第54話 東京タワーダンジョン④ 決着
内容に納得が行かなくて書き直していたら、更新が遅れてしまいました。
「よーし、斉藤、早速やっちまおうぜ」
「そうだな。女と魔獣は持ち帰って、男はここでバラシちまおう。鈴木、任せたぞ」
「おっけー。じゃあな。恨むなら自分の運の無さを恨みな」
鈴木が剣を振り下ろして来た。ここで俺は寝てるフリをやめて、鈴木の剣を弾き返す。そしてそのまま、返す刀で斬り付けた。致命傷にはならないが、鈴木の腕に傷を付ける。本当は、腕の一本も切り落としたかったが、流石に無理だった。
お互い一旦離れ、武器を構えて相対した。寝てると思ってた相手が寝てなく、しかも反撃して来たことに驚くと同時に、焦りが見え隠れする。
「テ、テメェ! 起きてやがったのか!」
「あんなモン、対策さえ知ってれば、何の問題も無い」
《良かった! 主が起きてた!》
《主も三姉妹も寝てるっぽかったから、焦ったよ!》
三姉妹も起き出した。実は、本当に寝てるのは誰も居ない。りんと智子が寝そうになってはいたが、気力で抗っていたのだ。あの手の香は、一定時間耐えれば効果がなくなる。なので、頑張って耐えてもらったのだ。しかし、少し眠そうだな。
(ユキ、セイカ、深月。りんと智子の守りを頼む)
((( 分かった )))
ユキ達三人に、二人の護衛を任せ、俺とトウカが攻撃組に周る。このまま殺してもいいんだが、流石に配信に殺してる所を映すのはまずいと思うし。取り合えず逃げられないように、手足を折っておくのが無難か。刀の峰を下に向けて、そのまま構える。峰打ちだ。本当の峰打ちは、普通に斬り掛かって、当たる瞬間に刃と峰の位置を入れ替えるのだが、面倒なので最初から入れ替えた。
「殺すなよ。生かして捕まえるんだ」
「生きていればいいの? 兄ちゃん」
「ああ。本当は殺したいが、仕方が無い。だから生きてさえいれば、手足が無くても構わない」
「なんか言ってる事が、悪党だよ。兄ちゃん」
「極悪人相手には、悪党くらいで丁度いいさ。行くぞ!」
俺が鈴木に、トウカが斉藤に向かっていく。トウカの方は問題ないだろう。早ければ一瞬で決着が着く。俺ものんびりはしていられない。気持ちを落ち着かせ、冷静に相手を見る。相手は探索者歴が俺より一年長い。その分、経験値は高いだろう。
そう思っていたのだが、剣の構えがなってない。足の動きも悪い。攻撃の一つ一つが大振りで、動きがバレバレ。何コイツ。よくこんなんで、探索者やってたな。アレか? 魔道具頼みでやって来たのか? それを加味しても、ダメ過ぎる。所詮は、無抵抗の魔獣や人間しか相手に出来ない様な奴らだったか。だったら、さっさと終わらせるかな。
「オラァ! 死ね!!」
「当たるかよ! そんな攻撃」
いきなり剣を振りかぶって切り掛かって来た。そんな虚実のない、しかも大振りの攻撃なんか、当たる訳が無い。一歩下り、刀で剣の軌道を逸らして、腕に攻撃をする。当然峰でだ。こうすると刃物じゃ無く、鈍器だ。当たった感じから言って、骨を折った様だ。
「ギャッ! 痛えぇぇ!! う、腕があぁぁ!!」
「付いてるだけ、有難いと思えて! もう一丁!」
「グアアァァァァ!!」
刀を腿に突き刺した。これで動きを封じたな。まあ、油断はしないけどな。
《なんか、コイツら動きが悪過ぎるな》
《うん。はっきり言って初心者レベル》
《探索者歴二年なのに、初心者と同レベルって、何やってたんだ?》
《睡眠香で眠らせてから、襲ってたんだろうな。だから技術が向上しない》
《でも、魔道具だって安くないのに、何処から金が出てるんだろう》
《さっき言ってただろ。女性を攫ったり、男を殺して売ったりした金だろ。本当、吐き気がするわ!》
《さっき主も言ってたけど、殺せるなら殺し・・》
ん? ドローンのスイッチが切れたな。織田さんが切ったのか? 何かあったのかな。ちなみに、ドローンは俺のいた場所の、近くの建物内に隠してあって、リモートスイッチを織田さんに預けていた。
「織田さん。どうし・・亜香里ちゃん? それと紫乃ちゃんも?」
「ハァ、ハァ、ハァ。 あー、無事で良かった。大丈夫だとは思ってたけど、本当に良かった」
「ハァ、ハァ。だから・・アタシは平気だって・・ハァ・・言ったでしょうに。ハァ、ハァ」
「だって、りんと智子が危ないって思ったら居ても立っても居られなくて」
「お、お疲れ様、二人とも。大丈夫?」
「アキくん、この二人の処遇が決まったよ。ここで処理だって。さっきお姉ちゃんから、織田さんに連絡が来たって」
「ダンジョン内で通話出来るの!?」
「情報局員同士ならね」
「そうなんだ。情報局ってやっぱり規格外だな。取り敢えず、亜香里ちゃんと紫乃ちゃんは、りんと智子の側に居てやってくれ。まだ少し意識が朦朧としているんだ」
『分かった。任せて』
処理か。やっぱりそうなったか。やってる事が悪すぎるもんな。予想はしてたが、まあ自業自得、因果応報だろう。
「トウカ。殺して構わない。思う存分やってくれ」
「な! お、俺を殺すのか!? そんな事許されると思ってんのか!!」
「どの口が言ってんのよ! まあいいや。一瞬で殺してあげるから、有難いと思いなさい」
そう言い放つや否や、トウカは狐火を出した。それも超高密度の、一瞬で全てを蒸発させる程の威力のをだ。その狐火を斉藤に向けている。
「りん姉ちゃん達を襲おうとした事、私たちを襲おうとした事、そして何より、アキ様を殺そうとした事! 地獄でずっと後悔してな!! 消えろ!!!」
「・・・・・ッ!!」
超高威力の炎が勢いよく飛び出し、斉藤に着弾。それと同時に、斉藤を炎で包み込む。そして斉藤は、叫び声も出せずに一瞬で蒸発してしまった。狐火が落ちた所は溶岩になっており、そこには何も残っていなかった。とんでもない威力だな。全開じゃ無いんだろうけど、それでも凄過ぎるな。こんな凄い子が俺と契約してて良いんだろうか?
