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配信始めました 〜ダンジョン編〜  作者: ばっつ
第二章 配信者になりました
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第53話 東京タワーダンジョン③ 罠

 いきなり織田さんが現れてびっくりしたが、経緯を聞いて納得した。

 今回、亜香里ちゃんと紫乃ちゃんが参加しなかったのは、この事を事前に察知して、いろいろ調べていたからだった様だ。そして、シロとパルディを寄越して、俺たちに連絡して、自分たちはこっちに向かいながら、神鳥にも連絡したんだそうだ。

 神鳥は神鳥で、その連絡を受けてすぐに美桜さんに連絡。その美桜さんが、織田さんを派遣したと言う事だっだ。

 それにしても、横の繋がりが凄いな。それに、情報局ってそんな簡単に動かないって聞いたけど。ある意味、それほど重要人物なのかもな、あの二人は。


「違いますよ、武内くん。重要人物は、あんな奴らじゃ無く、あなた達ですよ」


 くっ、また顔に出てたか。それよりも俺たちが重要人物って、どういう事? 俺はまだ分かる。覚醒者って言われて、情報局に目を付けられてるからな。でも、智子とりんは、まだ覚醒してない。となると、三姉妹か。人間と共存して、人間の様に暮らしてる魔獣なんて居ないもんな。


「なんか、色々考えてるみたいだけど、多分全部違うからね。単に、亜香里さんと俊希くんの友達だからって事だからね」

「前に言ってた、親バカ案件ってやつですか」

「うん、そう。あ、武内くんが、覚醒者だからってのもあるよ。あとは智子ちゃんかな。それと、今見たらりんちゃんもだね」

「「え!?」」


 全部バレてる。智子は兎も角、なんでりんも分かったんだ? まだ覚醒者の片鱗も見せていないはずだが。ここで変に肯定すると、なんかダメな様な気がする。


「智子とりん、がどうかしたんですか?」

「知らないふりしても、ダメだよ。武内くんは、全部知ってるんでしょ? 智子ちゃんが魔法使いとしての覚醒者で、りんちゃんが動体視力特化の覚醒者だって」

「・・・・・・・・・」

「でも、安心していいよ。だからって、何かやる訳じゃないから」

「「私達が覚醒者・・・!?」」


 智子とりんに知られてしまった。一生の問題だから、慎重に、タイミングを見て話そうと思ってたのに、バレてしまった。あー、これは怒られるかな。『なんで黙ってたの!』とか言われるのかな。

 そっと、二人を見ると、


「わたし達、アキくんと同じ覚醒者なんだってー」

「なんか凄いね。これでアキの足手纏いにならなくて済むね」

「って事は、将来は覚醒者夫婦!?」

「「きゃーー」」


 なんか変に盛り上がってるな。取り敢えず、怒ってなくて良かった。それにしても、なんで織田さんは全部分かったんだろう。智子は最初にやらかしてるし、母親も覚醒者だから、なんと無く分かるとは思うけど、問題はりんだ。さっきも思ったが、片鱗すら見せてない。聞いてみるしかないか。


「智子はともかく、なんでりんの事も分かったんですか?」

「あー、それはね、りんちゃんの目の動きを見るとね、結構相手の動きを捉えてたからさ、なんとなくそうなのかなって思ってね。それで武内くんを見ると、なんか動揺してるし、それで確信した」


 ・・・流石、高レベルの探索者、としか言いようがないな。しかし、目の動きでバレるとはな。まあ、バレたんなら仕方がないか。そう言えば、智子のお母さんも、俺の目の動きを見て、覚醒者だと分かったって言ってたな。目の動きって、やっぱり重要なんだな。魔獣相手だとそんなに気にならないけど、対人だったら、気をつけないとな。今から対人戦をやるだろうから、事前に知れて良かった。


