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配信始めました 〜ダンジョン編〜  作者: ばっつ
第二章 配信者になりました
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第49話 モン娘達の特訓

 ーsideーユキー


「ウラァ!!」

「なんの! まだまだだよ! セイカちゃん!」

「クッ・・! 流石はユキさん。なら、これはどう!!」

「おっと! これはちょっと危なかったね!」

「そこまでー。ユキちゃん、セイカちゃん、休憩しよう」

「「うん(はい)」」


 ここは私の眷属とセイカちゃんの眷属が暮らしている空間だ。トウカさんが突然、特訓しようと言って来たのでこの空間に来たんだ。でも、何で特訓しようって言い出したんだろう?

 話は、この前の打ち上げに時に戻る。東京タワーダンジョンに行く事が決まった時から、何か考えてる感じだった。そして、もっとご主人様を守れるように、特訓しようと言って来たのだ。もっと守れるように、というのは私も思うので賛成した。しかし何だろう、東京タワーダンジョンに何かあるのかな。


「ちょっと出かけて来るから、その間二人で頑張ってね」


 あの時以来、そうやって出て行っては、半日たまに一日中出かけている事もある。一体、どこで何やってるんだろう。私も心配だけど、セイカちゃんも心配している。前に聞いたんだけど、ちょっとね、といつもはぐらかして、教えてくれない。でも、調べる術がないから仕方がない。今は力を付ける為の特訓を頑張る他はない。


「ユキさん、トウカさんはいつも、どこに行ってるんですかね」

「んー、分かんないな。ご主人様に関係してるのは分かってるんだけどね」

「主人殿ですか? 恋人が増えた事ですかね」

「それは嬉しい事だから、今回の事とは関係ないと思う。どっちかと言うと、ご主人様を心配してるっぽい」


 トウカさんは五百歳にもなる妖狐だ。私達より断然強いし、知能も高い。私とセイカちゃんが束になっても、とても勝てない。何かあっても、いつも『私が守るよ』と言っている。

 そんなトウカさんが不安になるなんて、よっぽどの事なんだと思う。こんな時私達が出来る事は、不安をなるべく和らげられるように、力をつける事だ。


「よし、セイカちゃん。二本目行くよ。今度は魔獣の姿で行こう」

「了解です。あ、服を脱ぐんで待ってください」

「そうだ、わたしも脱がなきゃ。お母さんに怒られる」


 ご主人様の実家に暮らし始めて、一年以上経つ。お母さんには、人間社会に適応出来るように、色々教えて貰った。その一つが、家族以外の人前で妄りに服を脱がない。脱いだ服は畳む、だ。恥じらいを持つように、と言う事らしい。魔獣の時は何とも思わないが、人の姿になると、何となく分かるようになった。

 お互い服を脱ぎ、裸になったところで魔獣の姿に戻った。


「行くよ! セイカちゃん!」

「お願いします! ユキさん!」


 魔法で牽制して、全速力で接近する。そして、前足を使って攻撃をした。セイカちゃんがそれを躱わす。成長したなー。前は避けきれずに地面に押さえつけられてたけど、今は躱せるようになった。

 躱したセイカちゃんは、その後噛み付きを仕掛けて来た。しかし、まだまだ甘い。軽くバックステップをして躱し、そのまま横顔を張り倒す。それだけで体勢が崩されるのだ。これはご主人様にやられて、身を持って体験した。

 体勢を崩されると、一瞬だけど反撃も防御も遅れる。でも、その一瞬が命取りにもなる。なので、いきなり大技は厳禁だ。


「セイカちゃん! 噛み付きなんて大技は隙だらけになるよ! 相手が避けられない状況になってから使って!」

「はい! ユキさん!」


 こんな感じで特訓をして行って、一週間が経った。


「ユキちゃん、セイカちゃん。ちょっといいかな。話があるんだけど」


そこで、トウカさんが話があると言って来た。何だろう?


「話ってなに? トウカさん」

「実は私ね、この一週間、あるポーションを探しに富士山ダンジョンに行ってたの」

「ポーション・・ですか? でもトウカさん、ポーションなんてお店に行けば、いくらでも買えますよね」

「目的のポーションはね、超級ポーションなのよ」

「超級ポーションって、確か死んでる状態と病気以外はどんな怪我も治すってやつですよね」

「うん、そう。富士山ダンジョンの中層以降でたまにドロップするから、それを取りにね。本当は下層に行きたかったんだけど、時間が無くて、ずっと中層を周ってた」


 超級ポーションは、一本数千万円から一億円位するポーションだ。死亡と病気は流石に治せないが、物理的な怪我ならどんな状態でも、それこそ四肢欠損も治すとんでも無いポーションだ。富士山ダンジョンの中層以降ならたまに落とすって、聞いた事がある。でも、かなり確率は低かったはずだ。それなのになぜ、トウカさんはそんなに急いで入手したかったのか。


