第6話 説教タイム
「申し訳ありませんでしたーー!!!」
授業が終わって休憩時間に入り、俺たち2人は休憩室に移動していた。向かい合って席に座ると同時に、テーブルに額をぶつける勢いで謝ってきた。美少女のこんな姿見たくなかったなぁ。もしかして、残念系美少女なのかな?さっきの鬼神の如き様相から一転、小動物のように小さくなっている。あんな事があったけど、何だかんだやっぱり可愛い。っと、いやいやそうじゃ無くて、
「一体何なの?あのキレ具合。あれ普通じゃないよ?ちゃんと説明してよ」
「うう、ほんと、ごめんなさい。実は・・・」
彼女が言うには、『ユウくん』とは向こうで付き合ってる彼氏のことらしい。名前は、坂井悠太。細マッチョでアイドル顔のイケメンで同い年。大学に入って直ぐに入部したダンジョン探索倶楽部、通称『ギルド』で出会い、そこから付き合い始めたとの事。画像を見せてもらったら、本当にイケメンだった。
因みに、ギルドは各大学に有り、俺が通ってる大学にもある。そして各大学のギルドの幹部同士が繋がっており、ダンジョンの情報交換をしている。これは情報を共有する事により、各ダンジョンの攻略をスムーズに行うためで、これにより危険度がまるで違ってくるのである。
と言うのが建前で、実態は出会いの場と化しているって聞いたことがあったけど、小野寺さんの話を聞く限り噂は本当だったようだ。
彼女にとっては三人目の彼氏で、しかも今までの中でダントツの超イケメンなものだからすごく舞い上がったのだろう。その証拠に大学に入って始めたファミレスのウェイトレスのバイト代も、偶に渡していた事もあった。理由は探索者になるための準備代って言われたかららしい。
そしてある日、都心でデートをしてると前から歩いて来た女が、坂井悠太に何やら怒鳴っていた。何事かと思い彼氏を見ると、焦ったような顔をして、何やら言い訳らしきことを言っていた。不審に思い問い詰めると二股を掛けていたようだった。この時は小野寺さんも怒ってその場で帰ったそうだ。しかしその後、彼氏が平謝りして二度としないと言ってきたので許したようだ。
その後何事もなく付き合っていたが、夏休みに入る直前辺りから会う回数が減り、様子がおかしかったという。調べてみると、また二股を掛けていたようだった。その事で喧嘩となり、本当は一緒の学校に入学する予定だったが、東京では無く、地方のダンジョン学校に入学を決めた。そして、母親の実家がある、このダンジョン学校に入学を決めたと言う。なので、このダンジョン学校に来た理由と東京のダンジョン学校の事を聞かれて、その事を思い出してキレてしまったと言う。
呆れて言葉も出なかった。無言のままテーブルに肘を付いた右手の平に額を乗せ、暫くしてため息と共に話し出した。
「はぁ・・・なに、そのクズ夫・・・。二股は論外だし、しかも2回も。バイト代の件も本当に準備代かどうかも怪しすぎる。騙されてるよ、絶対」
「うっ・・・そんな事無い・・・と思う」
「今までの二人も碌に付き合っても短い期間で別れてたんだろ? 絶対体目当てだよ。それって」
「そんな事ないよ。だってキスまでしかして無いんだよ、私たち。身体目当てだったら、とっくに襲われてるでしょ?私まだ経験無いもん」
「・・・ホテルに誘われた事は?」
「喧嘩する前に誘われたけど、断った」
「・・・何で断ったの?」
「さっきも言ったけど、なんか様子がおかしかったから」
「・・・彼氏の部屋に誘われた事は?」
「付き合って直ぐに、遊びに来ないか?って誘われた事ある」
「・・・何で行かなかったの?」
「友達に言ったら、その気が無いなら絶対まだ行くなって言われて」
「その友達、ナイスアシストだな」
「でも遊びに行くだけだよ?そっち目的じゃ無いでしょ?」
「アホか!思いっきりそっち目的だわ!」
彼女の後頭部に手刀を落とす。思いっきりじゃ無く、ツッコむ程度の力具合で。小野寺さんはビックリした様で、頭を抑えながら涙目で抗議してきた。
「痛ぁ〜。何すんのよ!」
「うるさい!自分の純潔が大切なら、もうちょっと相手を疑え!その気がないなら男と二人っきりになろうとするんじゃ無い!じゃないと別の男からも狙われるぞ!」
「うう、ごめんなさい」
「自分にどれだけの希少価値があるか分かってんのか、全く・・・・・・ブツブツ」
「ん?何か言った?」
「何も言ってません!はぁ〜、そろそろ次の授業あるから俺、もう行くわ」
「あ、私も授業あるんだった。ホント、今日はごめんなさい」
「もういいよ。今度から気をつけなよ」
「うん。ありがとね」
俺たち二人は揃って休憩室を出て、お互い次の授業に向かった。次の授業は刀術で、その次が体術か。大丈夫かな、こんな精神状態で受けて。身が入らなくて怪我しそうで怖いわー。
◇ ◇ ◇ ◇
案の定、刀術と体術は集中できずミスを連発してしまった。その度に“しっかり集中しなさい”と言われる始末。
おかげで授業はボロボロでしたわー。
おのれユウくん!どこまで俺の邪魔をすれば気が済むんだ!俺に何の恨みがあるって言うんだ!(八つ当たり)