「そうだ。織田さん、ドローンのスイッチを入れたいんですけど。いきなり切れて、視聴者さん達も心配してるだろうから」

「そう言えばそうだね。うん、いいよ。僕はその間は、離れてるから」

「じゃあ、入れますね」


 そう言って、スイッチを入れた。起動音がして、ドローンが動き出す。と同時の配信が再開された。


《おーい。大丈夫かー。おーい》

《ダメだー。全然反応がない》

《ん? 映った! 良かったー》

「あーあー、みなさん、ご心配をかけてすいません。なんか機械の調子が悪くて、時々切れるみたいなんですよ。だから、今はいいけど、また切れるかも知れません。その時はご容赦くださいね」

《機械の調子が悪いんじゃ、しょうがないな》

《早めに診てもらいなよー》

「今回の配信が終わったら、メンテに出します。では、配信再開です」

(セイカ。織田さんの所に行って、そちらの都合でスイッチを切ってくれて構いません、と言って来てくれ)

(分かった、兄さん)


 小休止を終えて、三階層へと降りた。風景がガラッと変わった。基本的には人工物だ。だが、今までのビル群とは違い。自然と調和した人工物だ。俺の地元の巨大複合スーパーを思い出す。りんと初デートに行った所だ。あそこも自然と調和させた施設だった。なので家族連れや、恋人同士に人気の場所だった。


「なんか、初デートを思い出すねー」

「わたしは、跡をつけた思い出が甦るよー。そこで映画を見せられて泣いたなー。もう号泣」

「あー、『桜の散る頃に』ね。あれは良かったねぇ。私も号泣だったよ」

「「今度三人で観ようか」」

「うん、そうだね。実際、俺も感動したからな」

《俺も感動したよ、あの映画》

《ホント、いい映画だったな。久しぶりに大当たりだった》

《今度、地上波で放送するみたいだぞ》

「「! 絶対見なきゃ!」」


 談笑しながら進んで行く。何故かは分からないが、魔獣が現れない。ここまで出てこないのも珍しい。三階層も半分は過ぎてるはずだ。それなのに一匹も出てこないなんて、絶対何かある。あの二人組か? でも、そんな事をするメリットが無い。一つ考えられるのは、『試練ボス』だ。試練が現れたから、この階層から他の魔獣が消えてしまった可能性もある。


「それにしても、全然魔獣が出てこないねー」

「ねー。なんで何だろうね」

《確か、この階層にボスが居るんだよね》

《うん、そう。確か、蝋人形・・ドッペルゲンガーだったと思ったな 》

《また、東京タワーらしいボスだな》


 蝋人形。昔、東京タワーに蝋人形館と言う施設が常設してあった。そこには、映画のワンシーンや、有名人などの蝋人形が置いてあり、大人から子供までたくさんの人が訪れていた。そして、一部の展示物が何故か拷問系なので子供達に恐怖の記憶を植えてけていった。のちに恐怖系は子供は見れなくなり、そして、蝋人形館は十年以上前に、惜しまれつつも(?)閉館した。

 そういった経緯もあって、東京タワーと言ったら蝋人形。蝋人形と言ったら東京タワー、と結び付く者が多いのだ。


 魔獣が出てこないまま、第一ボス部屋の前までやって来た。ここで恒例となった、ボス部屋の手前での休憩だ。一旦冷静になったり、体力の回復目的でもある。


(何か仕掛けてくるなら、この辺りか?)


 地面に座り、休憩しながら周りを見渡す。人影は今の所は無い。だが、そうは言っても、隠れる所は沢山あるのだ。人影が無い=誰も居ない、と言うことでは無い。居ると思っていた方がいいだろう。

 りんと智子は一緒に休憩している。そして側には、深月とユキが警戒していた。俺の側にはセイカとトウカだ。


《なんか・・緊張感が漂ってるな・・》

《ボス前だから、って訳じゃなさそうだ》

《だよね。今までだったら、ボス前の休憩はのんびりしてたからな。今日みたいに緊張感は無かった》

《何かがあるのかな・・・?》


 視聴者さんも訝しんでいる。けど、配信で話す内容では無い。なので、特に返事はしてない。

(トウカ、周りに何か感じるか?)

(今のところは何も感じないかな。兄ちゃんは、なんか視える?)