「何でそんなもの必要なの?」

「なんか胸騒ぎがするのよ。アキ様の身に何かが起きそうな、悪い予感がするの」

「未来予測?」


 高レベルの妖狐の中には、未来予測が出来る狐も居ると言う。そして、未来予測とは、今現在の状況から、何も手を打たずに、このまま進んで行ったら、こうなるかも知れない、といったレベルのやつだと聞いた事がある。

 トウカさんが使えるって聞いたこと無いけど、でも、トウカさんは高レベルの妖狐と言ってもいい位だから、トウカさんの言う事は無碍にはできない。


「そんな大層なものじゃないけど、でも一旦気になり出したら、もうそれで頭が一杯で、居ても立っても居られなくて。取り敢えず、何があってもいいように、準備だけはしておこうと思って。だから二人にも特訓をお願いしたの」

「それで、ポーションは手に入ったんですか?」

「何とかね。でも二つだけなの。正直もう少し欲しい」

「トウカさん・・」


 トウカさんは本当に残念がっている。多分人数分として、五〜六本は欲しかったんだと思う。人数分とは、ご主人様とりんお姉ちゃん達の四人と、トシお兄ちゃんの分だ。確かにそう考えると、二つと言うのはちょっと心許ない。でも、トウカさんが言うように、時間のない。となると、方法は一つしかない。


「まあ、手に入らなかったのは仕方がない。こうなったら、なるべく使わなくともいい様にしなきゃね」

「そうだね! 私達も特訓頑張るよ」

「うんうん。私も今日から入るからね。頑張ろうね」

「「お、お手柔らかにお願いします」」

 

 やっぱりトウカさんは強い。何度も手合わせしてるけど、一度もまともに決まった事はない。今はお互い、魔獣の姿になってる。それでも、魔力、速さ、力、全てが数段上だ。こっちは本気でやっても、余裕であしらわれてしまう。

 この感じは、初めてご主人様と戦った時と似ている。あの時は、魔法だけだったけど全然当たる気がしなかった。それだけで焦ってしまって、大きな隙を晒してしまい、ご主人様にそこを突かれた。死にそうになったけど、ご主人様が優しかったお陰で、今こうして居られると思うと、自然と笑みが浮かんでくる。っとと、いけない、笑ってる場合じゃない。

 トウカさんはさらに当たる気がしない。物理攻撃でさえ掠りもしないのだ。焦ってくるが、ここで焦ったらまた同じことの繰り返しになる。冷静になるんだ。集中してよく見るんだ。

 集中してると、何となく見えてくる気がした。さらに集中して、反撃の糸口を見つけるんだ。トウカさんの爪の攻撃を躱わすと、少し体勢を崩していた。チャンスだ! 尻尾で目潰しをして、後ろ足で蹴り上げる。手応えがあった!? すぐに向き直って、全速力で近づき、その勢いのままトウカさんの体に噛み付いた。やった! ついに攻撃が当たった!

 と思ったのに・・・


「いやぁ、今の攻撃は良かったねー。もう少しで掠るところだったよ。ユキちゃんも成長したね」


 トウカさんの体が消えて、別の場所に現れた。幻影の術を使われてしまったみたい。しかも、実体のある幻影なんて聞いたことないよ。やっぱりトウカさんは凄い。私も頑張って、強くならないと。そして、ご主人様を守らないとね。


 最後に、人の姿で模擬戦をやった。こっちは、私とセイカちゃんが組んで、あっちはトウカさん一人だ。これなら互角の勝負になるかも。


「それじゃあ、行くよ。二人とも、全力で来ていいよ!」

「「はい!」」


 でも、全く相手にならなかった。


「うりゃぁ!」

「甘いよ! セイカちゃん! そりゃ! 飛んでけー!」

「うわああぁぁ・・!」

「隙あり! やぁ!」

「まだまだだね! ユキちゃん! そら!」

「うぎゅ・・!」


 もう! 本当にトウカさんって魔獣なの? 何で人間の時の方が強いの!? それと『お狐流柔術』なんて聞いたことないんだけど!? 私にも教えて欲しい。


「今度、教えてあげるね」

「やった! ありがとう、トウカさん!」


 これでもっと強くなれる。ご主人様、喜んでくれるかな? 


「今のままでも十分喜んでくれると思うよ。アキ様は」

「何で考えてる事がわかったの!?」

「ユキさん、顔に出てますよ」

「ホント、主従揃って顔に出やすいよね。まあそれもいいところだけどね」


 顔に出てたのか。ちょっと恥ずかしい。でも、ご主人様と一緒なのはちょっと嬉しいな。


「それでいいのか? ユキちゃん」


 また顔に出てたみたい。

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