次は鈴木の番だ。俺は鈴木に目をやる。恐怖で震えている。それはそうだろう。あんな物を見せられたら、普通はそうなるよな。そして、次は自分の番だと判ったんだろう、俺に跪いて、命乞いを始めた。
「た、助けてくれ! いや、助けてください! さっきの事は謝る! だから、お願いです! 助けてください!」
「・・・あんたは、今までそうやって命乞いした人を助けたの? 助けて無いよね。だったら、どうなるか判るよね。直ぐに坂井悠太と斎藤純の後を追わせてやるから、安心していいよ!」
高濃度の魔力を浴びせる。これだけで、恐怖心を煽れる。恐怖心を煽ってから殺さないと、今までにコイツらに殺された人達が浮かばれない様な気がした。事実、コイツの周りには、今まで殺された人達が視える。敵討ち、と言うわけでは無いが、彼らの無念は、多少は晴らしてあげたい気もある。自己満足と言われれば、それまでだけど。
「ヒ、ヒイィィィィ・・・! い、嫌だ! 死にたく無い!」
「ユキ! セイカ! 深月! 逃すな! 囲め!」
『はい!!(ガウッ!!)』
腕と足を怪我している鈴木だ。素早く動ける筈もなく、直ぐに囲まれた。刀を手に持ち、鈴木に近づく。手足が変な方向に曲がっていた。囲んだ際、ユキ達三人に攻撃をされた様だ。鈴木の顔は恐怖に染まっていた。変に長引かせるのも、何だしな。一気に決めてしまおう。
「嫌だぁ! 死にたく無い! 助けてくれぇ!」
「五月蝿い! 往生際が悪いぞ! 今まで殺された人の怨み、ここで晴らす!」
亀真丸を抜き、魔力を込めて、鈴木の首を斬った。切り離された首が向こうに転がって行き、首のない胴体は、血が心臓の動きに合わせて、噴き出している。
襲撃者の二人は処分した。これで当分安心だろう。安堵してると、ドローンのスイッチが入った。ドローンは浮かび上がり、配信が再開された。
《配信が再開した! みんなはどうなった!》
《みんな無事みたいだな。あれ? 亜香里ちゃんと紫乃ちゃんがいるぞ!?》
「智子とりんが狙われてるって聞いて、急いで駆け付けてくれたんですよ」
《流石、友達想いだね》
《ところで、あの二人がいないけど、亜香里ちゃん達と一緒になって倒したのかな》
《ん? あれ? ちょ、ちょっと待って? あそこに首のない死体が・・・。よく見たら、向こうにマグマが出来てる》
《え? て事は、あの二人は、もしかして主が・・・?》
視聴者さんに見つかってしまった。まあ仕方ないか。マグマがあるわ、血溜まりがあるわ、だしな。もう完全にあの二人は殺されたと分かるだろう。変に言い訳なんてしないほうがいいだろうな。なのでここは、嘘偽りなく正直に話そうと思う。
「はい。俺が殺しました。正当防衛だ、とは言いません。二人を殺したのは事実ですから。ですが、殺されそうになったのも事実なので、二人を殺しました。でも悔いは無いです。大事な人達を守れましたから。でも視聴者さん達も言いたい事があると思います。罵詈雑言、叱咤叱責、非難、批判その他諸々全て受け入れます」
頭を下げつつハッキリ言った。視聴者さんは、どんな反応をするんだろう。嫌悪感か、喝采か、暴言か。例えどんな反応をされても、俺は全てを受け入れる覚悟がある。仮に通報されたとしても、構わない。りん達を守れたんだ。それくらいで済むなら、安いもんだ。
《主! よくやった!》
《本当にそう! あんな奴らは、死んで当然だ! 主が気に止むことはない!》
《殺人鬼と言ってもいい奴らを、討伐したんだ。もっと胸を張っていいんだぞ》
《女性の尊厳を踏み躙る様な奴らなんだ。殺されて当然だ! それに今まで、男性を殺して、臓器密売までやってる様な奴らに、慈悲を与える必要は一切ない!! 主は、称賛されて然るべきだ!》
「皆さん・・・・・ありがとう、御座います・・・」
もしかしたら、と言うか絶対、人殺しとか、警察に通報とか、色々言われると思っていた。人を殺す行為。例え正当防衛だとしても、褒められた行為では無い。それでも、みんな理解してくれた。そして、それがどれだけ心の負担になるか、そのことを想像したんだろう。中には励ましてくれる人もいた。それがとても嬉しかった。涙が出るのを我慢する程に。しばらく顔を上げれなかった。
ダンジョン編の登場人物の趣味の日常を書いてます。
https://ncode.syosetu.com/n3682jy/
気が向いたら、読んでみてください




