな。俺も訳分からんもん。いざボス戦って思ったら、シャレにならない者が来て、しかも、神様の話になって帰って行くっていう。何なんだろうね、この状況。


《最高神ニ柱とかヤバくないか(ヒソヒソ)》

《八咫烏をヤタさんって呼ぶのもヤバイぞ(ヒソヒソ)》

《俺らのコメントが、ニ柱を動かしたのってすごくね?(ヒソヒソ)》

《加えて最高神が会いに来るってのもヤバイな(ヒソヒソ)》

《結論。まおーはヤバイやつ(ヒソヒソ)》

「コメントでヒソヒソ話しても意味ないぞー!」


 ヤバイまおーは、勘弁してください。知らない人が聞いたら、本物のヤバい魔王に聞こえるでしょうが。現にヤタさんも最初は、『魔王』って聞こえたみたいだったからな。だから『ひらがなでまおー』って訂正したんだもんな。神様に魔王認定なんてされたく無い。魔王認定されたら、討伐されちゃうよ。それは勘弁っす。

 そういえばボス鷹はどうなったかなと思い、そちらに目をやると、りんに懐柔されて、完全に懐いている。もはやペットだ。それでいいのか? ボス鷹よ。


「あ・・・・・」

「どうしたの? りん」

「なんか、この鷹さんが身体に入って来た感じがした」

「りん姉ちゃん、それ契約したからだよ。魂が繋がってる感じがしない?」

「うん、なんか、鷹さんが身近に感じるし、考えてる事も分かる気がする」

《りんちゃんが鷹を使役しただと?》

《どんどん戦国武将になっていくな。》

《鷹匠ってか》

《まおーの嫁も普通じゃないって事か》


 まさか、りんが魔獣と契約するとは思わなかったな。しかもボスと。いくらボス魔獣が他の一般魔獣より知能が高いといっても、人ほどじゃない。まあ、経験積んで進化していけば、人並みの知能にはなるけどね。しかし、今の段階だと、せいぜい、相手の感情と言ってる事が少し分かるくらいの知能だ。それでよく契約できたな。素直にすごいと思う。まあ、あれだけの恐怖の後に、あんなに優しくされたら、そりゃあ、落ちるのも無理はないか。これを狙ってやったら策士だけど、偶然の結果だもんな。運がいいなぁ。

 それにしても・・・


「ボス戦が終わっちゃったねぇ」

「また戦わなかったねー」

「今まで戦ったボスって全部、変異種か、試練ばっかりで、一般ボスは一回も戦ってないんだけど・・」

「一般ボスは全部使役してるからねー。アキくんが」

「そして、今回はりんが使役したと」

「「あんたらバカップルはボス限定のテイマーか!?」」

「「そんな事ない。と思うんだけど・・・」」


 偶々だよ、偶々。別に意識して使役してる訳じゃ無いんだけどなぁ。なんかすり寄ってきたりお願いされたりしたら、可愛くなってくるじゃん? そう言う事なんだけどなぁ。 

 それにしても大きい鷹だな。ダンジョンの中だからいいけど、外に連れ出したら、えらい騒ぎになるぞ。どうにかしないと。小さくなればいいんだけど、小さくならないかな。普通の鷹くらいのサイズに。そうすれば、全然違和感がないんだけど。


「りん、この鷹に小さくなれるか聞いてみてくれる?」

「やってみる」


 りんが鷹に話しかけている。鷹もそれを聞いて、うんうんと頷いている。話を理解してる様な素振りだけど、本当に分かってるのかな。あ、鷹がりんにすりすりしてる。あれ絶対分かってないな。りんも、嬉しい様な困った様な、複雑な表情をしている。仕方ない、ユキにフォローしてもらおう。


「ユキ、頼む」

「うん」


 ユキが獣人モードになって、鷹に近づいて行く。鷹がユキに気が付いた瞬間ビクッとなって、怖がっている。まあ、ヤタさん程じゃないけど、かなり格上だからなユキは。鷹にしてみたら、恐ろしい存在なんだろうな。

 鷹はユキよりも大きいので、ユキは見上げる様にして鷹に話している。鷹はりんの時と違って、すごく姿勢を正して聞いている。魔獣でも、格上の者と接する時は姿勢を正すんだね。

 でも、だからと言って、りんが舐められてると言う訳ではない。ただ単にりんに甘えていただけだ。鷹は自分の主人と認めていたからな。


「分かった? じゃあ、やってみて」

「キュイ」


 返事をした直後、鷹の体が光に包まれた。そして光が収まると、普通の大きさになった鷹が居た。おー、成功したようだ。これでダンジョンの外に出ても平気だな。りんの肩に乗ってる鷹も、心なしか嬉しそうだ。一緒に外に出られるんだからな。そりゃ嬉しいか。


《りんちゃん。その鷹、名前あるの?》

「名前は無いから、出口に着くまでに考えておくね」

《どんな名前にするんだろうなー》

《源之丞とか、時貞とか、唯介とか》

「そんな武将っぽい名前なんて付けません! もっと可愛い名前にします! もう!」


 実際、俺もどんな名前にするのか気になるので、楽しみではある。いつもは俺が付けてたからな。他の人はどんな感じの名前をつけるのか、非常に興味がある。可愛い名前にするって言ってたけど、どんな名前なのかな? そういえば、ボスライオンの名前は何にしたんだろう? 後で聞いてみようかな・・・。

 さて、いつまでもここに居ても仕方ないので、そろそろ帰る準備を始めるかな。今回の目標は、六階層のボス討伐だったからな。討伐してなくても、ボスを何とかしたんだから、目標クリアで良いだろう。


「そろそろ帰ろうか」

「そうだねー」

《いつも思うけど、この帰る時の感じって緩いよなぁ》

《他のパーティだと『よーし! 戻るぞ!』って感じで、気合を入れてるんだけどなぁ》

《まおーのCHだと、ピクニックの帰りって感じだもんな》


 そ、そうかな。そんなに緩いかな。自分としては普通だと思ってたんだけど。そうなんだ。他の人達って、帰る時に気合い入れるんだ。知らなかったなぁ。でもまあ、今更この感じを止めるのも何だしな、何も変えずにこのままだな。ここで気合い入れても、さらに疲れるだけだし。帰りなんて来た道を戻るだけだし。どこに何があるか、ある程度把握してるし、何だったら真眼で見れば、隠れてる魔獣も発生する魔獣も、全て分かるし。更に言えば、りんが使役した鷹の実力を見せてもらうために、六階層は任せるつもりだし。問題無し。

 さて、帰る準備をするか。と言っても、何かしらのドロップがある訳でも無し。忘れ物が無いかどうかだけだからな、楽なもんですわ。

 周りを見渡す。うん、特に忘れ物は無いな。自分の持ち物は、装備よし、アイテムよし、体調少し辛い、でも全部OK。鷹と戯れてる四人組と、走り回ってる三姉妹に声を掛ける。


「みんな、忘れ物は無い?」

『大丈夫』

「じゃあ、帰るよ」

『はーい』

《もう、完全に遠足だな》

《でなかったら、家族旅行だな》

《どちらにしても、旅行帰りだ》


 予定通り、六階層は鷹に任せるつもりだ。実力を知りたいからね。鷹は、当たり前だけど鳥なので、五行思想で言うと、火属性だ。どんな闘い方をするのかな。ちょっと楽しみだ。


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