(こっちも何も視えないな。みんな、引き続き警戒を頼む)

((( 了解 )))


 警戒しながらだと、全く休憩にならないな。身体は兎も角、精神的に疲れる。なので『半跏趺坐はんかふざ』を組み、瞑想をする。心を落ち着かせ、周りの様子に集中するのに丁度いい。瞑想本来の目的とは違うが、お陰で、心も身体も少し休めた。

 瞑想を終えると、深月から念話が来た。


(アキ様、あっちから二人組の男がやってくるよ。でも、なんか使ってるのか、はっきり見えないんだ)

(どっちだ? 深月)

(アキ様から見て、二時の方向だよ)

(分かった。でも時計で表現するのを覚えたんだな。えらいぞ)

(ユキ様に教わったんだ)

(そうか。ユキもえらいな)

(えへへ)


 深月に教えてもらった方向を見ると、確かに何も見えない。ただし、普通の人にはだ。真眼で視ると、はっきり分かる。その部分が歪んで視えたのだ。魔導具の類か。魔力を流すと周りの風景に溶け込む魔道具が、あったはずだ。確か『インビシブルマント』だったかな。レア物では無いが、そこそこの値段がするはず。そんなものを使ってまで、女性を襲うのか。はっきり言って、理解出来ない。風俗にでも行ってろ! と思ってしまう。


(ユキ。二人に伝えてくれ。例の二人が姿を消して近づいて来る。俺から見て二時の方向だ。でも、そのまま知らないフリをしていてくれって。それと、ユキと深月。何かあったら頼むぞ。でも、怪我には注意しろよ)

(( 分かった ))


 さて、あのマントだけじゃ無いだろうな。あれは近づくだけの物のはずだ。そこから何か仕掛けて来るはず。眠らせるのか、痺れさせるのか。殺すということは無い筈だ。まあ、俺に対しては、あるかも知れないが。とにかく、もう少し様子をみよう。

(セイカ。織田さんに伝言を頼む。『何があっても言い訳出来る様に、アイツらの悪行を動画に収めたいんで、ドローンのスイッチを切るのは少し待って欲しい』って)

(了解、兄さん)


 これで大丈夫かな? アイツらを視ると、結構近づいていた。距離にして三十メートル位か。その位置で動きを止めてる。魔力の歪みが視えるだけだから、何をやってるかまでは分からない。でも、そこで止まってるということは、確実に何かをやろうとしている筈だ。

 何か匂って来たな。ちょっと甘い匂いか。・・・睡眠香か! 眠らせてから襲う気か。りんと智子は、うつらうつらしている。やはり、目に見えない物を警戒するのは厳しいか。この様子じゃ、完全に寝てしまいそうだな。俺も少し吸ってしまったしな。


《りんちゃん? 智子ちゃん? どうした?》

《いきなり眠り出したぞ。何があった?》

《主は・・目を瞑ってる。あれはどっちだ? 寝てるのか? 寝てないのか? 三姉妹は?》

《三姉妹も横になってる!》

《もしかして、睡眠香を使われたのかも!》

《アレって、誘引香と一緒で、人に使っちゃダメなやつでしょ。さっきの事と言い、誰がやってんだ?》

《誰か来たぞ。アイツらは・・・鈴木朗と斎藤純か?》

《ギルドを追放されたって聞いたけど、こういう事だったのか》

《誰か! 通報して! このままじゃヤバい!》


「ククク・・いくら実力のある探索者って言っても、眠って仕舞えばこっちのもんよ」

「こっちの魔獣の方も、堪らねえなぁ」

「男の方は殺しても構わないよな」

「当然だろ。何だったらバラして臓器を売るか。金になるしな」

「女と魔獣はよ、飽きたら、いつも通り売っぱらっちまおうぜ。コイツら、見た目が良いから結構な値段で売れるだろうしよ」

「おー、それもいいな」


《コイツら・・・なんて奴だ!》

《ダメだ。吐き気がして来た。本当に人間か? コイツら》


 ・・・・よし、かかった・・・。

ダンジョン編の登場人物の趣味の日常を書いてます。


https://ncode.syosetu.com/n3682jy/


気が向いたら、読んでみてください

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